二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.462 )
- 日時: 2011/08/15 16:06
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: Xn5/gwB3)
【 Ⅹ 】 偽者
1.
「うっ、わぁぁぁぁぁぁ—————っ!?」
「セ、セリアスっ!?」
三日後の事である。
グビアナ砂漠から船に乗り、船に揺られて新天地到着、例によって酔ったキルガを何とか励まし歩くこと数時間、
草原に着き休憩所らしきものを見つけ、一休みしているところでセリアスが叫び声をあげた。
「たったったっ、助けてくれれれっ」
食糧調達として、セリアスと立ち直ったキルガの男二人組は香草や木の実を探していたのだが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何やってんのアレ?」
セリアスの後ろを、大勢の魔獣たちがマークしていた。
突撃ホーン、ビッグホーン、ヒババンゴ、その他もろもろ、そろってどどどどっとセリアスを追いかけているのである。
セリアスの元いた場所を見てみれば、香草を手に目をしばたたかせるキルガが無事な様子でぽつり残されていた。
シェナが大きく息を吐く。
「セリアス・・・なに獣と遊んでんの?」
「遊んでねーよ!! いいから助けてくれっ」
「しゃーないわね・・・マルヴィナ、行っ・・・」
行くわよ、と言おうとして、法衣の裾が引っ張られる。
何? と聞くのに変更しようとして・・・シェナもまた、目をしばたたかせる。
マルヴィナの視線の先には。
アサシンエミュー×2
アイアンクック×4
爆弾岩×2
「・・・・・・・・・・・・・・っいつの間にいたのよこれっ!?」
「この休憩所」マルヴィナがひきつった笑いを浮かべながら言う。「魔物専用のモノだったようだ・・・」
「理不尽だわ! 魔物には休憩所があって旅人にはないなんて!」
二人は武器を抜き放ち戦闘開始。セリアスのことはとっくに頭の隅に追いやられていた。
「おおおおおおおいっ!!」
「逃げる 闘匠_バトルマスター_ なんて聞いたことないよセリアス・・・」
「キルガぁぁっ、ノンキに構えてないで助けろっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
キルガは状況を確認する。セリアスの持久力はなかなかの者だ。対し、マルヴィナとシェナは、
四倍もの数の魔物と戦っている。ここは[普通に]考えて、
「持久力で今しばらく我慢してくれー」
こうなるのが妥当だろう。
キルガはそのまま二人に加勢した。
「え、おいちょ、こら、なんだその無神経な答え!? あー、ちょ、注意だけでもそらさせてくれ!」
「あ、その手があるか」シェナである。「マルヴィナ、数秒頼むわよ」
「はい?」マルヴィナ、爆弾岩を叩き割って問い返す。
「・・・セリアス! 何が起きても気にせず逃げ回って!」
何とも不安になる言葉を言われ、セリアスは大袈裟でもなく本気で終わった、と思った。
が、対するシェナは、呪文体勢をつくると、やけに長い前置きの詠唱を始める。
「——————————————————」
シェナの 霊気_オーラ_ が膨れ上がった——刹那。
「—————————イオナズン!!」
「・・・っええええええ!?」
聖の爆発、上位呪文、 爆破呪文_イオナズン_ が轟きわたる!!
「セリアスは!?」
「大丈夫よ」シェナは汗を拭い、言う。「・・・・・・・・多分」
「ちょ!?」
マルヴィナがアイアンクックに止めをさしツッコむ。が、キルガの大丈夫みたいだ、の一言に、
爆発の煙が若干残るその場を見る。
何と、というか。未だ追いかけっこを続けている影は二つ、つまり、セリアスと被害を免れた魔物一匹を残し
他はすべて昇天していたのである。
「セリアス! あとは自分で始末をつけなさい!」
「了解ー! 助かったぞシェナー!」
まだ叫ぶ余裕があるらしい。
「いつの間にあの呪文を?」キルガがシェナに問う。
「ん、今よ、今。ぶっつけ本番。やー、まさかあそこまでうまくいくなんてね」
「・・・シェナ。あんた天才だよ。・・・いろんな意味で」
マルヴィナは、呆れ半分、賞賛半分でそう言った。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.463 )
- 日時: 2011/08/15 16:19
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: Xn5/gwB3)
セリアス側はこれでいいとして、問題はこの大勢の魔物である。
何しろすべてが初めて見る魔物であり、また強く。思うように戦えないのである。
また、シェナも先程の爆破呪文で疲労しており、全体攻撃の呪文を扱うのがつらい状況にあった。
「厳しいな。・・・ここは、退避を選ぶか?」
「そうしたいけれど。・・・こいつら、絶対狙ってくるわよ?」
逃げたとしても、見るからに彼らより足の速い獣たちはすぐさま追いついてくるだろう。そう言っているのである。
「んー・・・じゃあ、今度はこっちの番だな」
そんな会話を聞き、不敵に笑ったのはマルヴィナだ。
じゃあ、ちょっと失礼、とあっさり言い、彼女は戦闘の輪から遠ざかる。
「マルヴィナ!?」
マルヴィナはシェナの声に軽く肩をすくめると、パンパンと手を叩く。
そのまま指を唇に当て、口笛を一つ鳴らした。
かすれ気味の高い音が草原に響く。キルガやシェナを狙っていた魔物が、そろってマルヴィナに視線を向けた。
挑発されたと理解した魔物たちは、そろってマルヴィナ一人に狙いを変更する。
が——マルヴィナは、それに対し不敵に笑うと——腕を顔の前で交差させ、身をかがめ、そして。
姿を、消した。
「っ!?」
魔物たちが、見えないマルヴィナを追って走る。走る。走る・・・
「・・・・・・・・・・・どこまで走っていくのかしら?」
「マルヴィナが消えたこと、分かってねぇなアレは」
解放されたセリアスがようやく二人のところへたどり着く。助かったが・・・と、呟く。
「マルヴィナは? ・・・まさか 転移呪文_ルーラ_ でも・・・」
「違うよー。わたしはここだー」
何とも呑気な声がして。そして、見えないマルヴィナは、セリアスの肩をポン、と叩いた。
「ふながぁぁっっ!?」
当然、不意打ちかまされたものだから、セリアスは盛大に驚く。
「んな驚くことないだろっ。ステルスだステルス! 特技だ!」
特技だ、と言っている間に、マルヴィナは元の姿に戻る。セリアスの後ろ。
「うわ」
「驚きすぎだっ」
マルヴィナの肘鉄炸裂。痛そうだった。
「えっと。ステルス・・・?」
そんなセリアスにかまうことなく、シェナが尋ねる。
「そう。気配を消すんだ。教えてもらった」
「へぇ。便利ね」
まぁね、と笑ってから、マルヴィナはキルガと視線が合う。
「・・・マルヴィナ・・・その技」
そして、ぼそっと呟く。何か問題でもあったのか? と不安になるマルヴィナ。
だが彼は、ごく真剣な表情で言った。
「その技・・・盗みに使わないでね」
しばらくの沈黙の後、草原に盛大な打撃音が響く。