二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.428 )
日時: 2011/06/12 19:43
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: fckezDFm)

 もう手段は択ばない。
果実をスライスされる前に、なんとしても取り返さねばならなかった。
が、何分今回は相手が沐浴場なので、マルヴィナとシェナ、キルガとセリアスの二組に分かれ、
マルヴィナたちが沐浴場へ向かう手段を探し、キルガたちが情報収集という形となる。

が、原因を作り出してしまったマルヴィナは。
「・・・確かにそうだけれど」
 あそこで正直に言わなければ無事に終わったのに、と言ったシェナに、そう抗議した。
「もしあそこで何も言わなかったら、ジーラさんは濡れ衣を着せられる羽目にあったんだ。黙ってなんかいられない」
「・・・マルヴィナは、優しすぎるのよ。一人仕事を奪われるのと、果実のせいで混乱が起きるのと・・・
どっちが大変かって言ったら、果実の方じゃない」
「でも、やっぱりいやだ。・・・わたしたちの都合で、関係のない人を、巻き込めないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 シェナは答えなかった。小さく溜め息をつく音が聞こえただけだった。



「・・・あんたたち、ここを何処だと思ってるのっ!?」
 やはり・・・というか、なんというか。ようやく沐浴場に着いた二人は、
変わらぬ格好のユリシスにそんな不機嫌声をあげられた。

 必死の情報収集の末、二人は城の屋上の水路が直接沐浴場につながっていることを聞き出した。
そこから飛び込めば、一発で入り込めるらしい。
「・・・・・・・・・・なんか無防備じゃない?」
 シェナがさっきよりもなお呆れ果てた声で言う。砂漠の人の性格っていまいちよく分かんないわ、とかなんとか。
「ともかく、行こう。強行突破だっ」
「気乗りしないわね・・・泥棒より質悪いわ」
「仕方ない」

 ・・・という経緯があって、今のこの状況であった。
「・・・いっつぅ・・・」
 びしゃびしゃに濡れて呻き声をあげるシェナには悪かったが、マルヴィナはさっさと立ち上がり、ユリシスを睨む。
「こうしなければならないほどに、それは返してもらわなければならないものなんだ、・・・っ!」
 言ってから、マルヴィナはビクッとした。足元を、何かが通り過ぎたのだ。
水面に揺れる、それは、薄く切られた金色の——・・・。
「あははは、生憎! 残念でした、果実は全部スライスした後よっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
 ぎしっ、とマルヴィナの歯ぎしりの音が響いた。どうすれば良い? 果実を元に戻さなければならない。
だが——今まで食された果実は、食らった者の意識を正常に戻すことで果実も元の姿に戻った。
だが・・・切断されただけであるこの状況で、どのようにして戻せばよいのか・・・。
皮肉気に笑うユリシスから目を離さずに、マルヴィナは考えを巡らせる。

 ・・・が。その目が、不意に、女王から離れた。
視線は彼女のペットである、金色の小蜥蜴へ。
 興味深げな視線、ひと声鳴き、そして——

(っ駄————————!!)

 ・・・その一切れに、食いついた。
マルヴィナが、シェナが、目を見開く。
二人が恐れていたことが、現実となった。小蜥蜴の身体が、ふわりと浮く。
沐浴場にいるすべての人間の目が、アノンに殺到した。きゅあああっ! アノンが叫び、そして——
「っ!!」
 沐浴場、否、浮かべられた果実が光り、全てがアノンの元へ集まる。その光を消さぬまま——
アノンを包み、それがパッと散った・・・刹那。

「・・・きっ」

 侍女たちが喉の奥から絞るように声をあげ・・・


「きゃああああああ———っ!!」


 そして、絶叫した。