二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.45 )
日時: 2010/11/26 17:15
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: GK3ghjI2)

——その彼は、たまたまその地にやってきた漁師の舟に乗っていた。
漆黒の髪が潮風になびく。端整な顔立ちの彼の左頬には、
今は治りかけている—元は大きな傷だった—そこを覆うようにガーゼが貼ってあった。

「お前さんの噂は聞いてっぞ、兄ちゃん」
漁師の、威勢のいい親父さんが、彼に話しかけた。
「何でもあの大地震の時、その後上から落ちてきたらしいじゃねえか」
「・・・ええ、まあ」
彼は二語、人間の世界では珍しい、不思議な声で答えた。
「いってぇお前さん何者だい? 聞いた話じゃトンでもねぇ大怪我負ってたっつうに、
 今やそんなケロッとしてやがる。いくら若ぇったってなぁ」
「鍛えられたんです」そう答える。「それだけですよ」
「それ[だけ]でそうなっちまったら、大したもんだぜ。・・・ところで、そろそろセントシュタインの国だ。
 あの辺で降りてもらうしかねぇ、そっから歩いてくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
「まあ早まるな。礼は後だ」

数分経つか経たないかの間に、船は陸に着く。親父さんは舟の中のロープをつかんだまま、ニヤリと笑う。
「ま、これも何かの縁。俺の名はジャーマス! 覚えておいてくれよな!
 ——っても、ま、この顔の刺青で分かるか」
そう気にしてはいなかったのだが、ジャーマスの右頬には獰猛そうな魚_ピラニア_の刺青がある。
確かに何年経っても忘れそうにない。それにもともと彼は記憶力が良い。
「ジャーマスさん、ですね。いつかまた、お会いできる日が来ますように」
彼は笑い、手を差し出す。大きく逞しいジャーマスの右手が、がっちりつかむ。

「・・・僕の名は、キルガです」

彼は——キルガは。
翼と光輪を失った、かつての天使の一人は、そう言って、漁師ジャーマスに別れを告げる——。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.46 )
日時: 2010/11/26 17:39
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: GK3ghjI2)

「ど・・・どういう事っ!」
ウォルロ村にて、リッカは思わず、門のところにいた近所に住む若者の胸ぐらをつかんだ。


 ・・・時は十分前に戻る。
 村長のドラ息子ニードと、突然現れた守護天使と[同じ名前の]マルヴィナの二人が、
村の外、峠の道まで出かけた。
 そのことを知らないリッカは、しばらくマルヴィナを探し回り、人々の情報で門までたどり着いた。

「あの二人ならさっき出て行ったぞ」

 という若者の言葉によって、リッカがその若者の胸ぐらをつかむこの光景ができたという事だ。

「い——痛い痛い。分かった、話すから離してくれっ」
「え? ・・・何を?」
「手を!」
「・・・? ああ、[離せ]ね。喋る[話す]かと思った。——ごめんなさい」
 開放された若者は、大げさにげほげほ咳き込み、その後無造作にぐしゃぐしゃと頭をかく。
「いや、何かニードさんが来て、峠の道まで行くからここを通せって——いや、俺は止めたぞ?
 でもコイツがいるからって、あの変——じゃなくてマルヴィナつれて行っちまって」
 リッカ、硬直。
「な・・・何てことよ・・・ニードったら・・・帰ってきたら即チョップ決定よ・・・」
 リッカは低く呟き、宿へ向った。
 情報提供したにもかかわらず礼も言われぬまま残された若者は、
「やれやれ・・・ニードさんご愁傷様」
 こちらも呟いた。


 道が二手に分かれている。
 看板には、『峠の道』の文字。
 マルヴィナは、さっさとそっちへ行く。一方ニードはというと。

「お、おい、待てよぉ・・・お前、速すぎる・・・」

・・・情けなくへたり込んでいた。
マルヴィナは顔だけ振り返り、早口で言う。
「何それ自分から言っておいてギブアップ?」
「・・・な、舐めんな! 俺はまだへこたれてねーぞ。さっさと行くぞ!」
「誰が?」
「うるせ」
二人はさらに進む。








Chess)
  中途半端だけれど、ここで終わり。時間的に。
    See You Again! (何故英語?