二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.77 )
- 日時: 2010/12/08 16:52
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: yMcOisx5)
「あったよ」
「早ッ!」
戻ってきたマルヴィナに、サンディは飛んだまま引いた。対象的に駆け寄ったのはリベルトだ。
「そう! それです! 宿王のトロフィー! ああ、懐かしいなあ・・・」
リベルトはゆっくりと笑うと、口調をしんみりさせ、語りだす。
「この村に来た時に、封印したんですよ。セントシュタインでの夢を、断ち切るために」
「・・・なんで、また」
「・・・リッカのため、ですかね——私の妻は病弱でしてね。その病気は、あの子にもあったんです」
マルヴィナは目を見開いた。リッカが、病気。
「ああいや、今は元気になっています。そう、この村の名水を飲んで育ったおかげで。
ここの水は病気を遠ざけ、治す効果を持っていますからね」
リベルトは、マルヴィナの手にあるトロフィーに目を戻した。
「そんなトロフィーを見たら、あの子は何ていうか・・・知らないほうがいい。
あの子が自分の為に私が夢を捨てたなんて思ってしまったら、お終いですから」
マルヴィナは黙った。・・・そして、くるり、と家に向かった。
「・・・え・・・な、なにを!?」
「リッカに話すために決まっているだろう?」
「ま、待ってください! それを見たら、あの子は!」
「“自分の為に父は夢を捨てた”・・・確かに思うかもしれないな。そういう性格だ。
だけど、あなたが望んでいるのは、真実を知っても強く生きていける娘じゃないのか?
そして、自分の代わりにたくさんの人たちと宿屋を続けていてくれる事じゃないのか?」
リベルトは反論しない。すべて、図星。
「あなたの本当の未練は、それだ」
「・・・・・・・・」
「だったら・・・腹くらい、割りなさいっ!」
「・・・くくりなさい、じゃね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そうとも言う」
「そうとしか言わないっしょ」
咳払いして、マルヴィナは扉を開けた。
リベルトは、もう止めない。
「・・・・・・・・・そう、だったの・・・」
リッカは、きゅっと拳を握り締めた。
その手に、マルヴィナはトロフィーを置く。
リッカはしばらく黙った。黙って、黙り続けて——そして。
「私・・・セントシュタインに行くわ」
「・・・リッカ!」
マルヴィナは笑った。リッカも、力強く頷く。
「父さんが宿を続けられなくなった分・・・私が続けてみせる!」
リッカは、下へ降りて言った。リッカの祖父に、そう話すために。
マルヴィナはフッと笑い、そしてリベルトを呼ぶ。
リベルトは、マルヴィナに頭を下げた。
「・・・貴女の、言うとおりでしたね・・・あの子は強くなったんですね。・・・もう、重い残すことはありません」
天を仰ぐ。
「——お別れ、です。ありがとうございました、天使様——」
——昇天。
光に包まれ、そして——消えた。
「・・・行っちゃったわね」
サンディは呟くと、いきなりクルッと振り返った。
「なかなかやるじゃん! こりゃアンタのこと、天使だって認めないわけにはいかないかー!」
「・・・声、でかいっ」
「ヘーキよ、アンタ以外聞こえないんだし。
——でさ、アンタ天使なんだから、」いいの?拾わなくて」
マルヴィナはきょとん、とした。
「・・・何を?」
「は? だから、星のオーラ。そこに転がって——」
静寂。
「ま、まさか、ちょっ、マジ!? 見えないの!? 見えなくなっちゃったのっ!?」
「・・・みたい」
「みたいって・・・前言テッカイしたいんですけど・・・ほんとーに信じちゃっていいのカナ」
「だからぁ・・・」
二人の議論はしばらく続いた。
【 Ⅱ 】 ——終結。