二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リボーン 神様のドルチェ【600突破ありがとうございます!】 ( No.142 )
- 日時: 2010/11/03 17:56
- 名前: 霧氷 ◆vll3drelnA (ID: 2Sdxx4yv)
第四弾「鍵」
「・・・なぁんだ、そこまで強くないんじゃん、“ボンゴレ”って」
黒い小さな影が、何かをポイッと口に放り込んだ。
モニターに映っているのは、傷だらけのツナだった。
もう1つのモニターに映っているのは———月の守護者・“風月春”。
影はガサガサと袋に手を突っ込んだが、お気に召さなかったのか、ポイと袋を投げ捨て、新たな袋を開けたかと思うとまた手を突っ込み、ボリボリと音を立てて何かを食べ始める。
暗くて良く見えない。
影はリモコンをモニターに向け、ピッとボタンを押す。
春の顔が2つのモニターに映し出される。
袋に手を突っ込み、ボリボリ食べながら呟く。
「欲しいなぁ欲しいなぁ欲しいなぁ。月の守護者が欲しいなぁ!きっとあれは凄い戦力になる!」
影は高らかに笑い、言う。
まるでクリスマスに欲しい物をサンタクロースにねだる子供のように。
———瞬間、モニターの光だけだった部屋の電気がパッとつく。
モニター2枚は壁に付けられており、辺りは一面真っ白な世界だった。
部屋の中央には、ポツンと黒く、豪華な椅子が置かれている。
そこだけ、まるで全てを包み込むような“闇”が広がっていた。
そんな椅子に座っていたのは———“黒い少年”。
長く伸ばされた真っ黒な髪は無造作に後ろで結わえられ、右の瞳は長く伸ばされた前髪のせいで隠れてしまっている。
覗いているのは、左の真っ黒な瞳だけだった。
服装は黒いYシャツに黒いズボンと、全身真っ黒で統一されていた。
首から提げられているのは・・・“黒い鍵”。
服装に同化して目立たない筈の“それ”は不思議とその存在を主張していた。
少年はキョロキョロと辺りを見回すと、苦い顔をした。
まるで楽しみにとっていたエビフライを食べられたような顔だ。
すると部屋の出入り口のドアがスッと開き、1人の青年が入ってきた。
歳は20代前半だろうか、黒い髪はショートカットで整えられていて、長い前髪を散らせている。
少年は7、8歳ぐらいだろう。
青年と背の高さの差がありすぎる。
青年は少年に近付き、言った。
「・・・“ボス”、暗い部屋での閲覧は目を痛めます。お控え下さい」
「んもー!“夜雀”ちゃんてばいつもそう言って電気つけちゃうんだから!」
ボスと呼ばれた少年は頬を膨らませ、青年———夜雀を睨みつける。
夜雀は少年にペコリと頭を下げてから続ける。
「申し訳ございません、ボス。ですがこれもボスの為です。ご理解を」
「・・・仕方ないなぁ・・・夜雀ちゃんのお願いだしね。でも、僕の嫌いな物は覚えといてね?“白”と“偽善者”だよ?」
「承知致しました」
「なら、夜雀ちゃんだし許す♪」
そう言って少年は空になった袋をポイと投げ捨て、ペロペロキャンディーを口に含み、幸せそうな顔をする。
夜雀はほっと安心したように息をつく。
・・・その時、乱暴にドアが開けられた。
バカァァァァァァァンッッ!!!!
「よー“レヴァノ”!どーだ?俺のゲットしたナイスな動画はよ!!」
喋り方からして男のようだが、そこに立っていたのは勝気な少女と大人しそうな少女だった。
勝気な少女は左手を腰に当て、仁王立ちしている。
ストレートな長い黒い髪は腰まで伸ばされていて、黒い瞳はスラリと細くつり上がっている。
一方大人しげな少女は黒い髪を黒いリボンでツインテールに結わえていた。
黒い瞳は丸く大きく、手には黒い分厚い本が抱かれている。
レヴァノと呼ばれた少年はケラケラと笑った。
「相変わらず“ユーノス”ちゃんは男勝り(おとこまさり)だよね、僕や夜雀ちゃんよりさ」
「もー女だっつって守ってもらえるよーな歳でもねーしな。自分の身は自分で守る」
「まだユーノスちゃんと“柘榴”ちゃんは17歳じゃない」
「おめーは8歳だ馬鹿」
柘榴とはツインテールの方の少女だろう。
柘榴は顔を上げた。
レヴァノを呼び捨てで呼んだ上に馬鹿呼ばわりしたユーノスを夜雀が睨みつける。
「・・・ユーノス」
「げ、夜雀いたのかよ・・・。わりーわりー、今度から気ぃつけるって!」
「・・・32回目ですよユーノス」
「柘榴まで・・・」
2人から注意を受けるユーノスを見て、レヴァノは笑った。
「ははっ!いいよいいよ、ユーノスちゃんはいいの!」
「しかしボス」
「レヴァノ様・・・」
夜雀と柘榴がレヴァノを申し訳なさそうに見る。
ここぞとばかりにユーノスが声を上げる。
「ほーらボスのご命令だぜ?もういいだろ?・・・ところでだ、レヴァノ」
ユーノスがレヴァノに近付く。
レヴァノは「ん?」と言いながら顔を上げる。
ユーノスの後を柘榴が駆け足で追いかける。
「・・・ボンゴレはいつ殺れるんだ??」
レヴァノは目を細める。
夜雀ははぁ、とため息をついた。
柘榴はユーノスと同じことを考えていたらしく、本を持つ手に力が篭る。
「ボンゴレはまだ殺らないよ。今じゃ簡単に“春ちゃん”も奪えちゃうもん」
「・・・あぁ、風月春か。もう愛称つけたのか?」
「うん!彼女は“優しい”から、きっと力を貸してくれるよ!」
ユーノスの言葉に頷きながら笑うレヴァノ。
「———・・・だって、“闇”を支えているのは“月”だからね」
鍵が、不気味に輝いた。