二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.42 )
- 日時: 2010/11/22 19:19
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: 1bx430d5)
再び、朝は来る——四日目。
マルヴィナは眼を覚まし、頭をさする。
(・・・大分、治ったな)
天使界でもこんな大怪我を負ったこと、あっただろうか? ・・・いや、ない。
怪我を負いそうな事といえば剣術の鍛錬くらいだが、マルヴィナに剣で勝てる天使はイザヤール一人。
しかもその彼に、最近鍛錬に付き合ってもらったことはない。
・・・つまり。圧倒的な実力を持つマルヴィナが、普段の生活で怪我を負うはずがない。
免疫がないので(と考える)その分治りが天使にしては遅いほうであった。
(いつまでも、ここにいるわけにはいかない)
天使界に戻らなければならない——だが、翼のない今、どうやって戻ればいいのだろう。
何も出来ない。
(・・・なんで神さまは何もしてくれないんだろう)
誰かに頼るのは嫌いだ。
だが、今この状況、すがれるワラがあったら欲しい。
・・・いや、神をワラ以下にしているわけではないが。
天の箱舟も、例の波動で散った。天使は、神からの救いを受けることはなかった・・・。
——天使?
ふっと、目の前の鏡を見る。自分の姿。人間のような風体。着ている服は、これまたリッカにもらったもの。
[天使には、見えない]。
(・・・全知全能の神さまが、わたしの正体に気付かない・・・?)
それもおかしな話だ。だが、もしかすると。
天使の仕事その一、人助け、星のオーラ集め。
(手助けをして、星のオーラ集めをして。そうすれば、気付いてもらえるんじゃ・・・)
無理矢理な考えだが、やはり“ワラにすがる思い”である。
・・・ワラにか、星のオーラにか、神にか?
ともかく、希望を捨てないのはいいことだよねと、勝手に納得のようなものをして、
マルヴィナはガッツポーズし部屋のドアを開けようとした、瞬間、
「マルヴィナぁ、おは」
ドカッ
・・・というような不吉な音がし、マルヴィナのせっかく治りかけた傷は再びぱっくりと開いた。
つまり、リッカの開けたドアが、マルヴィナの顔面にストレートに当たったわけである。
というのは余談として。
リッカは、マルヴィナの額の血をぬぐうと、ぺしんと絆創膏をはり、用件を言った。
「あのね。何がどうなってどうしてどうやってどう感じたのかってことでどういうわけか、
・・・何かややこしくなってきたけど、とにかくニードが来てるのよ。で、何か話があるんだって」
「・・・話」リッカに指を指され、その後、「・・・わたしに?」
「そ。追い返すわけにもいかないし、とりあえず会ってあげてくれないかな。・・・あ、そうだ」
リッカは指をぴしん、と立てると、そのままマルヴィナに突きつける。再び。
「・・・ハイ?」
「い〜い? 何か言われたら、昨日みたいに黙っちゃだめよ。し〜っかり言い返すの!」
そこまではいいのだが。
「場合によってはチョップ三発まで許すわ」
・・・恐ろしいことを許された。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.43 )
- 日時: 2010/11/22 20:00
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: 1bx430d5)
階段を下りると、いきなりニードと眼が合う。
相手は「・・・よぅ」と一言。マルヴィナは素っ気なく「おはよ」と返す。
「何? 朝から」
「・・・ここで話すわけにもいかん。ちょっとついて来い」
「タイマンか何か?」
「ちげーよ」
とか言いながら、着いた先が家の陰、やはり[それ]にしか見えない。
「さて、話だが、——って、何だよその手はっ!?」
「反撃準備」
「タイマンじゃねぇってだから! いいから降ろせ降ろせ、振り上げるな手をっっ」
どうやら本気でビビッているらしい。ひとまず手は降ろしてやった。
「んーなビビらなくても。とって喰いやしないよ」
「そっそそうじゃねぇ!」
「ふん。——で?用件は?」
ああ、とほっと一息ついてから、ニードは先に説明からはじめた。
「例の大地震があったろ。 あれのせいで峠の道がふさがっちまったんだよ、土砂崩れで。
・・・ああ、峠の道ってのは、こっから東にある道で、セントシュタインで国とここをつなぐ
唯一の道なんだが、って、お前の通ってきたから分かるか」
ふうん、と答えようとして、“唯一の通り道”という言葉に反応する。
[旅人の]マルヴィナはそこを通ってここにいないとおかしな話になってしまうのだ。
「あんま記憶にないけど、・・・通った気もする」
「だろ。んーで、セントシュタインだの向こう側からの客が一切来なくなっちまって、
ウォルロの名水の販売も止まっちまったし、リッカの宿に客も来なくなっちまった」
実は後者がメインらしいが。マルヴィナは気付かない。
「で?」
「話の読めん奴だな。——ああ何でもない何でもない、振り上げるな手をっっ」
一瞬本気でリッカに許されたチョップ一発目を食らわせてやろうかと思ったが、
もったいないので(という理由で)やめた。
「ってーなわけで、この俺がちょっくらそれを直しに行ってやろうと思ったわけだ」
「ふぅん。行けば?」
「冷めてんな、オイ。俺は別にそれを報告するためにお前に会いに来たわけじゃねーぞ。
あそこまで行くまでに出る魔物だ、魔物」
「魔物」マルヴィナは復唱した。
「そ。あの地震以来以前より凶暴化してかなわねぇ。・・・ンでよ。
すげえ悔しいが、お前は俺より[は]強い。それに旅人だしよ。一緒に来てもらいてーんだわ」
[は]に引っかかりを感じたが、マルヴィナは一応黙っておく。
(土砂崩れねぇ? 単純だな・・・通れない状況になってるそれが二人でなんとかなるものなのか?)
無謀だと、笑ってやろうかと思った。・・・だが。
(天使のはたらき、か)
無謀でも何でも、マルヴィナは天使として、いつもやるべきことをやり続けてきた。
(それに、一応場所を知っておく必要もある)
その、二つの理由。
「——いいよ」
マルヴィナの答えを、承諾につなげる。
「引き受けた。・・・そのかわり、案内頼むよ。[まだ記憶が薄ぼんやりなんだ]」
そして、抜け抜けとやはりそういった。
「よっしゃあ、話は決まった。早速出発だな。——あ、後、面倒だから村の連中には秘密な。
ンじゃヨロシクな、ついて来い、[相棒]」
そう言ってくるり、と背をむけたニードに、
「・・・相棒・・・?」
凶悪なマルヴィナの声がかかり、
ドバコ、
という音がして——
「ってええぇえ!?」
一度目のチョップは、この場で使われた。