二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ __永遠の記憶を、空に捧ぐ。 ( No.696 )
- 日時: 2012/12/08 23:03
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)
セリアスは言うまでもなく首を傾げていた。 コトワリ
キルガでさえ追いつくのに時間を有した。結局、異世界の理を理解することなど、愚挙であるのかもしれない。
この反応は想像済みだった二人の女はそれに大した反応は見せない。
言いたいことはこれではない。そう、本当に伝えるべきことは。
『即ち、マルヴィナを含め貴方たち三人は“特別な天使”だった——
これが異常な時期に天使界に送られた原因にもなった』
キルガの眼が少しだけ驚愕に開いた。だが、まだ。話は、続いている。
『加えて、それが原因で——天使界から落ちたとき、翼と光輪を失って、その身を守った』
セリアスが息を呑んだ。そしてすぐさま——首を傾げた。
「…ん? なんでそれが、身を守ったことになるんだ?」
『逆に。もしアンタらが、天使の姿で落ちてきたら、アンタらはすぐさま——』
『『“天使狩り”の手に落ちた』』
「っ!?」「はっ…!?」
二人とも、同時にその言葉をなぞった。アイリスは頷いたのみだったが、マラミアは説明を加えた。
『そ。ガナン帝国がさらに力を欲して行っているのさ。…ほら、帝国の兵士、霊だから。天使が見えるだろ』
「知ってる。…けど…」
それなら。もしかしたら——セリアスの中に生じた考えを、今すぐ確かめたかった。
けれど今は叶わぬこと。消息の知れない自分の師匠を捜すのは、今はまだできぬことだ。
今は話を聞かなければならない。訳の分からないことだらけでも、何か一つくらい、分かることがあるはずだ。
…けれどそれは。
信じたくはない、真実だった。
『——次いでマルヴィナのこと』
先にアイリスは、もう一人の天使の話を出した。
キルガの頬が緊張する。アイリスは傍目には気づかないほど少しだけ微笑む。
“記憶の子孫”とは何か? ——それは、“霊”の記憶を受け継いだものを表す。
先に述べたとおり、記憶を受け継がせることができるのは“不人間”のみである。だが、天使であるがゆえに、
否、
・・・・・・・・・・・・・・・・
天使以上の力を持つ者だったために。
チェルスは、“霊”でありながら、“不人間”と同じことをして見せた。そこで創り上げられたのが、
言わずとも——マルヴィナ。
だが、理を捻じ曲げたことによる代償があった。所詮は真似、完全に同じにすることはできなかった。
その代償。重すぎる、それは——
存在は、“霊”と同じであること。
即ち——命が尽きれば、その存在は、消えると言うこと。
「!!」「なッ…!」
キルガは先にその話を聞いていた。セリアスは今初めて聞いた。
けれど、受けた衝撃は、同じだった。
次いで、追い打ちをかけるように——非情だと思いながら、明かす——
“霊”が一度に死した場合、どうなるか。 (>>676参照。説明から逃げた←)
…どうなる、のか——
「それって——じゃあ、まさかッ…」
彼らは気づいているだろうか。
問う自分の声が、これ以上ないほど、震えていることに——
「もし、同時に大量の“霊”がマルヴィナの近くで消えたら——」
駄目だ、訊くな! 訊いてはいけない、答えられたら——…制御する力は、足りなかった。
「マルヴィナは、消える——…!?」
——嘘だ。
そんなことが、あるはずが—————!
『——————————そうよ』
…非情すぎた。
どうしてそんなことを言うのだ。
何故そんなことを聞かせるのだ。
「…嘘、だろっ…!?」
思わず呟いた言葉の答えも、変わらない。
「なんでだよ、何でいきなりそうなるんだよ! 今まで、そんな予兆、なかったじゃないか!」
『あぁ』マラミアは最初よりずっと言い辛そうに、答えた。『アンタらから見ればな』
「な」
『あったのさ。アイツには——いや、アイツらには、というべきか』
後半の言葉に反応するより早く、マラミアは言った。
『訊けば一発だが——アイツは、“霊”が昇天した時、このあたり—そう言ってマラミアは、
自分の心臓を押さえた—が、…なんて言えばいいかね、脈打った、っていうのか…
そんな現象? が起きてたらしい。…それが“扉”の開閉に反応した証。“未世界”に戻りかけた証さ』(>>207参照)
いきなり言われて、はいそうですかと納得できる話ではなかった。マルヴィナが消える。信じたくない。
——信じられるものか!
『否定は逆なるもの』アイリスは淡々と言った。『そうであると思うからこそ、否定せずにはいられない』
「嘘だ。何で、何でそうなる!? どうして彼女だけ、そんな存在になってしまったんだっ…」
アイリスは答えない。答えは、既に説明したとおり。それが、真実だ。
理解したからこそ、理解したくなくなる。同じだ。人間と、同じ。
「アイリス!」
『——残念だけれど』まるで何かにすがるような、祈るような声に答えず、アイリスは言った。『時間よ』
『時間だ』
「おい、ちょっ…」焦ったままセリアスは無意識に引き留めようとした。無駄だと、分かっていながら。
『…考えるんだな。ガナン帝国と戦えるのか』
『儚き存在と共にあることができるのか。——彼女の騎士として』
同じ時に言い、同じ時に消える。
同じ時に——騎士たちは、拳を握りしめた。
そうすることしか、できなかった。