二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.50 )
- 日時: 2010/11/28 16:36
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: uPcLZd7c)
「さて、この先が土砂崩れのはずだ」
峠の道。
ニードが先ほどのへばりようはどこへやら、思いっきり威張り口調で一言。マルヴィナ無視。
反応なくさっさと進むマルヴィナにかなりの虚しさを感じたニードは、ちえ、と舌打ちし、
だが左へ曲がれという指示(命令?)は忘れない。
そしてニードは、そのマルヴィナがいきなり硬直したのを見た。
「・・・・・・・?」
ニードはその様子に興味を持ち、マルヴィナの後ろから彼女の視線先を見る。
だが、そこはただ木が倒れているだけ。何も変な所はなかった。
「何やってんだよ? 木が倒れているだけじゃねぇか」
マルヴィナはその言葉を聞いて、気付く。
マルヴィナの眼には、倒れた木は映っていない。その前に、[別のもの]が倒れているのが見えるから。
——別のもの。
(天の——)
人間の目には決して見えない——それは。
(箱舟!!)
・・・天使界から、崩れ、散ったはずの——天の箱舟。
(こんな、ところに——!)
「・・・変な奴。倒れた木がそんな珍しいのか?
・・・あっちだ。先行ってるぞ」
・・・ああ、と受け流す。
ニードが林の奥に消えたのを確認すると、マルヴィナはそのまま箱舟の扉に手をかけた。
・・・開かない。
(・・・やはりダメ、か)
マルヴィナは溜め息をついた。
ニードの絶叫が聞こえたのは、その時。
「っどうした!? ——うわ」
咄嗟に反応したマルヴィナが走り、・・・だがその原因を瞬時に理解し、脱力した。
「どうしたこうしたねぇ! 土砂崩れってこれかよ!
これじゃ二人でじゃどうにもなんねぇじゃんかよっ」
・・・土砂崩れとは。
大きな岩が、でーん、と見事に道をふさいでいるという光景であった。
確かにどうにもなりそうにない。・・・大体想像はしていたが。
「くっそぉぉ、せっかく親父の鼻を明かすチャンスだったのによお!」
瞬間。
「誰かいるのかっ!?」
岩の向こうから、別の声がする。
「うひゃうっ」
ニードが驚いて超高速できっちり五歩引いた。代わりにマルヴィナが答える。
「いる。——ウォルロ村の者だ」
「それはオレだろ」
・・・ニード返答。立ち直りが早すぎる。
「おーい、ここだー。ウォルロ村のイケ面ニード様はこ——あでっ」
二発目のチョップ。あと一発。
妙な語尾を気にせず、岩向こうの誰かが返答した。
「やはりウォルロ村の者かー。私たちはセントシュタインの兵士だ。
王様に言われ、土砂崩れを取り除きに来たのだが」
二人が顔を見合わせること数秒、ニードがいきなり拳を振り上げる。
「まじかよ! セントシュタインの王が動いたのか!
・・・んじゃ問題は解決したも同然じゃねーか、わざわざ来るまででもなかったんだな」
(わざわざ付き合わされる理由もな)
苦々しくニードを睨んでおく。
「ところでウォルロ村の者よー。取り急ぎ確認したいことがあるのだが、
あなたたちの村にルイーダという女性は来なかったかー?」
「ルイーダねぇ? 知らねぇな、そんな奴は。お前は?」
「知らない」
一言。
「そうかー。実はキサゴナ遺跡からそちらに向ったという噂があるのだ」
キサゴナ遺跡。マルヴィナは思った。
確か、昔はセントシュタインへ行くための通行手段だったはず。
だが、崩れやすく、魔物も出るからと、遺跡の扉は閉ざされ、峠の道が開通された・・・マルヴィナは
イザヤールからそう聞いていた。
「キサゴナ遺跡ぃ? まさか、あそこを女一人で向かうこたァねーだろ?」
「・・・そうか。まあとにかく、しばらくすればここは通れるようになると伝えておいてくれ」
「おっし、了解だぜ!」
単純な奴。
マルヴィナはそっと、小さく笑った。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.51 )
- 日時: 2010/11/29 16:41
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: gPFHbtSu)
ということで、戻りましてニード宅。
「この、大バカ者がぁっ!!」
・・・いきなり怒鳴られた。もちろん村長にである。
自分に向けてではないと分かっていながらも、マルヴィナは反射的に首をすくめる。
「な、何で怒られるんだよ? そろそろ通れること、オレらが聞かなきゃわかんなかったことだぜ!?」
「別に開けばおのずと分かることだ。命を危険にさらすほど価値のある情報ではないわ。だからお前はバカだと言うに」
「ぐうっ・・・!」
すごい。マルヴィナは吹き出したい気持ちを何とか抑えて思った。
さりげない、命の心配の滲み出す怒りだった。・・・伝わっているかは別として。
「そ・・・そういえば、ルイーダとかいうねーちゃんが行方不明になってるとか聞いたぞ!」
何とか価値のある情報を言おうと必死になっているのがバレバレであった。
村長は片方の眉を少し上げただけだったが、
「ちょっと! その話、本当なのっ!?」
後ろの扉から声がして、リッカ登場。
「りりりりリッカっ!? なな、何でここにっ」
「なんでって、あなたがマルヴィナを外に連れ出すからでしょう!?
ってそれよりもルイーダさんが行方不明って本当なのっ!?」
リッカがニードの胸ぐらを掴まんばかりに顔を近づけて睨んだ。
「知っておるのか、リッカ」
村長の一言で、リッカは頷き、ニードを解放した。
「父さんの知り合いにそんな人がいたはずなんです。セントシュタインの、宿屋の酒場の・・・女主人」
「・・・ふうむ・・・そういえばリッカはセントシュタインの生まれだったな」
「・・・あ、そーいや、キサゴナ遺跡から来るかもって言ってたぞ〜・・・」
(小声かよ・・・)
とは、マルヴィナ。
「それなら、探しに行くのは危険すぎるな・・・リッカ、今日はマルヴィナをつれてもう帰りなさい。
わしはこれからこのバカ息子をこってり絞ってやるのでな」
「・・・あ、待ってください。——ねぇマルヴィナ、ニードに許した数だけチョップした?」
「・・・へっ? ・・・いや・・・二回」
「じゃあ後一回残ってるわね」
リッカは再びニードの前に立ち、
「よくもマルヴィナ連れ回してくれたわねっ」
・・・最後のチョップを、それも盛大な音を立てて喰らわせた。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.52 )
- 日時: 2010/11/29 17:03
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: gPFHbtSu)
ニードの家を出た瞬間、家が飛び上がるのではないかと思うほどの大声が聞こえた。
マルヴィナとリッカは同時に吹き出す。
「・・・それにしても驚いたわ。マルヴィナが村の外に出たなんて・・・でも、全然何ともなさそうね」
「慣れてるから」
「そっか・・・マルヴィナは旅人だったもんね。
・・・ねえマルヴィナ。もし・・・良かったら、頼めないかな・・・
私、やっぱり行方不明のルイーダさんが気になるの。だからキサゴナ遺跡に——」
そこまで言って、リッカは頭を振った。
「・・・ううん。——ごめん。やっぱり、そんなこと頼めないよ。危険すぎる・・・
今私たちに出来るのは、彼女の無事を祈ることだけ」
・・・無事を。
「守護天使マルヴィナ様——どうかルイーダさんをお守りください・・・」
・・・守護天使は、今、天使ではない。
ならば、誰がこの村を、誰が彼女を、守るのか。
それは。
———わたししか、いない。
「——リッカ。わたしが・・・わたしが、探して来る。その、ルイーダって人を」
「マルヴィナ!? で、でも・・・それでもし・・・もしもの事が、あったら・・・!」
「大丈夫。わたしは簡単には死なないよ。何せ」
マルヴィナはニッ、と笑う。
「あの滝に打たれて、すぐに動けるようになったくらいだから」
「・・・・・・・。すごいね・・・マルヴィナは。私には、そんな勇気が、持てない・・・
ねぇマルヴィナ、これを・・・持っていって」
リッカは、家に置いてあった剣をマルヴィナに見せた。
「これは・・・単なる宿屋の忘れ物。そしてこっちが・・・昔、ここに泊まっていた人が、
宿代として置いて行ったんだって」
忘れ物のほうは、プラチナ製の細い剣。そしてもう一つが——
ところどころ朽ちた、使い物にもならなさそうな剣だった。
「・・・星・・・? 銀河かな・・・?」
辛うじて見える剣の模様をマルヴィナが声に出した。
「すごく錆びているけどね。不思議なの・・・今まで色んな災害とかから守ってくれた。
ほら、大地震で色んなところが壊れちゃったけど・・・ここは、ほとんど無事でしょ?
きっとお守りになると思うの。だから、これからもずっと持っていて欲しい」
「・・・ありがとう、リッカ。この剣が私を守ってくれるというのなら・・・わたしも、この剣を守ってみせる」
二人の視線が、まっすぐに交錯した。そして、互いに微笑んだ。