二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.528 )
日時: 2012/08/13 17:44
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)

               3.




 深夜——

 マルヴィナは寝台の横の電灯を少しだけつけ、か細い光を頼りに着替えてそっと部屋を出た。
堂々と入口から出るとバレるということは勉強済みだったので、
今度は屋上へ行き、周りを確認し、そこから地面へ飛び降りることにした。
人間界へ落ちてからまだそんなに年月がたっていないのに、自分が天使であることを忘れかけていたマルヴィナだが、
本当にこういう時自分の生まれを嬉しく思う——まぁ、本当に天使なのかどうかは、分からないことではあるが。


 ともかく、屋上に出て、扉を閉める。雪がちらついていた。寒い。
さく、さくと新雪の踏まれる音が響く。
マルヴィナはしっかりと校舎を見つめ、屋上の手すりに手をかけ——

「飛び降りる気か、マルヴィナ?」

「———————————ぃっ!!?」

 だしぬけに声をかけられる。
マルヴィナは慌てふためき手をわたわたと振り髪の毛が自分の顔を叩くほど凄い勢いで振り返り——
そしてそこに飄々とした様子で立っているその人を見てため息をついた。

「キルガ・・・」

「ごめん、驚かせて」
 いつもの通り、いまいち反省っ気のない声でさらりと言われて、マルヴィナは苦笑を返すしかなかった。
「・・・また寝られなかったのか?」
「それもあるが・・・抜け駆けはなしだ、何があるかわからないんだから」
 つまり、心配して来てくれたのである。聞けば、セリアスとシェナはすでに校内にいるらしい。
そんな仲間たちに、マルヴィナはほっと安堵のため息をついた。



「おー。待ちくたびれたぞー」
 校舎屋上。
普段にぎやかな場所が静まり返るのは割と恐ろしく、やや足早にマルヴィナは階段を上った。キルガも後からついてくる。
そしてセリアスの呑気な声を聞き、シェナのいつものくすくす笑いを見て、そして、
「ホント、つくづくお人好しよネ」
 後ろからサンディの声。もう寝ているかと思っていたマルヴィナは驚き、振り返り、その際頭をゴインとぶつけた。
「痛った・・・」
「サンディ、いつの間に・・・?」
「イヤてか、今までどこにいたんだ・・・?」
「サンディちゃんなんかお久ー」
 四者それぞれ反応。・・・マルヴィナは自分自身に反応したのだが。
「てかこんな時間に外出るとか? マジひじょーしきって感じなんですケド。夜更かしっておハダに悪いのよネ」
「・・・と言われても」
 マルヴィナはいつものようにフードに入るかと問おうとして、
今は制服を着用しているので(ジャージには着替えなかった)それはできないことを思い出し、返答を曖昧にした。
「あのふりょー、もうすぐ来るっぽいヨ。てか呼ばれたのマルヴィナだけなのにみんな来るってどんだけ!」
 超ウケる、と最後に言って、マルヴィナの肩に乗る。どこから手に入れたその情報、とツッコむ前に、
サンディはそうそう、と付け足した。
「あのルィシアって超ジミなオンナさ、気を付けたほーがいいよ。剣とか凄い強いっぽいし」
「ルィシア・・・あの、殺気立ってた奴か?」
 セリアスだ。「すっげぇマルヴィナ睨んでた奴」
「せーかい。そいつ。ポニテの。ぜったいキケンだって——あ、来たんじゃネ?」
 言うなり、再びマルヴィナの肩に乗るサンディ。・・・が、マルヴィナの伸びた髪が当たるのでこそばゆく、
一回くしゃみをしてから避難した。
「おぅ、ちゃんと来てたなー」
 初めて言葉を交わした時よりも友好的に、モザイオは言った。ちゃんと人を認められるところ、
実際そんなに悪いやつではないのかもしれない。
「・・・なんかほかにもいるっぽいな」
「あぁ。・・・友達だ」
「ふぅん。ま、いいや。誰かよくわかんねーけど、行くぞ」
 モザイオ側も二人、ついてきている。痩せぎすで歯の少し出ているものと、ガタイは良いがどことなく
気弱そうな顔立ちの、いずれも男である。

 日が間もなく変わる。マルヴィナは、静かな緊張感を覚えた。