二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.644 )
日時: 2012/10/02 23:46
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 僧侶団に入職してから、半年が過ぎた。



 僧侶団本部東棟五階特別研究室前第二控室という長ったらしい名前の一室にて——
「・・・ふ、ぁぁぁぁ・・・」
 マイレナ、乙女のたしなみもなくがばぁと口を開ける。
「まったく君は。もう少し緊張感というものがないのかね? ついでに言うと淑女の姿というものは」
「あいにくながら」
「・・・ちなみに何回目か自覚しているか?」
「6854回よりは少ないかと」
 例によって大あくびをかますマイレナに、司祭は—そう、あの日マイレナが唸らせた[あの]である—
言葉で咎めながらも笑っていた。

 司祭の名はファンデ・ホウス、正式な名はもっと長いらしいが
試験に出るわけでもないしそもそも興味がないので覚えない。
「まぁ、君は優秀だし、多少は大目に見られるだろうがね——芝居でも態度を改めるふりをする気は」
「ありません」
「言い切ってくれるなよ」
 やれやれと肩をすくめる。が、先に少々述べたように咎めているようには見えない。
「僧侶団とて完璧な人材ばかりは集められん、中には反抗的なものもいたが——いやはや、
成績優秀なものは皆品行方正だったからな——あぁいや君がそうでないと言っているわけではないのだがな、」
「給料は実績で決まったでしょう」再び何回目かと聞かれるのも面倒くさいので今度はあくびは噛み殺した。
「態度によって加算されるという話も聞いていません。よって別に飾るつもりはありません」
「・・・完全に否定できない理由を立てたな。尤もといえば尤もではあるが——」
「聖者マーティル様の恩恵を。——お早いですね、司祭ファンデ様、同士マイレナ」
 途中で、別の声が遮った。そしてその声が慌ててもう一言。
「お話し中でしたか? 非礼をどうかお許しください」
 その声の主は、マイレナと同じく僧侶団本部東棟五階特別研究室前第二控室に呼ばれ、
まさしく淑女の振舞いをし、必要以上に丁寧で必要以上に勉強熱心で、なおかつ僧侶団入団試験トップ、
そしてその位置は未だしっかりと守り続けている——

「いや、気にせずとも良い、修行僧ティナ」

 ——少女ティナ・オーリウスレイである。
「勿体なきお言葉です」
 マイレナはその言葉にうんざりと顔をそらした。
どうもこの少女は苦手だ。いちいち言動がへつらっているようにしか思えない。
「あのぅ・・・わたくしは、遅かったのでしょうか?」
 自分より先に二人が来ていたことに戸惑って、ティナは訊ねた。
ファンデの言うような『品行方正な』彼女にとっては上司を待たせてしまったように思えるのだろう。
「いいや、早いくらいだ。わたしは[たまたま]早く来てしまっただけなのだ」
 嘘を吐け、ウチに説教たれるのが目的だったんだろうが——とは言わない。
あくまで『品行方正な』ではなく、『面倒くさいから』ではあるが。
「それでも、お待たせいたしました——お詫び申し上げます」
「あぁティナ、君は少々力を抜きたまえ。そうもへりくだられると相手はかえって居心地を悪くする」
 了解したように応えるティナ。やっぱり好きになれそうにない。






 だが、好きになれそうにどころか、根本的に嫌いになりそうな事実を、マイレナは目の当たりにしてしまった。
司祭ファンデが失礼、と言って一時的に部屋をたった時——
ティアは空気漏れしたようにいきなり力を抜いたのである。
「ふー。肩イタイ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」マイレナは腕を組んで横目で見た。
「・・・あら? 驚かないのね」
「何の話」
「態度。普段こんな『いい子』なのが、こんな様子になるなんて」
 思いっきり、良く言えばのびのびと、悪く言えばだらけたティナの面白がるような声に、
だがマイレナはほぼ反応しない。
「別に——驚くことでもない」
「流石ね」ティナはニッとした。「あたしのこんな態度を見せるのはあなたが初めてよ」
「それ誇れること? 私に得があるようには思えないけど」
「・・・ふふっ。あなたは誰に対しても態度を変えないのね」
「それほど器用じゃないからね」で、何が言いたいんだこいつは。
「・・・ねぇ、何であたしたちがここに呼ばれたか、分かる?」
 おしゃべりな少女はそのにやついたような表情のまま問う。
「さぁね」
「・・・分かってるくせに」
 面倒くさいやつ。
「・・・どうせ——」黙っている方が面倒になりそうだと思い、仕方なしに答えてやろうと口を開いた瞬間、
ティナの姿勢がいきなり正しくなった。「あぁ、ありがとうございます。もう結構ですわ」
いきなり口調を元に戻した——その理由はすぐに分かる。

「失礼、・・・司教様はまだお見えでないですかな?」
 その扉が開き、別の司祭が入ってきたのである。この人も呼ばれたのか、と横目で見る。
一方ティナは完璧な所作でお辞儀し、まだですわ、と先ほどの[素晴らしい]態度で応えた。
 その司祭と話すべくティナは進み出た。
 呆れ果てて無言を通すマイレナを、少し離れたそこから、ティナは含み笑いをして見た—— 一瞬だけ。
















      漆千音))何の考えもなしにぱーーーーっ、と書いてみた。
           今回の話が何を意味するか——後付けで考えよう←
           眠いよぅそろそろ寝るか。ぐぅぐぅ。