二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: bio hazard Episode ( No.3 )
日時: 2010/09/10 18:52
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: S8wpdLDK)

  2 依頼


 某県のとある街の片隅で青年が通信機で交信していた。

「傘谷に?」

『うむ。確か…君の出身地だったな』

「…まあな。小学卒業と同時にこっちに移ったから今はどうなってるか知らねーよ」

『例の事件は知っているな?』

「ああ、聞いたよ。殆ど壊滅したらしいな」

『それで君に頼んだわけだ』

「…そうかよ。普通に入れるんだろうな」

『大丈夫だ。私が手を回しておく』

「分かった。じゃあな」

 青年は通信機の電源を切ると、青年は黒い原付バイクに跨った。

 腰に届きそうな長い黒髪。

 女顔。男だが。

 黒いTシャツの上に水色の和服を右肩肌脱ぎで着ている。

 背中には68cmのマシェットナイフが鞘に納められて背負われていた。

 懐には青年が“爆魔”と呼ぶウィルディピストルと“紅蓮”と呼ぶブレン・テン、それと予備弾倉が入っている。

 左の袖、つまり和服の袖には“アリス”と呼ぶベレッタM92Fが入っている。

 この目立ちそうな格好の青年の名前は黒咲 影璃(くろさき かげり)。

 依頼を受ければ汚い仕事もこなす16歳だ。

 影璃は原付を飛ばす。

 そして、山沿いの倉庫の前に止めると、倉庫の中に入っていった。



 倉庫に入った直後、一人の少女が影璃に気付き、走り寄ってきた。

「お兄ちゃん、また依頼?」

 少女が訊ねると、影璃は軽く頷き、棚から必要な弾薬を取り、懐にしまった。

 影璃を“お兄ちゃん”と呼び、慕うのは黒咲 猫沙(くろさき びょうさ)。

 影璃の実の妹で、狙撃が得意な14歳。

「何処に行くの?」

「傘谷」

「あ、丁度良かった!」

 猫沙が急に叫んだ。

「何が丁度良かったんだ?」

 影璃が聞き返すと、猫沙はノートPCの画面を影璃に見せた。

 画面に映し出されていたのは、二人の母、天美(あまみ)からのメールだった。

『影璃と猫沙へ
  傘谷に行くことがあったら、和傘薬品の最重要研究室に置いてある
  “実験報告”のプレゼンのデータロムを取ってきて。
  私はかよわいから行けないの。
  だから、よろしくネ♪
              母 天美より』

 メールの文面を読み終えると、影璃は苦笑した。

「かよわいだなんて、ヤクザをキック一閃、それで仕留める女がよく言うよ」

 影璃と猫沙の両親は和傘薬品の幹部だ。

 和傘薬品とは、1998年のラクーンの一件で崩壊した製薬企業、“UMBRELLA”の日本支社だ。

 今回の事件に関して、責任問題を問われた和傘薬品は、『不慮の薬物流出事故』と説明している。

 それと同時に和傘薬品専属特殊工作部隊“W.S.S”が極秘で投入されたのを政府は知らない。

 影璃はそのことを知った上で今回の作戦を遂行しなければならない。

「…じゃあ、早めに帰ってきてね。ご飯作って待ってるから」

 猫沙の言葉に影璃は頬笑みながらも愛車に跨ると、発車した。


——一時間後、影璃は傘谷市を封鎖するための塀の前で自衛官の許可を取った。

 傘谷市に足を踏み入れると、影璃は足早に林道を抜け、入夢町(いりむちょう)の商店街へ歩みを進めた。

 2008年05月13日(火)11:32 作戦開始