二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: bio hazard Episode ( No.32 )
日時: 2010/11/21 20:06
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: N1u19UeR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

「ねぇ、西倉庫ってあれじゃないの?」

 歩いている最中、神紅が“一階西倉庫 無断の立入禁止”と書かれた札が貼られているドアを指差した。

「ああ、そうだ。でも、まだ入らない」

 影璃が答えると神紅は不思議そうな顔をし、再び聞く。

「どうして?」

「まだ幾つか気になるところがある」

「?」

 影璃の答えに神紅はやはり不思議そうな顔をしながら、影璃についていった。

 影璃がまず向かった先は、職員室横の校長室。

 窓が開け放たれているが、何かが入ってきた様子はなく、比較的綺麗な部屋だった。

 ただ、やはり血生臭い。

 応接用の高級そうなソファに倒れている生徒の死体には散弾が撃ち込まれている。

 そして、明らかにずらされた形跡が見られる戸棚の横には隠し扉があった。恐らく、ずらされる前は戸棚の後ろにあったのだろう。

 血痕がその扉の向こう側に続いている。

 影璃は“アリス”を構え、扉を開けた。

 薄暗い部屋の中にはレミントンM870を抱えた初老の男の死体があった。

 近くに注射器とそれに使えるアンプルが幾つか転がっている。

「こいつは“t”のワクチンだな……大方、発症する直前に打ったんだろう。そりゃ死ぬわな」

 空のアンプルと緑色の薬品が入ったアンプルを眺めながら影璃は呟いた。

 発症する直前、体内の細胞の大半がt‐ウィルスに侵され、ゾンビ化を始める。

 その為にまず脳細胞が死滅する。

 頭痛と高熱を引き起こし、身体も重く感じ、神経がおかしくなり、痒みが生じるのもこの為である。

 そして、それと同時に死に至る程の新陳代謝を行い、宿主が死んだ直後、身体を完全に支配し、無理に蘇らせる。

 この時、前頭葉は殆ど機能を失い、食べることしか考えない“ゾンビ”と化す。

 発症、つまりゾンビ化の直前には既に体中の細胞はt‐ウィルスに汚染され、前頭葉の機能も低下してくる。

 其処にワクチンを打った場合、t‐ウィルスは五分と経たずに死滅、激しすぎる新陳代謝を行った身体が耐えられる筈もなく、ただの死体となる。

 影璃はそれを理解していた。

「校長先生……」

 神紅が呟く。

「これは…レミントンか。何故こんなものを……」

 影璃は男——校長の持っていたレミントンM870を手に取り、眺めた。

「ま、持っていくか。神紅、使い方教えるから、持っとけ」

 机の上の箱詰めの12ゲージショットシェルを鞄に詰めていた神紅は影璃の方を見た。

 影璃はレミントンM870を構え、神紅に使い方等を教えた。