二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.307 )
日時: 2011/03/26 17:11
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

 半日が経つ。つまり、翌日の、朝。
キルガは、起き上がり、頭を押さえた。結局眠れなかった。
 無意識に、鏡を見る。そこには、血だらけとなった天使界の服ではなく、グビアナの兵士の予備のシャツを纏った、
翼も光輪もない、[人間のような]青年が映っていた。
「・・・・・・・・・・っ」
 キルガは悔しげに、顔を歪める。眠れなかった夜を使って、いろいろ考えて——
そして、自分に起こったことを、大体理解した。


 天使界、世界樹に、女神の果実が実った。
 言い伝えの通り、天の箱舟が姿を現し——だが、刹那、人間界から放たれた邪悪な波動によって、
天の箱舟は砕け散り、そして自分は、天使界から投げ出された——。
(マルヴィナも)
 脳裏に浮かぶのは、その時隣にいた、恋しかった天使。
彼女もまた、同じように、投げ出されていた。片手で、天使界の柱に掴まっていた。
彼女を助けることはできなかった。自分の方が、先に落ちたのだから。

(・・・助かったのだろうか)

 そう、思う。助かっていれば、うれしい。だが、二度と会えない。それが・・・悔しい。
 キルガは頭を押さえていた手を降ろした。もう痛くない。傷は残っているが、そうたいしたことはない。
 生命力は、天使のままのようだ。ということは、翼と光輪を失っただけで、自分はまだ天使なのだろうか。


 しばらくの時間が過ぎてから、キルガは立ち上がって扉を開けた。
声のする方へ向かい、開きっ放しのドアから部屋を覗く。
「ん? ・・・おぅ、キルガ。って、起きてて、大丈夫なのかよ?」
 声をかけてきたのはハルクだ。えぇ、と軽く答え、おはようございます、と挨拶する。
「ええ——っ、もう回復しちまったのか!?」
「こんな短時間だって誰も考えてないぞ!」
 騎士たちがそろって頷く。また賭けの対象にされていたのか、とキルガは苦笑した。
「ふぅむ・・・お前さん、そんなナリしてっけど、なかなかの生命力じゃねぇか。ただもんじゃねぇな」
「ちくしょう、うらやま憎らしい! 丈夫でしかも女にモテモテなんて、そうそういるもんじゃねぇぜ!」
「うるさいっての。お前、今37だろ? そろそろ身を固める覚悟をもちやがれ」
「覚悟はあるぞ!」
「相手がいないだけで、だろ」
「それを言うなそれを!!」
 騎士たちがどっと笑う。“女にモテモテ”のくだりがいまいちよく分からなかったのだが(自覚していない)、
とりあえず、助けてくれたことへの礼を述べる。
「ま、それが仕事でもあるからな。それに、助けたっつーか、見つけたのは、パスリィだしな。いいってことよ」
「おぉ、そういや、パスリィの奴、兄ちゃんの目が覚めたら呼ぶように、とか言ってたな。呼んで来いよ」
「えぇ——、俺がかぁ!?」
「俺も勘弁だー!」
「情けない奴らだなぁ」
「じゃぁお前が行けよっ」
「それとこれとは話が別であ〜る」
「逃げるなぁ!!」
「・・・・・・・・あの」
 ほとんどキルガそっちのけの討論(?)に、キルガ本人が口をはさむ。
「・・・僕自ら行って来ます。助けてくれた人に、来いとも言えませんしね」
「っおおお、兄ちゃん、よくぞ言った!!」
「くぅ、丈夫でイケメンで丁寧で優しいなんて、完璧すぎんだろぉ!」
「・・・・・・・・・・はぁ」
 どう反応しろと言うんだ、とは、キルガは言わなかった。








              Chess)ムサ苦しい男ばっかですみません・・・つか華がない(笑