二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.31 )
日時: 2010/11/11 17:00
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: rHtcSzQu)

・・・戻りまして、ウォルロ村。

「うわーっ!」

というマルヴィナのややこしい叫びは、悲鳴ではなく感動である。
目線の先は、ウォルロ村自慢の、大滝。夕日の光を取り入れ、まばゆいばかりに輝くそれ。
とはいえ、あたりはほぼ闇夜、その光景は一分足らずで終了した。
・・・つまり夕日が全部沈んだ。
「・・・・・・・・・・・けっ」
あまり綺麗ではない言葉を呟き、マルヴィナはくるりと背を向ける。
手を開き、星のオーラを確認。そしてその量に満足する。
「こんな、もんでしょ」
ひとりでにやり、と笑う。そして、最後の見回りにかかった。

村長家では、息子のニードは遊び呆けてろくに仕事をせん第一あいつは19歳にな(以下略)・・・と
愛妻に愚痴をこぼす家の主を一分ほどながめる。
ニードというのは、先日魔物騒ぎを起こした張本人、リッカの幼馴染でやたら人に威張る癖あり、
ちなみにリッカに片思い中——ということまではマルヴィナは知らないが。

馬小屋では。
働き終わって_というか全部マルヴィナが手伝ったといっても過言ではない_すっかり寝てしまった
中年のおじさんにタオルをかける。

噂好きのおばさんの家では。
・・・なぜか飛んできたジャガイモをヘディングしてしまい、怪訝そうな顔をされた。

宿屋では。
入るなり飛び込んできたのは来客のいびきの大合唱(ちなみに音痴)。
・・・それだけ平和なんだろう。いいことだ。多分。

・・・大丈夫だ。マルヴィナは思った。よし、帰ろう、と。
折りたたんだ翼を広げ、マルヴィナは飛ぶ。


「オムイ様」
ところ変わりて、天使界。
ひざまずく上級天使と、ぽやぽやのおじーちゃんオムイ。
「楽にしてよいぞ」
オムイは威厳のかけらもない声で言う。
「はっ、恐縮です。・・・ところで、今宵はまた、一際世界樹が輝いている様子・・・いかがされますか」
「ふむ・・・よろしい。たしかに、そろそろ果実が実を結びそうな頃・・・イザヤールは?」
「今、世界樹の元へと向っている途中かと」
「行くとしようかの」
オムイは立ち上がる。上級天使は下がった。
「・・・ああ、そうじゃ。確か守護天使キルガ、マルヴィナの二人が人間界に赴いておったの。
戻ったら世界樹まで来るよう伝えておいてくれ」
「はっ」
恭しく頭を下げられたオムイは、ひとまずその頭を上げさせると、
「・・・・・オムイ様っ!?」
・・・“えいえいおー”のポーズをとり、その後とてつもないスピードで走っていく。
一万歳とか、あるいはもっとだとかいわれる、
名のとおりの長老の見せる若々しさに残された一同は穏やかな笑みを浮かべるが、

ゴキッ

・・・という、オムイの消えた階段の向こうから聞こえたその音に、失笑に変わったのであった。

Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.32 )
日時: 2010/11/11 17:39
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: rHtcSzQu)

見習い天使一同は、天使界の外には出してもらえない。
『守護天使候補』や、同じ位にある『上級天使見習い』もまた、そうであった。
理由は、単純。守護天使や上級天使でもない彼らに
意味もなく世界樹を見せるわけには行かない、ということからである。
例え女神の果実が実るかもしれないとしても。天使たちは妙にそのあたりが義理堅い。・・・だが。

「ちぇ、頭固いんだよなぁ・・・あ、おいテルファ、そっちじゃない、こっちだ」

・・・例外の、守護天使候補止まりのセリアスは、
勝手に子分としている見習い天使テルファとともに、何故か外にいた。

「セリアスぅ。やっぱ止めようよ。怒られるよ」
「ばかいえ。チャンスなんだぞ。世界樹を早く見れるかも知んないんだぞ。お前の仲間よりも」
「でっでも、トゥールさん見張りについてるし、あの階段上らなきゃ見に行けないんでしょ?」
「それが今困っていることだろうが。説明せんでいい」
セリアスは、世界樹への階_きざはし_の前で、
(セリアスのような)守護・上級以外の天使が来ないよう見張っている
上級天使トゥールを見張っていた。
・・・見張りを見張るという、珍妙な行動であった。
「あ〜〜っ、くっそう。これは奥の手を使うしかないのか・・・」
「さっきも言ってなかった? それ」
「・・・・奥の奥の手だ」
「・・・ちなみに?」
テルファが促し、セリアスは至極あっさりという。

「“俺も守護天使になりました”」
真顔で。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶはっ」
長い沈黙、最終的に笑い出すテルファ。
「あはははははは! セリアス、そりゃムリムリ!」
「ばか、声がでかい!」
「うぐほっ」
「いいか、俺は『守護天使候補』だぜ?だから全然ダメってわけじゃ——」
彼はサンマロウという名の町の次期守護天使候補であった。
・・・ちなみに、先ほどの『うぐほっ』は、
テルファがセリアスから肘鉄をマジに食らった時の彼の非の叫びである。
「・・・だめって、わけじゃ——あ、やべオムイ様だっ」
・・・結局隠れる二人。
「無理だようほんとに〜」
「だー、あきらめ早い。そんな根性で守護天使になれるのかっ」
「神の国に行ったら、なる必要もなくなるよ」
「・・・・・・・・・・」
反論できなくなったセリアス、とりあえずスコーン、と殴っておく。
「ってぇ。・・・あ、トゥールさん行っちゃった」
オムイに促され、自分も世界樹の元へ行く見張り。チャーンス!! と、二人は同時に目配せ。
人目を気にするゴキブリのように、かさこそ歩く二人の、・・・後ろから、

「——何やっているんだ?」

・・・なんて言葉がかかり、ゴキブリは、否二人の天使は
その名のとおり飛び上がり、脱兎の勢いで壁に張り付き、——脱力。
「きっきキルガかよぉ・・・マジでびびったぁ・・・」
それは、星のオーラを五つ左手に持つキルガであった。
その彼は、二人の様子を観察、次の言葉は、
「バレた時、責任はとらない」
であった。
世界樹見たいんだよ、なっ、頼む、黙っていてくれ!——そう言おうとしていたセリアス、ドン引き。
そしてキルガは、何事もなかったように再び歩いていった。
「っあービビった。くっそうキルガめ、相変わらず脅かし」

「——何やってるんだ?」

「「うおわえあがっ!!」」
しかし次なる同じ言葉がかかり、——脱力再び。
次は、キルガと同じく星のオーラを右手に五つ持ったマルヴィナであった。

セリアスはともかく、テルファは失神寸前となっていた。