二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.292 )
- 日時: 2011/03/24 18:01
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
「・・・あたしのせいで・・・ここの漁を、なくしちゃったんだ・・・」
『オリガ・・・?』
その声に、たまらずオリガはぎゅっと両手を握りしめて、言った。
「お願い・・・もうやめて、魚を届けないで。こんな生活のままじゃ、大切な漁を忘れちゃうよ。
この村が、漁の村じゃなくなっちゃうよ」
「な・・・ぁ、オリガ、誰が許した、そんな自分勝手——」
「黙ってろっ」「黙ってなさいよっ」
男の言葉を、セリアスとシェナが、同時に封殺した。
「自分勝手は誰だ、いつまで人に依存してんだよ!」
「まだ分からないの!? 自分だけ良ければいいなんて甘ったれた考えしてるから、こんなことになったんでしょう!?」
マルヴィナは、開きかけた口を閉じた。言いたいことは、二人が言ってくれた。
「・・・誰かに頼ってばかりなんて、間違ってる。あたしは・・・この浜で、漁を続けたい」
オリガは、小さく、だが何故かよく響く声で、堂々と言う。
「あたしは、村一番の漁師の娘。あたしは・・・一人で何でもできるようにならなくちゃいけない」
きっぱりと言い切ったオリガに、人々の視線が殺到した。少女は臆することなく、瞳を煌めかせる。
『・・・なるほどな』
そんな彼女を見て、オリガの父は、ふっと息を漏らした。諦めではない。それは、安堵。
『・・・・私は・・・私でさえ・・・何もわかっていなかったということか・・・
だが、今分かった。・・・いつまでも子供だと思っていたお前が・・・成長したものだ』
「・・・お父さん、ぬしさまになって、この浜を守ってくれようとしたんだね。でも、大丈夫。
あたしが・・・あたしが、この浜を、漁師の村に、戻して見せるから!」
言い切る彼女の存在は、光。
その光は、いつか、闇を照らし、消し去らせる力を持つだろうか。
・・・大丈夫。彼女なら。
ヌシは、巨大な身体をぐいと海へ向けた。その身体が、ゆっくり、見えなくなってゆく。
魂が、昇天してゆく・・・誰もが、初めて見るものながら、そう思った。
「・・・あ・・・」
オリガは、そこで口を開く。だめだ、泣いちゃいけない。浜の女は、強くなくちゃいけない。
泣いちゃ、いけない・・・
「・・・・・・っありがと————————っ!!」
だが彼女は、そう叫んだ。姿の消えた、ヌシ、否、父親へ。
村に、何回も、ありがとう、という言葉が響いた。
彼女は、くるり、と顔をそむけた。顔をごしごし、と腕でこする。
余韻が、消えてゆく。そして——完全に、聞こえなくなった。
だが、その時彼女は、もう泣いていなかった。
村の光として存在する彼女は、村の誰よりも、強い意志を秘めていた。
「・・・さてと」
マルヴィナは、呟く。
「・・・事件、解決。わたしたちも、そろそろ次の場所へ、だな」
「そうだな。・・・にしても、俺、あんまいる必要なかったんじゃないのか?」
「まぁまぁ。あの言葉、決まってたよ」
マルヴィナは、そう言って笑った。
右手に、二つ目の女神の果実を光らせて。
【 Ⅵ 欲望 】——完結。
Chess)あー、こいつが一番書くの難しかった。表現の仕方が分かんない・・・うぅ。夕飯夕飯。