二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: FINAL FANTASYⅦ—序章— コメント下さい!! ( No.80 )
- 日時: 2010/12/13 23:03
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter ⅩⅤ —彼の中の獣—
クラウドは立ち上がると、「先に行ってるからな」とだけ言って去っていった。
エアリスはシエラと二人、保健室に取り残される。
「あのぅ・・・。どうして、ここに?」
「あら、私のことを知っているの?今ね、シドは新しい飛空艇の試乗中なの。メンテナンスも終わって、ここのコはどうしてるか見に来たわ」
シエラは薬瓶の棚を探りながら言った。
エアリスはそんな彼女を目で追いながら、「はぁ・・・」と微妙な返事をする。
シエラはひとつ、薄紫の薬瓶を取り出すとそれをエアリスに渡した。
「苦くないようにせんじた万能薬よ。めまいも消えるでしょう・・・最も、またああいう状態になりたいなら別だけど」
「い、嫌です!!飲みます飲みます!!」
エアリスは慌てて万能薬を受け取った。
いまさら自分の顔が赤くなっているのに気づき、それをごまかすためにも一気飲みした。
「うへぇ・・・。ふ、不思議な味がしますね」
ぜぇぜぇという状態で瓶を机に置く。
シエラは机の上の瓶を流し台に入れた。
「もう行っても平気よ」
「ありがとうございました・・・」
シエラの口元が、含み笑いを浮かべていた。
それに気づいたエアリスはそそくさと、保健室を後にしようとしたが———。
「エアリスさんってあのコのこと好きなのよね?だって、さっき寝てるときも呼んでたわよ」
「!?」
「でもさぁ・・・。あの子ってもてるのよね。ただ」
シエラは言葉を一旦切った。
「あなたって、彼の気持ち考えたことはあるの?じゃ、ヒントをあげようかしらね。あなたが助かったのは、彼が人工呼吸をしたおかげなのよ」
「え!?えええ!?」
気づけば彼女はそこを飛び出していた。
*Cloud Side*
時は少々さかのぼり———。
「先に行ってるからな」
彼はそういって保健室を抜け出した。
正直、エアリスがついてこなかったのは意外だったし、同時に安堵した。
なんだろう。
彼女が上から降ってきたとき(“のしかかって”というと故意に聞こえてしまう)、クラウドは幼少時の一時だけ、ティファに感じたことのある感情を抱いた。
あのなんともいえない気持ち。
自分が自分でなくなるような気持ちだ。
しかしそれはもっと強く、初めて彼女を見たときからティファのときとは違う、なにかが自分の心の中でうずいていたのを感じていた。
しかしさっきあの瞬間だけは、その心の中に潜んでいたその獣が、暴れだした。
クラウドはソイツを何とか抑えるため、自制心を働かせた。
しかしその集中力はそう長くは続かず、もう限界だと悟ったときシエラが登場したので、クラウドにとっては正直救いの手だった。
シエラに、思わず漏らしてしまった人工呼吸のこと。
本人に伝わっていなければいいが・・・。
クラウドは迷った。
教室に戻る気は費えていたが、エアリスに先に行ってるといったからにはいないとそれは傷つくだろう。
でも、ここにいると彼女が来る。
今はまだ気持ちが不安定で、彼女が来たときにきちんと自制できるかわからなかった。
何しろこの獣は、まだ襲う機会を狙ってうろうろしているのだ。とても危険である。
「・・・クラウド」
その心地よいソプラノの声に、クラウドの中の獣がピン、と背筋を伸ばした。
クラウドが振り返る。
頬をほんのりピンクにした彼女がいた。
「なんだ?」
クラウドは、心をなるべく落ち着けていった。
しかし彼の中の獣はもはや戦闘体勢で、危ない。
ともかく目をそらす。
獣は不満げに腰を下ろしたが、尻尾を揺らしている。
まだ機会を狙っているのだ。
「あの・・・。さっきはありがと。先生から、聞いたの。助けてくれたってこと・・・」
「いいんだ。俺は、あんたを守ると決めたんだし、当然のことだよ」
「うん・・・。・・・ね、どうして目をそらすの?」
一歩彼女が近寄る。
服が、病室のときのと同じだ。着替えていないらしい。
白いワンピースのすそがゆれる。
「そらしてない」
「そらしてる!絶対、そらしてる!!・・・ほら!」
彼女が覗き込んできたので、驚いて思わず背けてしまった顔を両手で挟み込まれる。
ぐいっと向けさせられ、首が軽く嫌な音を立てた。
「わたし、制服も持ってきたの。女子トイレで着替えてくるから、外で待ってて欲しいんだけど・・・。いい、かな?」
「わかったよ」
内心慌てながらそういうと、彼女はふぅ、といって彼から手を離した。