二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.421 )
- 日時: 2011/06/06 21:09
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: fckezDFm)
呼ばれた四人は、声の主と思しき女中が着くのを待つ。
紫がかった髪を女性用のターバンですっきりとまとめた、若い女性である。肩のショールをひらひらさせて、
慌てて走ってくる。いやそんなに急がなくてもいいよ——と言おうとした時、女中は思った通り何かにつまずいて
前のめりにすてーん、とすっ転んだ。
・・・いや、これは思った通りとは言えないかもしれない。あまりにも見事に、いっそ綺麗と言えるほどに
しっかりと転んだものだから、マルヴィナたち四人は思わず呆気にとられた。
「・・・大丈夫?」
念のために尋ねると、女中ははっと顔をあげ、あわてて立ち上がり、「はひっ! 申し訳ございません!」と
若干噛みつつもちゃんと答えたのであった。
「ならいい。・・・で、わたしたちを呼んだんだよね?」
マルヴィナは慇懃に笑い、そう尋ねる。女中は再び返事し、まず自分の名をあげた。
彼女の名はジーラ。グビアナ城女中、女王のペットの小蜥蜴アノンの世話係である。
彼女の話を整理すると。いつものようにアノンの世話をしていたら、いつの間にかいなくなっていたと、
そういうものである。何とも簡潔な話であった。
「こんなこと、今まで一度もなかったのに・・・どうしたのでしょう?」
「さぁ」
もちろん知るわけがないので、それだけ答えておく。
「でも、本当によかったです。アノンは女王様の唯一の家族であられるのですから・・・」
少しだけ切なく笑って、ジーラは小声で言う。が、すぐに気を取り直し、お礼に女王に会ってゆくといいと勧めた。
四人はいや別にどうでもいいのだけれど・・・というような視線を交わし合ったが、セリアスがキルガに
聖騎士の事頼んでみたらどうだ? と聞いた。確かに、修道院は寄付金が減ったせいで危機的な状況に陥りつつある。
キルガがそうだなと頷き、マルヴィナとシェナはキルガがそう言うならとそれに従った。
別に果実が見つかったんだし他のもの探すのはあとからでもできるしと。
半時はたっただろう。
四人は顔を見合わせた。
謁見の間にして、彼らはずっと待たされている格好となっていた。そこにいるのは四人のほか、先ほどのジーラ、
大臣—ちなみに男—、ジーラの妹という女中と女戦士二人だけ。すなわち、玉座には誰もいない。
皆が皆、溜め息をつく直前の表情であった。
——否、金のトカゲ、アノンも含めれば・・・そのアノンは、皆とは違う。
当然トカゲが溜め息をつくわけではないが、トカゲらしい表情をしているわけでもなかった。
セリアスの腕の上で諦めておとなしくしていながらも、緑色を成した小さな眼は、凶悪に光っていた。
・・・マルヴィナのフードに入った、金色の果実をじっと睨みながら。