二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.297 )
- 日時: 2011/03/24 20:26
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
【 Ⅶ 】 後悔
1.
娘は、目を細めた。
当てもなく、大切な人を探し続けて、一体どれだけ経ったのか。それは、彼女自身にも、分からなかった。
北から東にかけて連なる山々の頂上は、うっすらと黄緑色をしていた。
もうすぐ季節の変わるこの辺りでは、この山頂の色を目印に、猛暑への対策を取り始める。
娘は、首を横に振った。
娘は霊だった。はるか昔に、とある小さな村で短い一生を終えた、哀れな女性。
黒珈琲_ブラックコーヒー_ の色を成した長い髪を、頭巾付きの 天鵞絨_ビロード_ ですっぽり覆っていた。
その娘の瞳にいまや、光はもうなかった。うとうとと微睡むときのような、ほうっとした影が映るのみ。
娘は、ふと足を止めた。町・・・のようなものが見えた。
もしかしたら、と思った。もしかしたら、いるかもしれない。
娘は走る。昼寝中だったらしい痺れアゲハや猛獣リカントは盛大に驚いて逃げだしたが、かまってやる余裕はない。
娘は、もう動くことのない心臓に右手を当ててスピードを緩めた。かすかに浮かべていた笑みも消えた。
そこは、町ではなく、集落だった。
だらしのなく、よろよろとした男たちが、上半身裸のまま地面に寝そべったと思えば、わざとらしく人の足に
つまずいて転び、慰謝料を出せ、とせびる男もいた。
ひどいところだ、娘はそう思った。あの人が、こんなところにいるはずがない。
それでも娘は、はしごを使って、橋の下へ降りた。北の山から流れる純粋なはずの川の岸に、
缶やビニル製の袋が積まれていた。
テントを覗き、宿屋の扉をすり抜け、酒場のカウンターへと回り込み・・・それでもいないことを確認すると、
娘は、はぁ・・・とため息をついた。
意外と小さな集落だった。一時間を有するかしないかのところで、大体のところは見て回った。
調べていないところはなかっただろうか。あぁ、あの奥のテントには、まだ行っていない。覗いてみよう。
どうせ、無駄かもしれないけど——
「うっわぁ、凄いっ」
はっ、と顔を上げた。ちょうど向かおうとしたテントに、若い青年たちがいた。しっかりと、中を覗いている。
服は少々くすぶってはいるものの、旅慣れた証である汚れ方だということが分かった。
明らかに、この集落の人々の服の汚れ方とは違う。
「えー、何が・・・っおぉおおっ!! マジかぁっ!」
明るい人たちだな、と思った。普段なら、それを鬱陶しいと感じるだろう。
しかし、今回は・・・そうは、思わなかった。
——あの人たちは・・・!
探していた人ではない。だが、あの雰囲気。
その旅慣れた若い四人—そう、ツォの一軒を解決し、漁ついでにこの大陸まで乗せてもらってきた
マルヴィナたちである—を追い、娘はテントの中へ続いた。
「っ!」
そして、目を閉じる。眩しい! そこは、あたり一面金色の、ざくざくの宝石にまみれた居地だった。
娘は唖然とした。貧しい呑気者たちの集うこの橋に、宝石だらけのこのテントである。ギャップが激しすぎる。
娘は唖然としつつも・・・追いかけてきた四人を、まじまじと、見つめた。
Chess) ・・・恒例の中途半端止めです。