二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.498 )
- 日時: 2012/01/04 15:53
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: VEcYwvKo)
漆千音))初更新は敵国の状況をお伝え。
囚人は言う。
本当に良いのだな、と。
皇帝陛下は返す——
お前に否定権はない、と。
同じころ、ガナン帝国。
マルヴィナがどこにあるのか悩んでいるその位置にいる二人の、潜むような会話である。
皇帝陛下——即ち、ガナサダイ。 (>>387参照)
そして、つい最近、マラミアがその存在をマルヴィナに伝えた者—“霊”を蘇らせる者—囚人。
「念のため、もう一度言う。・・・“奴”を蘇らせる間は、誰ひとり蘇らせることはできない——」
「天使どもが思いのほか著しく力をつけ始めた」
遮って、ガナサダイは言う。
「“天性の剣姫”に関わりあるという“奴”を利用する以外の手立てもあるまい」
「確かに、味方に付ければ恐ろしいまでの戦力となるだろう」囚人は一度、肯定する。
「だが——敵となれば、最も警戒すべき脅威となる——」
「それ以上の無駄口を叩くな」もう一度遮って、ガナサダイは言う。
「貴様はただ実行さえすれば良い」
「やれやれ・・・」囚人はあきらめたようでも、嘲るようでもなく、溜め息を吐く。
「面倒な仕事が来たものだ・・・では、しばらくの面会は控えてもらおうか。強大な力に巻き込まれたくなければ」
「大きな世話だ」ひとつ悪態をつき、ガナサダイは、その場を去る——
足音が聞こえなくなったその場所で、囚人は静かに言う——
「生年不明、消滅三百年前。“蒼穹嚆矢”蘇生儀式——」
静かに、時が流れ始める。
「あーい、おつかれー」
——エルシオン学院。
その夜、四人は食堂にて、情報交換、首尾の報告、
「あっ、それは俺が食べようとっ」
・・・ついでに料理の取り合いをしていた。
「とられる方が悪いのよー、って、ちょっと私のゆで卵はっ!?」
「はいはーい。いただきましたー」
「マルヴィナっ!? それ美味しいのにっ」
「知っているよー。だからとったんだ」
「つーか、とられる方が悪いんだろ?」
「セリアス・・・明日は覚悟しなさい」
「すいませんした」
一人苦笑しながらもキルガはそれを眺め、最後に残しておいた唐揚げ——が皿の上にないことに気付く。
「・・・あれ?」
「あー、ここの唐揚げ美味しいな。ころもが特に」
タイミングよくそういったマルヴィナに視線を向け——
「・・・・・・・・・・・・・・マルヴィナ」
「なに?」
「・・・トマト、もらうよ」
「えーちょっとそれ最後まで残しておいたのにっ」
「こっちこそ唐揚げは最後まで残しておいたものだっ」
今度はその二人の会話に、セリアスは笑い、シェナはニヤニヤしていた。
ちなみにサンディはまた、人目を盗んでつまみ食いに走っていたりする。
お互いに大した首尾は得られなかったらしく、翌日に持ち込むこととなる。
マルヴィナは、悩みながらも、マイレナを探しに外へ出る。
マラミアの口調からすると、今回の事件を解決しないことには彼女には会えないのかもしれない。
だが、とりあえずは、捜しておきたかった。
門限が決まっているため、マルヴィナはそっと、気付かれないように、扉を開く。
幸い、雪は降っていない。今の内、と外に出る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
魔法的な力で学院内は寒さから守られているとシェナは言ったが、やはり[外へ出る者のいない]夜は
その力が消えている。若干雪は積もっており、そしてとても寒かった。
マルヴィナは油断なく辺りを見渡す。マイレナを探すためでもあり、
気配を感じたガナン帝国の使者に見つからないためでもあった。右手に隠したピアスを、握りしめる。
だが、やはり、何も、誰も見つかることはなかった。
(やっぱ、そうだよな・・・)
マルヴィナは溜め息を吐く。真っ白だった。時間も遅い。
戻るか。ちらつき始めた雪を見て、そう思った。
ざく、ざくと音を立て、マルヴィナはもと来た道を歩き——そして固まった。
寮の扉の前に誰かいる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」警戒して、その人物を遠くから眺め——そして、やばっ、と一言。
そこにいたのは——寮の、管理人であった。
(や、ヤバい。これって抜け出した事に気付かれたってことだよな・・・? ど、どうしよ・・・ってかなんで気づいた!?)
マルヴィナが自分の足跡を雪の上に残してきてしまったことに気付いたのは、その数分の後のことであった。