二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.299 )
- 日時: 2011/03/24 20:47
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
「すっげぇな、もしかしてここが、噂の“メダル王云々”?」
「・・・“メダル王の城”? いや・・・どう考えても、城には見えんが・・・」
「アンだてめぇらっ!?」
最後に、テノールとバリトンの間くらいの男の声がした。すごむような感じだが、彼らの力量を察しているのか、
妙に震えているような気もしなくはない。
「あらら、部下登場? うーん、ちょっち頭悪そう」
銀髪の、ウェーブがかったポニーテールの少女—シェナ—がくすくす笑って言う。
「ななななな、何をぉっ・・・」
「ほら」
シェナ、にっこり。罪の意識などありゃしない。
「てってめぇら、ここを何処だと思ってんだ!? ここぁ“キャプ——」
「“キャプテン・[メタル]の家”」
さばさばした感じの少女—もちろんマルヴィナである—が即答した、
・・・がその答えに妙に納得いかないのは気のせいか。
「メタ・・・」
男も気付いたらしく、口をぽかん、と開け、目をしばたたかせる。いわゆる間抜け面、というやつである。
マルヴィナはニヤリ、と不敵に笑って、「凄いな、このテントは」と言う。
「これだけ立派なんだ、さぞかし黄金の物は多いんだろう? ちょっと聞きたいことがあってさ、ここの主に」
「あー・・・別に金目のものが欲しいわけじゃないので・・・」
かなり誤解を招きそうな発言をしたマルヴィナの横からキルガが訂正するが、男の耳には聞こえていない。
娘はクスッ、と笑った。気のせいか。どこか、懐かしい感じがしたんだ・・・それでも。
やはり記憶の中に、彼らの姿は、ない。
娘は、ため息をついた。睨みあうマルヴィナと男の横を通り、念のためにテントの奥を覗く。
「ん?」
あぁ、やはりいない。・・・ところで、今、後ろで問うような声が聞こえたけれど・・・気のせいだろう。
だって、私の姿は、誰にも見えないのだから。
娘は、ふぅっ、と、もう一度溜め息をついた。霊となってからついた癖だった。
テントを出る。そして、また、当てのない旅へ向かうのだ。
彼女は、マルヴィナが自分を見ていることに、気付いてはいなかった。
ところで、その後、例のテノールとバリトンの間の声の雄叫びが聞こえ、ドカスカ殴り合いのような音がし、
呻き声もし、しばらくして静かになったのだが・・・やはり誤解した男が突っかかってきたのを
マルヴィナたち四人がとりあえず気絶させたという出来事があったということは、説明するまでもない。