二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.516 )
- 日時: 2012/08/04 20:06
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
漆千音))では2.の続き。前回はマイレナを探すべく夜遅くにマルヴィナは寮を抜け出すが、彼女は見つからない。
仕方なしに戻ろうとすると扉の前に管理人がいて
[夜に抜け出した非行生徒]を待ち構えているのだった((笑
「・・・で、どうしたの?」
——翌朝、寮の食堂にて。
四人は再び集まり、軽い朝食をとっていた。
「んー、最初は裏にまわって二階の扉まで跳んでやろうかと思ったんだが」
「いやいやいやいやいや。そりゃ無理でしょ」
「うん、三回やってみたが無理だった」
「やったんかい!!」とは、セリアス。
シェナはこの子時々よく分からないわ、とか思い。キルガはとりあえず黙って苦笑。
「で、その時、わたしとは別に寮を抜け出している不良の奴らを見つけたんだ」
「え、何別にいたの? ・・・で、どうしたの? まさか囮にでもした?」
シェナじゃないんだからそれはない、とキルガは思ったが、「せいかーい」というマルヴィナの
気の抜けた声を聞き、思わず吹き出しかける。
(マ、マルヴィナ、シェナの影響受けている!?)
見直すべきだ、とキルガは本気で思った。
ともかくマルヴィナは、いたずらそうに笑うと、「もちろん理由はある」と前置きした。
「そいつら、どうやら今回の誘拐騒動にかかわりがあるみたいなんだ」
グラスに入った水で少し舌を湿らせ、マルヴィナは続ける。
「会話からしてそうだろう、って感じのいわゆる推測だから、あんまり詳しいことも分かっていないんだが、
誘拐された人間はあの不良グループの一員だったらしい。・・・となると、もしかしたらその誘拐犯は
そのグループの誰かを狙っているかもしれないだろ?」
まぁ、裏を突かれる場合もあるだろうけれど——そう言って、マルヴィナは食後のデザートに手を付ける。
「あぁ、それで、奴らを帰した、ってこと?」
「そう。ま、管理人には、『誰かが外に出る気配がしたので追ってみたらなんか複数の人間がいます、
あれはこの学校では普通の現象なのですか?』って何も知らない新入生のふりをしたけれどね」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」キルガ&セリアス、無言のまま固まる。
なんかマルヴィナ最近黒くなっていないか? と同時に思いつつ、視線は自然とシェナに向く。
「ん? 何?」
シェナは本気で首をかしげ、いやなんでもアリマセン、と引き下がる二人であったのだが。
そんなわけで、迎えた二日目では、主に誘拐された人物、ついでにその不良グループのことについて探ることにした。
マルヴィナ・キルガペアは、もちろんキースとナスカの双子から尋ねることにする。
「あー、あのコらねー」
ナスカはうーんとうなった。
「最初にいなくなったナシルって人さ、最初すんごい頭良かったんだよね。普通にトップとるくらい」
トップ、と聞いてマルヴィナは苦笑した。ちなみに、昨日の抜き打ちテストは、トップが七人で、いずれも満点。
その中にキルガ&シェナはごくあっさりと入っていた。どうやら二人とも、まだ訪れたことのない場所まで知っていたらしい。
マルヴィナはその訪れたことのない場所は記入していなかったし、セリアスは妙なケアレスミスで点を落としていたが、
それでもかなりの上位で、二人してホクホク顔だったのだが。
というどうでもいい話はともかく、次いで話すのはキース。
「おれナシルには結構勉強教えてもらってたりしたのよ。でもさぁ、去年の・・・いつ頃だったか忘れたけど、
まぁでっかい試験で、順位が一気に六位に下がってさ、すんげぇショック受けてた」
「わっかんないわよねー、あたしなんて自分の後ろに二ケタ人数いればそんでラッキー☆ なのに」
「おまえ、それはさすがにまずいだろ」
どうやらナスカの成績は思わしくないらしい。
「で、そっからちょくちょく休むようになってさ。モザイオと組むようになっちゃってー」
「モザイオ?」キルガだ。
「あ、それって・・・」マルヴィナ。実は、昨夜見た不良たち——それがモザイオたちだったのである。
「そ。・・・あいつよ」
ナスカが指したのは、教室の片隅で数人を従えて何やらやっている少年たち——の中心、
染められた金髪、だらしない服装、目つきも悪い、見た目は不良、中身も不良、ついでに行動も不良、
不良オンリーな少年。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」マルヴィナは眉をひそめそのグループを眺める。
「あいつらには近づかないほうがいいぜ。結構やばいやつらだからよ」
キースは聞こえないようにと、声を落とす。が、マルヴィナは。
「たかが不良だろ? わたしは平気だ」
頼もしくも、あっさりと言って見せる。
「いや、たかが・・・じゃないんだよな。・・・あいつ、武術の科目で剣術とってんだけどよ、
ガチの勝負で一番らしいぜ。だから誰も逆らえない」
「へぇ」
マルヴィナとキルガは、同時に意外そうな声を上げる。伊達じゃないのか、とキルガは思い、
そして剣術といえば・・・と隣にいる少女を見て、
・・・なんだかにやりと笑っているようにもみえなくはない彼女の表情を見て、妙に嵐の予感がしたキルガだった——
漆千音))無理矢理終わらせたが、この話まだ続きがあります。字数制限って何文字なんだ!?
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.517 )
- 日時: 2012/08/04 21:07
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
「そういえば」
もう一つ思い出したことがあったのか、キースが続けた。
「おまえの友達もあの不良グループに入ってたけ?」
ナスカは問われてすぐに頷く。どうやらもとより話すつもりだったらしい。
「次にいなくなっちゃったのが、リュナって子なんだけど——てか別に友達じゃないんだけど——
悪い子じゃなかったんだけどね、みょーになんかなー、って感じでー」
といったなんかよく分からない説明が続き、「で、」と最後に一言、
「なんかそれから最近めっちゃ不良連れてかれてるじゃん? もしかしたら、
これってユーレイの仕業なんじゃないかって今もっぱらの噂なのよぉぉ!!」
・・・と叫んでしまった。もちろん、生徒の何人かが反応して、こちらの様子をうかがう。あ、まずい、とキルガは思った。
案の定。幽霊と言われて今最も反応する者たち——すなわちモザイオら不良グループ。
彼らが、ずかずかと——正確に言えばずかずかとやってきたモザイオについてきて——四人の前にやってくる。
ナスカがひきつった笑顔でやっば、と言い、キースがこの馬鹿、と頭を抱え、
キルガはため息をつき、マルヴィナは静かに待った。
「・・・てめぇら」
いかにもチンピラ気取りの様子で、モザイオはマルヴィナとキルガに睨みをきかせる。
「新参者がずけずけ知りたがんじゃねーよ、俺様の名前もばっちり聞こえたぜぇ?」
「威張ってるよ」
マルヴィナぽつり。いっそ清々しいと言えるほどにさらりと。
シェナがいないから挑発する人はいないだろう——と安心しきっていたキルガはがくっ、と脱力した。
(やはり最近シェナ化していっていないか・・・?)
見直すべきだ、とキルガは本気で思い・・・なんか朝も同じようなことを思った気がする。
いずれにせよ(と言うか当たり前なのだが)、不良たちを怒らせたマルヴィナに、モザイオはずいと詰め寄る。
「・・・んな顔して、随分言いてぇこと言ってくれんじゃねーか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
(顔?)と胸中で首を傾げつつ、マルヴィナは黙ってモザイオを睨み付ける。
自分が割と大勢から綺麗だと思われていることは、マルヴィナは自覚していなかった。
が、この状況は明らかにまずい。旅慣れたマルヴィナが不良ごときから不意打ちを食らうことはまずないだろうが、
それでも万が一のことがある。
そう思う矢先、さっそくモザイオは拳を鳴らしてニヤと笑う。
「・・・気に入らねぇなぁ。俺様に逆らおうっての? どうなるか、実際に教えてやってもいいんだぜ?」
「よせ」
マルヴィナが何言ってんだコイツと思っている間に、キルガの制する声が入る。
これ以上事を荒げないように、とマルヴィナとモザイオの間に割って入るように。
が、キルガもまたその行動の意味を自覚していなかった。
本人からすれば仲裁に入ったということなのだが、モザイオたち不良側から見ると——
キルガがマルヴィナを庇った、と言うように見えるのである。その行動は、不良の中でも特に
彼女いない歴一年以上の男どもを腹立たせた(というかガチで嫉妬していた)。ちなみに、モザイオも例外ではない。
「へーえ? お前、そいつの代わりに殴られようっての?」
からかいの口笛と、挑発。ちなみにこの状況をキルガが理解するのはもっと後の話なのだが、
とりあえず今この状態をどうすれば円滑にまとめられるか——と考えている間に、
相手の堪忍袋の緒はぶっちり切れる。
「無視かよ。——いい度胸してんじゃねぇかっ!!」
「あっ!?」
ナスカの悲鳴にも聞こえる叫び声、モザイオのうなる拳、向かう先はキルガ。
だが、キルガは。
——————————ぱしっ。
そんな一撃を、右手ひとつであっさりと止めてしまった。全く揺らぎなく。ぱしっと。
「・・・・・・・・・は?」
瞬時にして、時間が止まる。
マルヴィナと同じく旅経験の長いキルガにしては、不良といえども素人であるモザイオの攻撃は
なんか前からソフトボールが飛んできた、程度のことにしか思えなかったのである。
だが、相手にしてみれば。華奢で頭が良さそうで(良いのだが)、
イケメンでイケメンでイケメンで(by彼女いない歴以下略の男ども)、人のよさそうな目の前の少年が
学園内でも有名な不良モザイオの攻撃をこうもあっさり止めてしまったことに唖然とするしかないのである。
マルヴィナがごめん、と片目を瞑って小さく謝り、キルガはそれを見て少しだけ笑い。
そして、未だ時を止め続けているモザイオに一言、
「あの」
ひっ、と首をすくめる取り巻きの連中。それには目もくれずキルガはさらに一言。
「・・・そろそろ、手をおろしてくれないかな?」
言葉こそ穏やかだが、言い方と表情は冷ややかなキルガに、モザイオは思わずそれに従う。
そして、素直に従ってしまった自分の行動に気付き、屈辱に表情を歪め——
「お、覚えてろっ!!」
なんだかよく聞きそうなセリフを残して、取り巻きたちとさっさか退散してしまった。
こんなくだらないことを覚えているくらいならもっと有意義なことを覚えるよ——とでも言いたげなキルガに、
マルヴィナは「ありがとう」と言うべく口を開き、
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜っ、キルガすっごぉぉぉぉい!!」
・・・ナスカに邪魔される。
「うぎゃ」
どーん、と突き飛ばされ(ナスカは自覚していなかった)、マルヴィナは言葉を飲み込んでしまい、
キースは暴走し始めそうなナスカを殴って止める。
そこから双子喧嘩を始めた二人を放っておいて、キルガはマルヴィナに目くばせした。
マルヴィナも、静かに頷く。
あとで、[奴]と関わってみよう。そう、思ったので。
漆千音))端折りすぎたかなぁ・・・(((マルヴィナ: いい加減話の終わりごとに出没するのやめんかっ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.518 )
- 日時: 2012/08/05 11:57
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
二日目が終わり、三日目。
三日目も終わる——その、少し前。
夕食の時間帯である。
四人はそれぞれ調査結果を出し合い、まとめると、以下のようになった。
・誘拐されたのはいずれも十代、非行少年少女たち
・モザイオ率いる不良グループに属していた
・幽霊の噂有(実際に見た、と言う人もいた)
・誘拐ではなく勝手に抜け出しただけではないか? という意見も
・消えた生徒たちは勝手に寮を抜け出すところを度々見られている
・明日の夕飯はグリルチキンらしい
「ちょっとまて、誰だ最後のやつ聞いたのは」マルヴィナである。
「明らか関係ないね・・・」キルガが頬杖をつき、嘆息。
「絶対明日最初に食べてやるっ」
「そっちかい!!」とは、セリアス。なんだか似たようなことが前にもあったような。
「とにかく、まとめると、次に狙われる可能性が極めて高いのはその不良グループたち・・・ってことよね?」
シェナはグリルチキン云々をだれが書いたのか想像がつきつつも無視して、
人差し指を 頤_おとがい・・・あごのこと_ にあてて視線を上げた。
「あぁ、でもなんとなく、次に狙われるのはモザイオなんじゃないか・・・って噂が流れている。
本人は気にしていない風を装っているが、多分内心ではビクついているだろう」
キルガも頬杖を解かず、唇に左手の親指を当て、考え込む。こうやって見るとなんだかこの秀才二人がお似合いに見
「ってことは!」
と、いきなりセリアス。驚いてシェナが考え込むのをやめ、
キルガも左手をおろす。マルヴィナは目をぱちくりとさせる。
「・・・・・・・えっと、モザイオってやつに、注意を払えばいいんだな?」
「え? えぇ、まぁ・・・どうしたの?」
「えっ、何が?」
「・・・いきなり大きな声出して」先ほどの状況を知らないほど集中していたシェナは恐ろしいほど無自覚に尋ねた。
「え、あ、いや、別に・・・あれ?」セリアスは首を傾げ、「何でだっけ?」と自問自答。
「ひらめいたからだろ」マルヴィナ。「そういう時って、叫びたくなるでしょ」
「あぁ、そゆこと」シェナ納得。
和やかな雰囲気に戻った四人、マルヴィナの後ろで、
「ドンだけニブいのよこの集団」
サンディがひとり呆れていた。
「そーだ、そういやもう一つ、すげぇ朗報だぜ」
調子を取り戻したセリアス、手始めにおめでたい情報を示す。
「じゃじゃん。実は女神の果実のことだが——ラスト一個、どうやらここにあったってことで間違いねぇぜ」
マルヴィナはパンに伸ばしかけた手を、キルガはグラスを持った手を、シェナは紙を耳にかけようとした手を——
それぞれ、瞬時に止めて。そして。
「ふえぇぇぇえっ!?」
相も変らぬマルヴィナの珍妙な叫びを聞く。
「マルヴィナ、今更突っ込んでもしょうがないかもだけど何? その珍妙な叫び」
「イヤすんません、驚くとたまに・・・ってのはどうでもいい、ここにあったんだな!? 果実が」
「あ、あぁ」ノリツッコミをしたマルヴィナに目をしばたたかせつつ、セリアスは頷く。
「学校の創立者——初代エルシオンの墓に頭がよくなりますよーにって捧げた奴がいるらしい。
・・・いやちなみにもうないが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」三人、沈黙。やはり最後まで事前には果実には手が届かなかった。
ずぅぅぅん、と落胆した三人を見て、セリアスは慌てて繕う。
「やっぱ初代が食っちまったかね? ほら、ユーレイってさ、もしかしたらそいつかもよ!
・・・あ、となると今回の犯人になっちまうか」
苦し紛れに適当なことを言って見せて——あれ? と一時停止するセリアス。
笑わせようとした三人も別の意味で固まる——
「アレ? 俺なんかマズいことでも」
「セリアスっ」
キルガが思わず立ち上がって顔を上げ、セリアスを呼ぶ。
「はっはいっっ」
「それ・・・正解かも、しれない」
今度はセリアスが叫んだ。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.519 )
- 日時: 2012/08/06 21:56
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
エルシオン学院の授業のうち六日に一回は、学院の方針『文武両道』の『武』の時間——
すなわち、一日『武術』を習う時間とされている。
『特別授業』と称され、自らの学びたい科目をとり、それに勤しむのだ。
その日はいつもより授業が早く終わるので、あまり勤勉でない学生たちからするとホクホクな日でもあるらしい。
キースが言っていたように、モザイオは剣術をとっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
もちろん剣をとったマルヴィナはその日、[二番目]にモザイオに目を付けた。
ちなみに、仲間たちはそれぞれの愛用する武器を習える場所へ行っている。槍や弓はともかく、
斧などと物騒すぎるものを習えるというのには若干驚いたのだが。
マルヴィナは新入生と言うのもあり、皆の前で紹介される。名乗り、軽く頭を下げる。さりげなく笑顔で。
とりあえず好感を持たせたほうが動きやすい。
もちろん計算したわけではないが(そこまで人付き合いを避けたがるわけではない)、その効果はしっかりと発揮し、
よろしくー、という歓迎の声がぽつぽつとあがった。
実力のそこそこあるものはマルヴィナの力量を少なからず読み取り、不敵に、あるいは期待して笑って見せる者もいた。
(・・・ま。まずは、周りからかな・・・)
真っ先に攻めたりはせず、モザイオを知っていそうな周りの情報収集から始めることにした。
基礎運動の際ペアを組んだのは、17歳くらいの少女だ。彼女はミチェルダ、と名乗った。
「マルヴィナ、結構剣の腕凄いっしょ? なんか立ち居振る舞いから素人っぽくないよ」
気さくに話しかけてくるミチェルダに、自慢にも謙遜にもならぬよう、
「やってみないと分かんないかな」と答えた。この答え方はキルガに教えてもらったのである。
「にしても、よかったよ。あたし実はこの中では二番目に新しく入ってさ。・・・や、もう三番目か。
んで、二番目に入ってきたなんかこわそーな子と組んでたから、気まずくってさ」
「恐そうな子」復唱する。「・・・誰?」
「ほら、あそこ。一人でやってる」
ミチェルダの視線の先には、ひとり人の輪からは少し離れた場所で長座体前屈の形をとっている、
マルヴィナより少し暗めの闇色の髪を高い位置で結えてあとは無造作に垂らした、
端正だが冷たさを感じさせる同じ年くらいの娘がいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マルヴィナは目を細めた。そして——口の中で、ほぼ声に出さず、やはり、と呟いた。
モザイオには[二番目に]目を付けた。
では、[一番目]には? ・・・それが、彼女だったのである。
マルヴィナが感じ取った気配、それは—————・・・
「ルィシア、って言ってたけ」
ミチェルダが続ける。「なんてかさ、あたしはあの人すっごい強いんじゃないかって思うんだよね」
「あぁ」マルヴィナは側近をよく伸ばしながら答える。「・・・わたしも、そう思う」
「今この中でいっちばん強いのはさ、あの不良・・・モザイクとかいうやつなんだけど」
「・・・・・・・・・モザイ[オ]?」
「あれ、[オ]だっけ? まぁどっちでもいいよ!」
いいのかよ、とは胸中だけでツッコんでおいた。
「しょーじき、あいつより強いんじゃないかってかんじなんだよねー。でもなんとなく、マルヴィナのほうが強そう」
ミチェルダは相手の力量を見計らえる人物でもあるらしい。
他人事のように言う彼女自身も、なかなか見どころがありそうだ、とマルヴィナは思った。
至る所の筋肉をほぐしながら、マルヴィナは今後の予定を頭の中で組み立てていた。
モザイオの憎々しげな視線を感じる。ここは、予定通りだった。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.520 )
- 日時: 2012/08/07 21:59
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
「まさかとは思うけどさぁ、まさかマルヴィナの奴モザイオにケンカ売りつけたりしないだろうな?」
“まさか”を二回言って、セリアス。最近シェナ化している気もしなくはない彼女のことである、
まずない、とはキルガも断言できなかった。
槍と斧は外で行われるため、この二人は割とあっさり会えるのだが、体育館兼講堂にいるマルヴィナはもちろん、
格技場にいるシェナもなかなか交流が取れない状態である。
「しかしマルヴィナが誰かと関わろうとする日が来るとは・・・」
「しかも男だしな」
む、とキルガの表情が心なしか強張る。セリアスも割と狙って言ったので、その反応に少々吹き出す。
「・・・マルヴィナはそう簡単になびかない」
「お前がそれを言ってどうするよ」
キルガも言った後に、確かに、と思い直す。そして落胆する。お前はピュアか、とセリアスが胸中でツッコむ。
なんだか妙な空気が流れた頃、二人の耳に聞き慣れた声が飛び込んでくる。
「おつかれ、お二人さん。・・・何? この微妙な空気」
それは弓の道着に身を包んだシェナである。なかなか会えないと言った後にこれである。
落胆したまま顔を上げないキルガに変わり(とはいえ落胆していなくてもだろうが)セリアスは引いてから
「なんで来れた!?」
と問う。それに対しシェナは居丈高に言う。
「え? 当たり前じゃない。すっぽかしよ」
真面目に言うな断言するな悪気ない表情をするなとはセリアスは言わなかった。
とりあえず落胆キルガとなった状況を簡単に説明。するとシェナは先ほどと同じように、あっさりと言葉を紡ぎだす。
「じゃあ見に行けばいいじゃない」
「はぁ?」
「心配なら見に行って、なんか雰囲気良さそうでもまずそうでも阻止してあげればいいんじゃないの?」
それはどっちにしろ阻止しろと言うことではないのか? とキルガは思ったが、それは口に出さず、
「それはマルヴィナに悪い」と落胆した時の声のまま言う。
若干呆れ気味に半眼で苦笑するセリアスは、あぁどうでもいいからコイツに闘志を与えてやってくれと
シェナに目線だけで言う。それが彼女に伝わっていたかは別として、ともかくシェナは少し考えてから
少しだけにやりと笑ってキルガの耳元に口を寄せる。
「マルヴィナは[剣術強い人]に一番ときめくのかもよ? 今この状況で剣術強い男っていえば——」
最後まで言わせず、キルガの頭がいきなり上がる。半死人みたいだった目が別物のように開いている。
何事かと驚くセリアスにしっかり向き直ると、
「行こう、今すぐに!!」
きっぱり言い切って返事も待たず体育館に向かうのであった。
(訂正。お前は単純か!!)
セリアスはもう一度胸中でツッコみつつ、一言二言で心情をあっさり変えた仲間に苦笑したのだった。
ところでサンディはというと、
「やっばマジぱねぇぇ何あのスタイル! いーなチョーかわいーアタシも真似しよっかなー」
いろんな生徒を見物しては、自分のギャルスタイルについてよくよく考えていたのだが、まぁ今は関係のない話。
補足))『一言二言で心情をあっさり変えた仲間』この言い回しではキルガを指しているのか
シェナを指しているのか微妙なところでしょうが、
(キルガの心情が変化した、と言う意味なのかシェナが心情を変えさせた、と言う意味なのか)
セリアスがどちらに呆れたのかは読者様のご想像にお任せします。