二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.622 )
- 日時: 2012/09/25 22:38
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)
4. (しまった、明らかに配分間違えた。3.短っ)
「・・・説明を要求いたします」
「えーと・・・どこから?」
二時_この世界で言う、二時間_、経った。
ついにぶっ倒れて今は宿屋で安静にしているマルヴィナについてやっているキルガは、
頭を抱えるセリアスを後ろに超不機嫌顔のシェナを見て、苦笑していた。
「どっからでも来なさい」
「いや、そう言われても・・・セリアス?」
困りながら、キルガは珍しく、少々非難がましく後ろのセリアスを見た。
「いや悪い・・・話すつもりはなかったんだが・・・」
要するに——セリアスは、先ほど闘っていたことを、シェナに話したのである。
いくら寝ていたとはいえ、何故自分を呼ばなかったのか、まして故郷を守る戦いは自分が参加する義務がある、
熱なんてとっくに治まっているんだ寝ているのはケルシュがどーしてもって言って譲らないから仕方なしに云々、
機関銃のような勢いで参戦できなかった不満をまくしたてられ、セリアスがげんなり。
しかも、もう一つ——宿屋に寝ているもう一人、すなわち、ルィシア。
彼女の存在を見て、更に説明を要求され、説明下手なセリアスは遂に挫折しキルガに泣きついた——とまぁ、
大まかに現在の流れを説明すれば、このようなことである。
「話すつもりがないって言ったって、結果的にこうなっているじゃないか」
「イヤだって、ラスタバさん——いや、シェナ家か、に行ったら、起きてたからさ」
「・・・その恰好で行ったから、ばれたってわけか」
セリアスは戦禍を被ってぼろぼろであった。
「・・・面目ない」
「ちょっと」シェナだ。「隠すつもりだったわけ?」
「・・・こんな感じになるだろうから説明は里の人に任せよう、ってことになっていただけだ」
こんな感じ、つまり——説明を求められて、最終的にシェナチョップを喰らう確立を減らすための
男二人の(正確にはシェナチョップを最も恐れるセリアスがキルガに頼み込んで立ててもらった)案であった。
「・・・そーゆーこと」シェナは第一段階は納得したように頷くと——
いきなり身を翻してセリアスの頭に容赦ないチョップを叩きいれる。
奇妙な絶叫。マルヴィナが起きる、とこれまた珍しくキルガの非難の眼。
「い、いや、悪い」
「シェナもだ」
「え?」
脱力。
「『え?』じゃない」
「・・・・・・・・? ・・・とりあえずゴメンナサイ」
反省っ気のない、いやそもそもなぜ非難されているか理解していない様子で謝るシェナ。
「・・・まぁとりあえず——だったら襲撃の話は誰かから訊くわ。
・・・下で寝ている敵を介抱している理由、訊かせてもらえる?」
彼らにとって、ルィシアは憎むべき敵だ。マルヴィナを狙い、ハイリーを殺めた、冷徹な少女。
敵を助けるという概念の理解できないシェナは、やはり不機嫌な顔になった。
「・・・どこから話そうか・・・どこまで訊いた?」
「んー・・・戦って、勝って、そしたら襲われて、助けろって言われて助けた。
・・・っていう感じの話なら聞いたけど」
大まかすぎる説明に再び脱力。面目ない、と再びセリアスが言い、首を引っこめた。
「えっと、まず最初に言っておくが——今、この里にはマルヴィナの『記憶の先祖』がいる」
シェナが目を開いた。あ、それ言ってない、とセリアスが思ったのは余談。
「それ、まさか・・・“蒼穹嚆矢”!?」
「あぁ。しかも、何故か実体で。
その理由は知らないから説明は省くが、ともかくその人も一緒に戦っていたんだ」
いきなり出てきたその名に驚愕を隠さないまま、シェナは部屋の扉の横に座る。セリアスは立たせたままだが。
「それで、戦いの途中でルィシアが割り込んできて、マルヴィナと一対一で闘ったんだ。
この前から練習していた剣技でマルヴィナが勝利したんだが、その影響で疲労して、こうやって寝ている。
・・・なんとか全ての敵を倒したところで、襲撃の首謀者——先日闇竜の上に載って箱舟を襲ってきた帝国の
ゲルニックって将軍が現れて、恐らく処刑としてルィシアに一種の攻撃魔法を唱えたんだが、
“蒼穹嚆矢”がそれを庇って——けれど少しはその被害を受けたらしく、現在気絶。
助けると言い出したのは“蒼穹嚆矢”だ。ゲルニックが言っていたんだが、彼女はどうやら天使だったらしい。
恐らく僕らよりずっと上位だ。となると、掟に従い、僕らは彼女には逆らえないということになる——
——以上が理由だ」
感服してセリアスが「おー」と思わず拍手。
さすがはキルガ、と呆れ半分、納得半分で頷くシェナ。セリアスとは大違いだ——とは、思うだけにしておいたが。
「・・・そーゆーこと。・・・天使って義理堅いのね。・・・あ、皮肉じゃなくて」
素直すぎた感想に慌てて補足をいれ、シェナは言った。
「・・・その掟が、こんなことを起こしてしまったんだけれどね」
キルガが、マルヴィナを見る。
箱舟の、二両目で起きた、あの出来事。
剣を向ける師匠に逆らえず、その剣を受け、悔咎に叫んだマルヴィナを思い出す。
・・・あの日から、彼女は変わった。前より、笑わなくなった。ふと気づけば、哀しそうな顔をしていた。
——信じていた者に、裏切られたから。
キルガの言った意味が分かって、セリアスもシェナも、言葉に窮した。・・・特に、シェナは。
「・・・僕らは、裏切らない。・・・絶対に」
「あぁ。もちろんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・えぇ」
即答したセリアスに対し——シェナは、すぐに頷けなかった。
頷けない秘密を、それこそ今言ってはいけない真実を、まだ隠していたから。