二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: FINAL FANTASYⅦ—序章—   コメント下さい!! ( No.64 )
日時: 2010/12/09 22:47
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)

   Capter Ⅹ —好き—

「ちょっ・・・・・!!は、はなしてよ!!」

エアリスの腕を掴んで軽く走っているレノに、彼女はあせって呼びかける。

「いったい、どこにいくつもりで・・・!!!」

「う〜ん・・・。ひとけの無いところだぞ、と」

いつもの口癖で、レノの声は陽気に答える。
この・・・!!お調子者ッ・・・!!
エアリスは彼女なりの思いっきりなしかめっ面をした。
しかし前を走るその“お調子者”には、そんな彼女のしかめっ面が見えるわけは無い。

「ひとけの・・・ない、ところ・・・?そこで、何する気・・・・・!?」

「そだな。キスでもするか」

体力も無く、息の切れてきたエアリスはそんなレノの即答した言葉に「!?」という顔をした。
レノが立ち止まる。エアリスも半ばそのレノにぶつかるようにして立ち止まった。

そこは校舎の裏口近くで、しかし外にも(ミッドガルにいる限り仕方ない------)鉄の地面の空間があった。
いよいよかと思い、エアリスは息が切れたのもあって顔を上げないようにしていた。
はぁ、はぁと呼吸を整える。

「・・・ティファはさ、ルードが好いてんだよ。シスネはザックスを好きだし、イリーナはタークスの主任が気になってるらしいんだ」

前を向いたままいきなり語りだしたレノに、エアリスは顔を上げる。
クルリと振り返る。

「だからさ、エアリスが入ってきたとき、思ったんだ。かわいいし、俺にぴったりだぞって」

「・・・・・」

エアリスは目を伏せる。
好きな人のために心を痛めたり・・・。
人の心の複雑さを、実際は直面したことの無かったエアリスだったが、そのややこしさはよくわかった。

「でも、それはちがうんじゃない?」

レノはエアリスをみる。
二人は見つめ合う格好になった。
しかし、レノはエアリスの向けるその真摯な瞳を見て、口をつぐむ。

「・・・・・だってそれ、あなた自身のきもち?ちがうよね。だって、本当に好きなら・・・。相手がどんなひとを好きでも、自分を好きになって、ってがんばるよ」

にこり、とエアリスは笑う。

「だから・・・。あなたの好きなひと、わたしじゃない。だってあなたは、わたしの何もしらないもの」

「・・・じゃあでも、俺が今のあんたの言葉で、あんたのこと本当に好きになっちゃってたらどうする?」

え、と彼女の顔が固まる。
まさかそう来るとは思わなかった。
あはは、と苦笑いしながらさ〜て、どうしよっかな。と悠長に考えをめぐらす。
と、そのとき上から彼が降ってきた。

「そこまでだ。・・・・・タークスなんかに、こいつをくれてやったらどんなに危険な目にあうか知れない」

クラウド。
フン、とクールな目つきでレノを見下す。
エアリスとレノの間に割って入り込み、少し彼女をレノから遠ざける。

「クラウド・・・・・」

「んだよ。ソルジャー試験に落ちたくせに、紳士気取りしてんじゃねーぞ」

今度は複雑な気持ちで発したエアリスのつぶやきに、レノが怒りをあらわにして捨て台詞を吐いた。
エアリスがはっとするのと同時に、クラウドは冷たい怒りを瞳の奥に秘めた。
エアリスはもめそうな二人を前にして、動揺しきった顔で子供のごとくクラウドの袖を引っ張った。

「クラウド、やめて。だめ、みんなのとこ、もどろ・・・ね?」

クラウドは怒りを押し込めて後ろのエアリスを見た。
その顔には、エアリスは怒りより苦しさが感じ取れた。

「・・・いや、エアリスは先に戻っててくれ。俺は後から行く」

「じゃあわたしもここにいる」

頑固に、エアリスは少し離れたところに立った。
これならいいでしょ、とばかりにそこで仁王立ちをする。

「クラウド、一緒じゃないならもどらないから」

彼は悩んだあげく、レノに向き直った。
背中に背負っていた、ソルジャーが持つ馬鹿でかいバスターソードを手にする。
ただ、彼のは一般ソルジャー用と少し異なる『分裂できる』機能が備わっている。
レノは、腰のベルトに引っさげていた警棒を取り出した。

「じゃあ・・・。」

エアリスはクス、と一回笑った。

「勝ったほうは、わたしと・・・。デート、1回ね!」