二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.509 )
日時: 2012/05/11 22:53
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: uyKWZpxa)

 剣も、槍も、斧も、弓も。
全て、既に構えてある。既に戦闘体勢に入っている。

 だが——誰も、動きはしなかった。

 なんとなく、ここでこの魔物を斃さねば、このおかしな世界から現世に戻ることはできないような気がしていた。
だが——それにしたって。
 どうやって、こんな大きな魔物と戦えるのか。
「・・・どうする・・・?」
 セリアスの問いは、だが誰も答えることができず、ぽつり消えただけだった。
 魔物、バラモスが動く。ずん、と前に出、腕を振り上げる。それだけでも、ぶわりと風が巻き起こり——



「っ!」



 そして、床に叩きつけられたとき、それを避けていながらも巻き起こる風の強さに耐え切れず、
マルヴィナとシェナは吹っ飛ばされる。
「このっ」
 セリアスが思わずいきり立ち、その腕に攻撃を仕掛ける。が、切れ味の鋭いはずのその斧さえも、
つけたものはかすり傷程度でしかなかった。
「なっ!?」セリアスは思わず叫び、バラモスの注意を引く。
 狙いを向けられたセリアスは思わず動揺し、じりと後ずさった。キルガはまずい、と思った。
(セリアスが焦っている・・・このままでは、まずい)
 戦いの時こそ冷静になれと教えられ、それを違えることなく守り続けてきたセリアス。だが、今はそうではない。
彼は焦って戦うことの危険さを頭で知っているだけで、身体では知っていないのだ。
 となると、その焦りから動きが鈍化し、無駄に傷を増やす原因になりかねない。

 だが、冷静になれない状況であるのも確かだ。
マルヴィナが立ち上がる。シェナが次いで身体を起こし、一気に気合いを溜めた。

「・・・っスクルト!!」

 気合を込めて発動させた 守増呪文改_スクルト_ も、正直なところ、気休め程度にしかならなかった。
マルヴィナが息を吸う。ゆっくりと吐く。そして、また吸う。
八分目あたりで止め、一気に「はぁっ!!」斬りかかる。
 剣が当たった。傷はない。また振るった。かすり傷程度。またしても斬りつけた。何かの音がした——
 セリアスは気付く。マルヴィナは、一見無謀な行為をやっているように見えて、
地味に、だが確実に、的にダメージを与えていた。
 いかに硬い体を持つものも、一か所を集中的に狙われてはかなわない。マルヴィナは、それを狙っていた。
 あるいは、必ずやどこかにあるであろう弱点を探し出すか——

 無謀すぎ、そして時間がかかりすぎる、それでも、やらないよりはましだと判断したのだろう。

「・・・加勢する!」

 落ち着きを取り戻したセリアスが、その無謀行為に乗った。マルヴィナはにやりとし、
素早くセリアスの耳に口を寄せて囁いた。
セリアスの表情が一瞬変わり——だが、すぐに呆れたような、納得したような表情となる。「了解だ」
 マルヴィナは頷くと、セリアスにその位置を任せ、シェナのもとへ。
そして、セリアスに言ったことと同じ内容を伝え、最後にキルガにまた同じことを言った。
「・・・いつからそんな大胆になったんだ?」キルガがセリアスと同じように苦笑し、だが槍を持つ手に力を入れる。
「セリアスにも言われた」マルヴィナが笑った。「目でね」
「それなら——奴の気を引いておく。・・・指示を頼む」
「頼まれた」
 マルヴィナは頷き、そして敵に向かって再び駆け出した。
マルヴィナだけではない。こんな作戦に乗ろうとする、自分たちもまた——セリアスも、シェナも、自分も。
皆、旅を始めたころに比べて、さまざまな意味でかなり大胆になっていた。

 それは、あのときより、互いを、皆を信用できるようになったからだろうか。

 キルガは目を細め、少しだけ笑うと、ひとり敵と対峙し、相手の動きに集中した——・・・。

















        漆千音)) この回正直何もやってねぇww