二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.259 )
日時: 2011/03/07 16:35
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)

「よう、マルヴィナさん」
 その日、魔法戦士に転職したマルヴィナは、例の武闘家の男の声に反応した。
「・・・あぁ、どうも」
「どうも、はこっちの台詞だ。・・・いや、本当に、ありがとよ。
・・・正直、最初はあんたらで大丈夫かとも思ってたんだ」
 マルヴィナは短い笑声を上げた。仕方ない。どう考えても、十代後半にしか見えない旅人なのだから。
「・・・けどな。いや、よくよく考えれば、あんたらは凄い。魔物に、臆さない、強い意志を秘めてる。
・・・多分、俺には、それがなかったんだ。あいつを置いて行けないからって、言い訳してただけに過ぎないんだな」
 彼の視線の先には、転職を終えた者とこれからする者、それぞれの思いを抱く人間を相手に
ちょこまかちょこまか動く羽目にあっていた彼の恋人がいた。
「・・・だが、これからは違う。本当にあいつを守るために、俺は言い訳せずに邪悪に立ち向かうぜ。
・・・あんたらを見習ってな」
「頑張れ」
 マルヴィナは短く応援した。
「・・・と。あと、もう一つ、聞きたいことがあったんだった」
 頷いて立ち去りかけた彼の足が止まる。マルヴィナがきょとんと首をかしげ、話を促した。
「・・・称号、あるだろ」
「称号? ・・・あぁ、旅人の・・・」
 スカリオも言っていた、旅人ごとに付けられる称号。
マルヴィナも貰ったのだが、・・・恐ろしいほどに似合っていた(と言うのはキルガの感想である)。
「それだ。・・・“蒼穹嚆矢”って知っているか?」
「・・・・そ、そうきゅうこうし・・・?」
「あるいは、“賢人猊下”」
「・・・けんじんげいか・・・・・・・?」
 どちらも棒読みである。
「・・・知らねぇか」
「・・・う・・・・・・いや・・・・あれ・・・・・・・?」
「いや、いい。・・・どっちも三百年くらい前の伝説の称号だからな」
「伝説」マルヴィナはコクッ、と喉を鳴らす。
「あぁ。ダーマ神殿では通な奴は誰でも知ってる。三百年前に、急に現れて、いきなり消息の途絶えた、
おっそろしく強かった二人の女戦士たちの称号だったんだが・・・いや、そのうちの“蒼穹嚆矢”の特徴が
あんたにかなりそっくりでさ」
「・・・わたしに?」
「子孫かと思ったんだよ。いや、悪いな。・・・んじゃ」
 手をひらリ、と振って、フリーフロアを後にしていった。

 ・・・マルヴィナは。
(・・・蒼穹嚆矢・・・賢人猊下・・・)
 その二つの名を、一瞬だけ、確かに
(知ってる)
 そう、思ったのだ。
 聞いたことはなかった。初めて聞いたとき、それが称号だとすら分からなかったのに。
なのに、彼女は、その名を知っていた。
(・・・・・・・何、で・・・・・・・・?)
 知らずうちに、手を握り締めていた。





 風は吹き、滝は流れ、草木は歌う。
 今日、また、そこから新たな名を持つ旅人が旅立った。
 一人は“天性の剣姫”、闇髪と蒼海の眸持つ魔法戦士、
 一人は“静寂の守手”、冷静で知識豊富な聖騎士_パラディン_、
 一人は“豪傑の正義”、闘うことで仲間を守り抜く闘匠_バトルマスター_、
 一人は“聖邪の司者”、聖と邪の呪文司りし賢者。
 ・・・旅人たちは、更なる旅を求め、歩き出す。
 ここは、ダーマ神殿。








               【 Ⅴ 道次 】——完結。