二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.250 )
- 日時: 2011/02/28 16:51
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)
「っっっっっぱはぁっ!?」
マルヴィナは無意識に止めていた息を一気に吐いた。
「んあぁぁ・・・苦しかった」
「息止めてるからよ。・・・っと。お出ましかしら?」
軽くツっこんでから、シェナは銀色の髪を掻き分けにやりと笑った。
鏡の中の世界。
視線の先は、漆黒の魔神。針の如く鋭い二の腕を、その魔神はいきなりの来客六人に突きつけた。
「何だ・・・貴様ら?」
「そりゃこっちのセリフだよ」セリアスが呟く。「大神官はどこだ?」
「大神官? はっ!」魔神は突き放したように笑う。
「馬鹿め。分からぬか! 今は私は大神官ではない・・・この力で人間どもを従えさせる魔神ジャダーマである!」
「・・・・・・俺が馬鹿なのは認めるけどよ。何? つまりアンタ、大神官?」
「魔人ジャダーマと言っておる!」
漆黒の魔神、元大神官は、唇と思しきそこをむぎゅうと歪めた。
「・・・ちょっと。何で、大神官が、魔物なんかになってるんだ? しかも、・・・ジャマーダ?」
「ジャ[ダーマ]ね」キルガが吹き出しそうになるのをこらえて訂正する。「・・・果実のせい、だろうな」
「果実? ・・・まさか・・・・・・・・うわっ、来た!」
マルヴィナが考えを述べる前に、大神官の腕が襲ってくる。六人はばっと散った。
左にセリアス、ロウ、シェナ。右にマルヴィナ、スカリオ、キルガ。・・・なんだか謀ったような組み合わせである。
がぁん! 腕が床に叩きつけられ、ヒビを作る。凄い破壊力だ、と四人は思った。
「ジョーダンじゃないって」
マルヴィナは呟き、仕方ないとばかりに剣を抜く。
「・・・果実が、大神官を魔物にしちゃったってこと?」
「だろうね。・・・彼の身体から破壊するために」
「・・・果実に強く願いすぎたって事か。・・・てことは、元は人間なんだな? 戦いにくいなぁ・・・」
マルヴィナは嘆息したが。
「いや・・・大丈夫だ」キルガは答える。
「彼は死なない。果実による呪いなら・・・彼を倒せば、呪いが解けるはずだ。・・・あの書物が正しければね」
書物、と言うのは天使界に帰った時にキルガが読んだものである。
「・・・そっか。じゃあ、・・・遠慮は、いらないんだな?」
「あぁ。・・・ま、ほら。既にセリアスもロウさんも、攻撃に専念しているし」
ロウが何かを呟くたびに、セリアスのいい返事が聞こえる。緊張しているのか、張り切っているのか。
いずれにせよ、セリアスは戦いの才能が四人の中では一番長けている。
セリアスなら、なれると思った。彼の憧れる、バトルマスターに。
「・・・うん。じゃ、ボクもだね。——せっ!」
スカリオの気合いの声が響く。マルヴィナが目をしばたたかせた時、元大神官を除く全員に、光の力が生じた。
きらきらと輝く、聖なる光。
「・・・な? 何今の?」思わず尋ねるマルヴィナに、スカリオは一度(嫌味に)笑う。
「フォースさ。ライトフォース! 魔物には、それぞれ弱点がある。
その弱点を突き、また自分たちの守りを固める・・・それがフォース。魔法戦士だけの!」
「・・・・フォース、か」
マルヴィナは少し考える。受けた光の力を感じながら。ジャダーマの、隙を探りながら。
・・・悪くないかもしれない。この、魔法戦士というものも——いや、スカリオは別として。
(Chess: 中途半端だけど、長いので一度止めます。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.251 )
- 日時: 2011/02/28 17:33
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)
ジャダーマが、両手を天に掲げる。刹那、どこからともなく稲妻がほとばしった。
雷は忠実に、敵の位置へ落ちる。呻き声が重なる。セリアスは攻撃への集中から、咄嗟に反応できなかった。
手が痺れ、剣がはじかれる。大きく弧を描いて、剣は飛び——
「わ、ちょっ!?」
・・・それはシェナの右手に収まる。思わず、彼女は剣を掴んだのである。
片手で。
「・・・えっ? シェ、ナ?」
剣は、重みのある、本格的なものであった。マルヴィナはその天性の才能からその剣を扱うことが出来たが、
シェナは賢者であり、普段力仕事は任せる方である。そんなシェナが、剣を、しかも咄嗟に——片手で、支えた。
「・・・・・・あ、せ、セリアスっ!」
「お、さんきゅ!」
セリアスはその事実に気付かなかったらしい(相当攻撃に集中しているらしい)。
マルヴィナとキルガの訝しげな視線を背に感じて、シェナは少し肩をすぼめた。
「・・・相手の、隙を探る・・・守りを考えず・・・確実にダメージを与えるために・・・」
セリアスは、ブツブツと呟いた。そして、目線をあげる。
元大神官は完全に魔の神に従っていた。マルヴィナには、それが歯がゆかった。
神に絶対を誓うはずの神官が、他の神に従ってる? ふざけんな、そんな怒りが、マルヴィナを静かに取り巻いた。
マルヴィナに生じていた光の力が、だんだんと大きくなっていく。スカリオは一瞬目を見張った。
無防備となるほどに自分の光に集中するマルヴィナ、それに目を留めたジャダーマの攻撃を、キルガがさえぎった。
ジャダーマは舌打ちし(多分、だが)、攻撃の的をセリアスに向けた。セリアスも同じだった。
ただし、相手の動き、隙、そして自分の実力を、冷静に考えて。
ジャダーマとの差、八メートルほど。セリアスは動かない。微動だにしない。
「————————っセリアス!!」
マルヴィナがその時、叫んだ。マルヴィナの光の力が、一瞬にして消えた——否、移った。
精神を集中させるセリアスに、マルヴィナの——フォースに関しては素人であるはずのマルヴィナの光のそれが、
セリアスに移ったのである。
あとわずか。セリアスは、動いた。ジャダーマの攻撃を見事なまでにかわす。驚愕に顔を歪める彼の瞳を見る。
そして——斬る!!
・・・ジャダーマが、叫んだ。
痛み。そして、己が使えていたはずの聖なる神の声が——神の叱咤が——頭に、響いた。
あの剣に——少年の持った、あの剣に、何よりも清らかな、聖なる光が宿った。
それは、あの少女の、チカラ。
光・・・私は、何をやっていたのだ・・・何故私が、闇になっているのだ・・・
私は、光であり続けなければ、いけなかったのに——
黒い煙が、全身を取り巻いている。黒い力が、消えてゆく。
・・・煙が消えた時、中から現れたのは、力尽きたようにうつぶせになる大神官その人だった。
ぐらつく頭を押さえ、うつろな眸で、初めに目の前に立つセリアスを見る。
セリアスが息をつき、大神官に立てますか? と手を差し出した。
「・・・私は・・・一体、何を・・・してのだ? ・・・何故、私は・・・」
「果実」後ろで、マルヴィナは言う。「光る果実を食べた。・・・そうだろ?」
「果実・・・? そ、そうじゃ。果実・・・そうじゃ。
・・・だが、思い出せるのは・・・自分が、自分でなくなっていくような・・・そんな、恐ろしさ・・・」
言葉をいきなり切って、大神官は切羽詰った表情ではっと顔をあげた。
セリアスの差し出した手を無視して、ふらリ、と立ち上がる。ありゃ、とセリアスが気の抜けた反応をした。
「も・・・戻らなくては。神殿に、・・・人々が、私を呼んでおる・・・」
まだ何かに取り付かれているかのように、危なげな足取りで歩く。
「おっと・・・送っていくとしようか」
ロウがそう言い、スカリオがそれに続く。マルヴィナが続かないのを見て止まりかけたが、
マルヴィナ以外三人に睨まれたので、そそくさと退散した。
「・・・・で。結局、果実・・・駄目だったのかな」
「さぁ・・・・・・・・・・・・ん?」
シェナの声に肩をすくめたマルヴィナは何となく横を見て、そしてそこにぽつんと残されたものをしばらく眺めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それは、黄金に輝く、綺麗な果実——
「・・・・・・・・・・・・・・」
マルヴィナは、それが何か判断するまでに四秒使い、
「ッあああああぁぁぁああっ!?」
叫んだ。セリアスが盛大に驚く。
「うわわっ! 何だいきなり!」
「か、果実だ! 女神の果実だ! まだ残って——たのか?」
「聞くの?」
シェナが最後につっこんだ。