二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.316 )
日時: 2011/03/27 21:21
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

 マルヴィナたち四人は、例のテントの奥で、思い思いの格好で座っていた。
入り口でテントの主の部下との誤解があって仕方なしに気絶させたというのは既に説明済みだが、
ちなみにその後、その上司らしき男が現れ、謝っておいたら、怒られるどころか褒められたりする。
 ともかく、マルヴィナは長座体前屈をしているし、
キルガは腕を組んだまま壁(?)にもたれかかり考え事をしているし、
セリアスは遠慮容赦なくあたりを見渡しているし、
シェナは体をだらりん、と投げ出したままボーっとしているしで、何とも気の抜けた連中にしか見えない。
「・・・それにしてもすごいねぇ」
 シェナぽつり。「この町にこのテントあり、ね」

「それは私の弟の趣味だ」

 と。急に、そんな声がした。決して若くはない。が、深く、低く、威厳がある。
たとえるなら、ダーマ神殿のロウ・アドネスに近い声色だった。
 その声の主が姿を現した時、だらりんモードだった四人は瞬時に体勢を正しくする。
 肌は日に焼けて黒い。わずかに白い髭があるものの・・・顔に皺が刻まれているものの・・・老人に見えない。
五十代だとは思うが、四人が抱いた印象は——まだまだ現役の、海賊。
「・・・す、すごい・・・格好いい・・・」
 シェナが口を少し開けたまま呟く。キルガが、へぇ、シェナって、こういう人がタイプなんだ、と思った。
そういえばロウ・アドネスに対しても、似たような反応だったし。
ともかくキルガはその時いつものお返しに突いてやろうかと思ったのだが——なんだか後が怖そうなのでやめておいた。
「ようこそ、私はクラウン。何なりと問うが良い」
 どかり、と腰を下ろす。横のセリアスが圧倒されてビクッ、とした。
「あ、・・・あの、黄金の果実ってのを、捜しているんだ。
何か知っていることがあるなら・・・教えて、欲しいんだけど・・・」
 マルヴィナ、珍しく縮こまって話す。
「知っておる」
「はぁ。・・・っ知ってんのっ!?」
 しかし瞬時に回復。
「知っておる。あれは、弟の方が詳しいだろう。呼んでこようか」
「お願いしますっ」
 マルヴィナ即答。来て間もないというのに、クラウンは立ち上がり、ずかずかと奥へ行ってしまった。
「っしゃー、三つ目ゲット!」
「そう簡単に行くかな・・・」
 セリアスの叫びに、キルガが苦笑する。
「希望を捨てないのはいいことだ」セリアス、
「いくら希望があっても、現実は変わんないだろ?」キルガ、
「そもそも、ほんとーにあるかってのも怪しーわね」シェナ、
「絶対ある!」再びセリアス、
「根拠は?」シェナが念のために聞き、
「ない! ——あかん、なんかややこしくなってきた」とセリアス。
「あかんて、どこの方言!?」最後に突っ込んだのは、マルヴィナだった。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.317 )
日時: 2011/03/29 16:17
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

 しばらくの時間がたつ。
「いやぁ、お待たせー」という何とも呑気な声が聞こえ、四人は一斉に奥のカーテンを見る。
 ぴらっ、とカーテンがめくられ、出てきたのは、とんでもない巨体であった。
「うわぁぁぁぁっ」
 仰天したセリアス、何とも失礼な悲鳴を上げ、ちゃっかり斧に手を伸ばしかけたが、
後ろからシェナにその手をはたかれ、すごすごと戻す。
「いや、すまんすまん。驚かせたか、はっはっはっ!」
 その男は、仮にメダルは(シェナ命名)、クラウンとは打って変わって、全身脂肪のついた
背の低いのんびり屋・・・クラウンとは別の意味で、でかい人、だった。
「・・・あの兄に、この弟あり・・・」
 シェナが呟く。
「この町に、このテントあり、じゃなかったっけ」
「訂正よ」
 マルヴィナは苦笑して、目の前の巨体に問う。
「あの。黄金の果実、訳あって探しているんだ。譲ってほしいんだけれど」
「黄金の果実! あれもなかなか綺麗だったけど、やっぱり小さなメダルがシンプルオブザベスト」
「棒読みかっ」
「あの」キルガ、わずかに眉を寄せる。「綺麗[だった]、って・・・まさか、ここにはもう、・・・ないんですか?」
「あぁ。ない」
 あっさり言われ、石化する四人。
 何でいつもこうなんだよ! と言いたげなマルヴィナ、
 嫌な予感したんだよ、と言いたげなキルガ、
 希望は俺らを裏切るのかー!? と言いたげなセリアス、
 だっから言った通りじゃないの、と言いたげなシェナ、
 四人それぞれの表情を目の当たりにするメダルは、なんだか関係ないのに申し訳なくなってきて、フォローする。
「まぁ・・・橋の外れの奴が、売っちまったからなぁ。一応、買い手は知ってんだが」
「誰だそれはっ」
 つい、ドスを聞かせて問い詰めてしまったマルヴィナの首根っこを後ろから引っ張ったシェナは、
キルガに“代わりに尋ねて”と目くばせする。首を絞められもごもご何かを言っているマルヴィナに苦笑して、
誰なんですか、とキルガは一言。
「あぁ、それがだな、あぁ・・・」
「しっつれーしやーっす!」
 メダルが微妙に歯切れを悪くしたとき、軽い足取りで—だがその歩きには油断も隙もない—若い男が入ってくる。
「おっす! クラウンさんに会いに来たんだ」
「ん、あぁ、兄キなら奥にいる——」
「・・・デュリオ?」
 遮って、シェナが言った。マルヴィナをつかんだままである。
「デュリオでしょ? 覚えてる、私、シェナよ」
「ん? ・・・あぁっ、姐さん、お久しぶりで!」
「「姐さん!?」」ドン引いて、キルガ&セリアス。
 マルヴィナはというと、シェナに首根っこをつかまれたまま必死の横目でデュリオという名の男を
見ようとしたが、不意にその手を離され、どしんっ、と何故か前のめりに倒れる。
「痛・・・」
「ほんとに久しぶり。——あ、用事があったのね。先にどうぞ」
「あぁ、どうも。また姐さんの武勇伝でも、聞かしてくださいよ!」
 シェナは頷くと、同じ軽い足取りで歩くデュリオを見送ってから、「お前何者!?」と言いたげな
計六つの視線を浴びて、「ま、その話はあとで」と言った。








          Chess)ゲームのキャプテン・メダルが好きな人、キャラ崩壊すんません、的な内容(笑