二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.647 )
日時: 2012/10/06 00:41
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 ファンデが戻ってきて、他に司祭たちも集まり——
僧侶団本部東棟五階特別研究室前第二控室にはマイレナを含めて七人が集まった。
マイレナは知らない顔ばかりであったが、高司祭たちは反対に知っているらしく、
ほう、この娘が、[あの]——といったような納得顔をし、それを見たティナが
高司祭たちには分からないような程少しだけ不機嫌そうに眉をひそめた。
多分成績トップの自分よりマイレナのほうが注目されるのが気に入らないのだろう。
さっきの様子から恐らく、この娘はそういう性格だ。
けれど、こちらだって何も注目を集めたくてこうなっているわけでもない。
そっちに注目を寄せてくれるのならこちらとて大いに願っていることだ。
 ——が、何も高司祭たちもずっと無遠慮にじろじろ見ているわけでもない、しばらくすれば
会話をしたり精神統一したりと、それぞれの思うままにして待った。
マイレナは始終あくびをしていた。






 呼ばれた理由は想像通りだった。というか——部屋の名の通りだった。
 [特別研究]。
 そう、その研究員として任命された者——それが今ここに集う者たちである。
問題のその研究——それはもう先に述べてある。

 “傷の治療だけでなく人の寿命まで研究を続ける魔法組織”

 そう、つまり人間の生命を研究する、そんなことをもこの僧侶団はやっていた。
それはヒトの進化につながる、進化につながれば人間は更に良くなる、そして——
 その先をやたら態度のでかい研究員は言わなかったが、恐らくその先は
いつか魔術団アーヴェイより支持を集められるだろうとかそんな程度の話だろう。
そう思った司祭たちやティナはしっかり、はっきり頷いたが、マイレナはそもそもその研究内容から呆れていた。

 ——人間の進化が良いものだって?

 マイレナは嘆息した。研究の詳細を聞かされてさらに呆れた。
やれ人が空を飛ぶだの、読心術だの。不老不死だの。それを自慢顔で話す研究員はもちろん、
それを熱心に聞くこいつらもこいつらだ、とマイレナは思っていた。そんなことが本当にできるようになれば、
必ず最終的には混乱を招く。人間が良くなったと思うのは最初だけだ。
慣れぬ力を持ったとき、その使い道を誤れば混乱し、焦り、待っているのは負の連鎖。
少なくともこいつは、分かっているはずだ。ティナ・オーリウスレイ。
・・・では、分かっていながら、何故協力する?
——分からない。





「外に出るなんて初めてよ」
 研究内容を聞かされつくし、再び二人だけになった時、ティナは含み笑いをしてそう言った。
 ・・・よくもまぁ、ここまで態度を分けられるものだ。
見習いたくもない様子を目の当たりにして、マイレナは今日何度目かのため息を吐いた。
「乗り気じゃないみたいね。まぁ、いつものことだけど——」
 ティナは鼻で笑って、髪をかきあげた。
「・・・それとも、外国へ行くのが怖いの?」
 ——二人が課せられたのは、外国、即ち世界を巡り、生命学を学べと言うようなこと——そう、旅だ。
巡礼の旅じゃない。おかしな僧侶だ——とは思ったが、それを口に出さないだけの常識はあった。
だが、一つだけ気になった。——妹のルィシアのことである。
 世界を旅するのが怖いわけではない。彼女を置いて行くことに抵抗があるのだ。
確かに妹は既に一人で生活できるような力はある。だが、だからといって心配しない理由にはならない。
黙ったままのマイレナを前に、ティナは「・・・つまんないの」と見せつけるように頬を膨らませた。
「・・・何がしたいわけ?」
 不意に、マイレナが言った。ティナは少し驚いたように、マイレナを見返す。
「・・・何のこと?」
「頭のいいあんたが気付いてないなんてことはないはずだけど? なんでこんな研究に手を貸す気満々なのか
——それが分からない」
「あなたにもわからないことがあるのね」ティナは少しだけ嬉しそうに言った。
「別に、飛行能力だの、読心術だのには興味がないわ。あるのは、別——」
「・・・“不老不死”か」
 正解、とティナは言った。「人間の長年の研究よ? 楽しそうじゃない」
 ——ますます分からなかった。が、予想はついた。
多分、この娘は——・・・。

「教科書通りのことしか頭にない天才か」

 マイレナのその言葉に、ティナはその顔をはっきりと不愉快さに歪めた。ここまで表情が変化したのは
初めて見た——もっとも、普段から笑ってばかりで、不機嫌顔すら今日初めて見たのだが。
「・・・どういう意味」
「そのまんまだよ。あんたは、教科書しか頭に入っていない、少し足りない考え方の持ち主ってこと」
「・・・言ってくれるじゃない」ティナは無理矢理笑った。「そうね、あなたは勉強しない天才ですもんね」
「私は関係ない。・・・飛行、読心・・・それが仮に成功したとして、その先に待つものは?」
「・・・言っていたじゃない。進化だって」
「——本当に分かっていなかったのか・・・」マイレナは嘆息した。流石のティナも怒り、
少しだけマイレナに詰め寄る。「・・・何が言いたいのよ」
「——生じるのは、混乱、破壊」淡々と、言葉を続けた。
「極めつけに、不老不死——この三つを重視する、その意味がまだ分からないか?」
 黙ったままのティナに、マイレナは——教科書を読まない天才は、[あの時]のように、説明をした。


「・・・敵を読心し、飛行能力で攻める。決して死なない身で——
そしてその敵が、長年いがみ合ってきたという、『魔術団アーヴェイ』」


 ようやく気付いたように、ティナは目を見張った。
だからマイレナは、口を閉ざし、心中だけで残りの言葉を紡いだ——






 ——戦争を起こす気なのさ。二つの、魔法組織の。
















        漆千音))サイドストーリーの難しいところはネタが思いつかないところ←
             だから簡単に投稿できないのが悩みどころなのよね
             ようやくこの話の落ち(?)・・・終わりを考え出しました