二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.435 )
- 日時: 2011/07/04 21:12
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: fckezDFm)
「とわあぁぁあぁああ——っ!!」
奇妙な悲鳴を上げ、どででばっきんどかぐしゃかーん、などの音を立ててマルヴィナは転がり落ちた。
地下へと続く梯子がヌルリと滑り、ついでに手も滑ったのである。
・・・沐浴場から続く、井戸の中。
逃げたアノンとおそらくともにいるであろうユリシスを探すべく、マルヴィナとシェナはそこへ飛び込んだ。
行く前に、荷物をまとめ出て行きかけるジーラに、キルガとセリアスへの言伝を頼んだ。
特別許可で入れるようにしてくれ、と。
・・・が。実際中に入ってみると、かなり入り組んでいる。一体誰が何の目的で作ったのだろう。
合流するまでに時間はかかりそうだし、第一むんむんの湿気にヌメヌメの床、悪寒を与えるしか使い道がなさそうである。
実際、マルヴィナはこうやって滑ったわけである。
「うへぇ・・・ドロドロだぁ。気持ち悪・・・」
「だいじょーぶマルヴィナぁ?」
まだ降りて来ていないシェナが、上から覗き込んでくる。
「身体的には大丈夫だ。精神的には最悪だ。・・・気をつけなよ? 本気で滑るから」
「んー、まぁ、慎重——」
ずるり、と不吉な音が聞こえる。
「わきゃあああっ」
次いでシェナ、標準的な悲鳴を上げ、どどどぽきっどすっどっしーん、などの音を立ててマルヴィナの上に落ちる。
「重っ」
「失礼なッ」
思わず素直な意見を述べたマルヴィナに、すかさずシェナチョップが入る。
「痛っ。仕方ないだろ本当の事な——あ、イヤ」
「・・・ 闇力呪文_ドルクマ_ でも食らう? マルちゃん」
誰がマルちゃんだ、と抗議したかったが、先に殺されそうなのでいいえスミマセン、と謝っておいた。
マルヴィナとシェナが地下水路奥部でそんなアホな会話をしていたころ、キルガ、セリアス、そしてジーラは、
井戸に入って間もなく、集まってきた魔物たちに囲まれていた。
「そ、そんな。こんな所に、魔物がいたなんて・・・」
ジーラは後退りする。キルガは聖騎士として、ジーラの防衛を第一に考えることにした。
「セリアス、どうする? 戦うか?」
「いや・・・俺ら二人で、回復なしでこんだけはキツいだろ。・・・隙見て、突破する」
「従おう」キルガは、万が一を考えて、とりあえず槍を手にしておいた。
セリアスがきっかけを作る。魔物に攻撃する素振りを見せ、輪を乱す。そこに生じた隙を狙い——走る!
「っしゃ、上手く——」セリアスが叫んだ時、ジーラが脚をもつれさせ、その場に倒れた。魔物が狙う。
「その行動を後悔しろっ」キルガは気合一閃、魔物を薙ぎ払う。
やるじゃん、と言ってから、セリアスも加勢した。
絶命した同士に怯んだ魔物たちを置き去りに、ジーラを助け起こしてからその場から去る。
「申し訳ございません」ジーラが小声で謝る。
「気にすんな、助かったからいいじゃないか」セリアスは自然にフォローする。
「だけど・・・無理はするなよ。本気で、城内で待っててもいいんだぜ?」
「いいえ」
きっぱりと、断る。「大丈夫です。女王さまのご安全が第一ですわ」
「・・・」セリアスは黙る。そして、さっきから気になっていたことをついに、問う。
「・・・何で、そこまで女王に尽くそうとするんだ?」
セリアスは確かに聞いた。女中たちの本心を。
“女王がいなくなってせいせいした”
“おべっか使わなくて済む”
“これで国も安泰だ”———・・・
「女王さまは」
ジーラは、唇をかむ。
「・・・ユリシスさまは、孤独なお方なのです」
・・・そして、走りながら、語りだす——。