二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: リボーン 神様のドルチェ【ハロウィン絵upしました!】 ( No.149 )
日時: 2010/11/04 19:34
名前: 霧氷 ◆vll3drelnA (ID: 2Sdxx4yv)

第五弾「丑三つ時」

ピピピッ、と聞きなれた電子音が耳に響く。
次に、パンッと軽やかな音がしたかと思えば、電子音が止まる。
目覚まし時計を止めたのは月の守護者・風月春のようだ。
春は隣で寝ているアリサを確認する。
ぐっすり眠っているが、いびきはかいていない。
どうやら本格的に夢の世界へ入っているようだ。
それを確認すると、春はゆっくりと音も立てずに布団から起き上がった。
草木も眠る丑三つ時だ。
眠りが浅い人間しか気付かない。
完全に布団から出た春は自分の格好を確認し、少しだけ考える仕草をした。
・・・すぐに帰る予定だ。
寝巻きでも異常は無い。
結論を出すなり春はすぐに行動を開始した。
部屋を出て、ツナの部屋も確認する。
電気は点いていない。
寝ているようだ。
春は階段を降り、玄関でシューズを履くなりドアを開ける。
———そして、音も無く閉める。
空には月が輝き、何よりも大きかった。
春の影がくっきりと浮かび上がっている。

(・・・私はあんな物の守護者なんだ)

自分はあんな風に輝けるのだろうか?
いや、輝かねばならない。
さぁ、行こうか。

そう思った瞬間———




「———・・・まただ」


春は隣町———“黒曜”を見つめる。
さっき黒曜の方で死ぬ気の炎の“揺らぎ”を確認したのだ。

“揺らぎ”とは———死ぬ気の炎が空気を震わせ、空気が振動する現象だ。

分かる人には分かるが、かなりの訓練を積んでおかなくてはならない。
揺らぎは普通死ぬ気の炎を使わなきゃ起きない現象だ。
こんな真夜中に揺らぎが起きる事は滅多に無い。
そして春が確認したその揺らぎは移動をしている。
もしかしたら、ツナ達に被害が及ぶかもしれない。
だから春はわざわざ起きてその揺らぎを確認しに行くのだ。
春は黒曜へ急いだ。





「———ここ」

揺らぎを追って来た場所は、昼間も訪れた黒曜ランド。
確かここにはクロームがいた筈だ。
仲間かクロームが死ぬ気の炎を発動したのだろうか———
確認すべく、春が歩を進めようとしたその時———



「・・・止まりなさい」


「———っ」

声がした。
温かい、しかし確実に相手の心を突き刺すような声が春の耳に響いた。
同時に・・・尖った冷たい金属が、春の首筋にあてがわれる。
春は淡々と声の主に告げた。

「1つ言っておくよ。私は怪しい者でもないし同時に貴方の敵でもない」
「そうですか。しかし、それ以上進まないで下さい。“僕の可愛いクローム”が起きてしまいます」
「っ!!・・・そう、分かった。じゃあまずはその凶器を下ろしてくれないかな」
「・・・いいでしょう」

チャキ、という音と同時に春の首筋にあった冷たい感覚が無くなる。
春はすぐさま振り返ると、声の主の正体を確認した。

「・・・やっぱり貴方か。ボンゴレ霧の守護者・六道骸」
「おや、僕の事は色々と調査済みのようですね、月の守護者及びボンゴレ影部隊風月家10代目当主・風月春」

声の主———六道骸は確認を取るように春の情報を捲くし立てた。
春は仰々ぎょうぎょうしく肩を竦めて見せる。

「私の事も調べてるようだね。あと、普通に春でいいよ。フルネームは嫌なんだ」
「分かりました、春。・・・ところで、貴女は“厄介な者”に絡まれているようですね」

春は鋭い眼光を骸に向ける。

「貴方も厄介だね。幻覚でこの辺を徘徊してるなんて。だから揺らぎを確認したのか」
「なんせ幽閉されている身ですからね。少しは外の世界の事も知っておかないと」
「そう」

春は少し考えると、骸に言った。

「・・・教えてくれない?その私に関わっている厄介な奴。自分では分からないから」

骸は少し吃驚した顔をしたかと思えば、すぐに笑顔になった。

「それはまだ僕の口では言えません。・・・1つ忠告しておくとすれば、君は“優しすぎ”ます」
「・・・??」
「優しすぎるが故に君は“弱い”のです。何にでも漬け込まれる」
「嫌いな奴とは関わらないよ」


「しかし、君は優しすぎる。そして、君は誰も想像がつかない様な“闇”も抱えている筈です」


「———っっ!!!!」

春はまるで電流に打たれたように身を震わせる。
骸は険しい表情になると、春に告げる。

「君は誰も心配させまいと、“嘘”の情報を沢田綱吉に言った筈です。側近のアリサ・アリフェルにも、“真実”を言ってはいけないと」
「・・・・・・」
「そういう所が、君は“優しすぎる”んですよ」

骸は言い終わると、春の様子を伺う。
春はただひたすらに俯いている。
骸は息をつくと、春に言った。

「・・・そろそろ3時になります。早くお帰りなさい。僕ももう消えます」
「・・・・・・」

骸はにこりと微笑むと、踵を返して歩き始めた。

———その時、




「・・・貴方も“優しい”よね」


「・・・春?」

骸は歩みを止める。

「そうやって責めている様で、助言をしている。貴方は私と似ているんだね」
「僕と一緒で嬉しい人なんていませんよ」

「クフフ」と、独特な笑い声を漏らす骸。
すると突然春は顔を上げると骸に言った。

「君となら、仲良くなれそうな気がする」
「・・・は?」

ついつい骸は間抜け声を上げる。
構わず、春は続けた。

「骸、君は今から私の“親友”だ」
「———・・・っえ?は?」
「“契約”ってやつもしていいよ。私が許す」

すると春は左腕の服を捲くり、ビッと左腕を差し出す。
骸は初めての事にただただ戸惑いを隠せなかった。

「い、いいんですか?後戻りは出来ませんよ・・・?」
「構わないよ、ほら」

少しだけ頬を染め、嬉しそうだが無表情の春を見て、骸は言った。

「じゃあ、今から僕達は“親友”ですね」
「うん」

骸は独特な笑い方をして、三叉の槍で春の左腕に傷をつけた。

———2人にとっては初めての“契約”、となった。