二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.304 )
- 日時: 2011/03/26 09:49
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
サイドストーリー 【 聖騎士 】
「・・・ちょっと、だれか、手を貸してくれない!?」
時は一年前、世界を揺るがせた大地震の起きた翌日のことである。
世界の東側に、砂漠の大陸がある。その大陸を統治する国の名から、その砂漠は、グビアナ砂漠、と呼ばれる。
すなわち、国の名は、グビアナ。その城下町には、聖騎士団がある。
砂漠の安全を守る役割を持つ聖騎士たちは、その日も大地震の影響を受けて砂漠に変化が起こっていないかを
落ちた針を探すような目つきで見まわっていた。
叫んだのは、聖騎士団の女小隊長、名をパスリィと言う。
男勝りで負けず嫌いな彼女は、どちらかと言うと異性よりも同性に憧憬の目で見られている。
彼女は、持ち前の行動力と、槍術の腕前で、聖騎士たちから一目置かれていた。・・・と言うか、一部は、
パスリィの恐ろしさに負けて従う者もいたのだが、それをパスリィは知らない。
ともかく、彼女のその一声で、彼女の部下である聖騎士たちが四、五人集まってくる。
「この子、大怪我負っているけど、生きてるわ。とりあえず、修道院に運んで!」
パスリィの指先には、黄砂の舞う中で、異国風な服を身に纏った、十代後半あたりの整った顔立ちの青年がいた。
だが、横倒れになり、全身に傷を負っている。頬と頭から直視できないほどの血を流し、目は開かない。
「こ、これだけ怪我負ってて、生きてるんですか・・・?」
「あー、つべこべうるさい! 朝の教訓で聖騎士の誇り忘れるなかれ、って言ってるのは、アンタでしょうが!」
「わ、分かりましたよぅ」
すっかりしぼんだ聖騎士たちに青年を担がせる。かなり華奢だ。だが、言った通り、息はしっかりとしている。
昨日の地震の被害者だろう。だが、この生命力。
もしかしたら、聖騎士の素質があるかもしれない。パスリィは、そう思っていた。
その青年が目を覚ましたのは、一日と半分が経ったころである。
「・・・つ・・・」
その呻き声に、やることがなくてぼーっ、としていた騎士たちは、即座に反応した。
「・・・おおおっ! ほんとだ、目、覚ましたぞ!!」
「なにぃ!? くそう、俺の有り金、ほとんどパァだ!」
「ばか、うるさいっての。・・・よう、兄ちゃん、大丈夫か? まだ痛いところはあっか?」
聖騎士たちは、頭を起こし、呆然とした表情の青年に、声をかけていく。
「水いるか? 水」
「腹減ってないか? 賭けの勝利祝いだ、おごってやるぜ」
「何ならグビアナダンスホールのおねぇさん呼んでこようか? かなりたくさんの子が心配していたぞ」
「それ、お前が会いたいだけだろうが」
「えぇ、だって、最近入った子、知らねぇのか? かなり初々しいって・・・」
「あー、コホン」最初に、痛いところ云々を訪ねてきた男が咳払いで関係ない話をする男どもを黙らせ、
いまだ困惑顔の青年を見る。
「・・・・・・・・・・・・・・」
が、その青年の端整な顔に、だんだんと驚愕の色が見え始める。
青年は、急に、後ろ・・・否、背中を見、そして、不意に頭を押さえた。
「おぉっと、頭痛か? 鏡要るか?」
「え・・・あ、お願いしますっ」
切羽詰まったような青年の声に・・・不思議な声色に少し驚きつつ・・・その騎士は
手鏡にしては大きなそれを差し出し、「ほれ」と言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
青年は、鏡に映った自分の姿を見て、声を失っていた。さすがにただならぬものを感じた騎士たちは
怪訝そうな顔をする。が、やはりその空気を消し去らせたのは、今は鏡を持っているその騎士だ。
「・・・とりあえず、な? 何かいろいろ混乱してるようだが・・・初めに、差支えなければ、
お前さんの名前を教えてくれねえか。ここはグビアナ城下町、そしてこの宿舎は聖騎士団のものだ。
俺はハルク、聖騎士団の副団長だ。お前さんは?」
ハルクと名乗った聖騎士副団長を、青年はまっすぐ見る。そして、名乗る前にとりあえず立とうとして、
痛みが戻ってくる。おっと、いいから、安静にしてな、と言われ、体制を戻し——青年は、名乗った。
「・・・僕の名は・・・————キルガ、です」