二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: リボーン 神様のドルチェ【200突破ありがとうございます!】 ( No.56 )
- 日時: 2010/10/12 14:51
- 名前: 無花果 ◆j6drxNgx9M (ID: 2Sdxx4yv)
走った。
とにかく骸は走った。
本当は父と母と一緒に死にたかった。
1人残されるのは、嫌だった。
でも、母が、生きてくれと望んだ。
だから骸は走った。
「あ、く、ぅ!」
足が縺れ、骸は派手に転んだ。
ジンジンと膝に刺すような痛みが襲う。
血が滴った。
もう限界だった。
その時、骸の血だらけの左腕をがしりと掴まれた。
不覚にも、ここは薄暗い路地裏だった。
「・・・な!?」
「・・・お前が六道骸だな?」
「どうして、僕の名前を知って、」
「六道骸、来なさい」
「うわっ!や、止めて下さい!」
骸の言葉を遮り、左腕を掴んでいた男は骸を無理矢理起こした。
骸は直感で感じた。
———・・・“エストラーネオ”。
今までの出来事が凄い速さで骸の頭の中を駆け巡った。
全て、こいつ等のせいで、何もかもがメチャクチャに———
そう思った瞬間、骸の心を覆っていた負の感情が全て怒りに変わった。
骸は暴れたが、車に押し込まれ、抗う術が無い。
骸は必死に涙を堪えた。
そして連れて行かれた先は———地獄だった。
ゴボゴボ・・・っと気泡が上がっていく。
そんな事もあったなぁ、と骸は牢獄の水槽の中で笑った。
ただ、気泡がゆらゆらと上がっていくだけだ。
骸は今、復讐者の牢獄に幽閉されていた。
それでも、骸は笑っていた。
連れて行かれた先では、毎日身体を使った実験が行われた。
死んでいく、同年代の少年達。
不幸な事に、骸は死ねなかった。
そしてその実験の途中で、骸は“六道輪廻”の力に目覚めた。
赤い右の瞳を使って、幻術のリアリティを追求した。
母が支えてくれる。
骸はとても嬉しかった。
———そして、骸は自らその手を鮮血で染めた。
1人で、エストラーネオファミリーを壊滅させた。
事が終わった後、骸は2人の少年———城島犬と柿本千種を仲間に加えた。
『一緒に来ますか?』
そして2人は付いて来た。
しかし、本当に付いて来て、2人が幸せになったかどうかは骸には分からない。
そして、骸の手に付いた鮮血を拭き取ってくれたのは忘れもしない———沢田綱吉だ。
彼の瞳は希望を湛えた綺麗な琥珀色だった。
そして、その綺麗な琥珀さえも、骸は真っ赤に染めようとした。
琥珀をかち割り、返り血塗れにしてやりたかった。
———しかし、割れたのは、骸の鮮血に染まったルビーと、泥に塗れたターコイズだった。
しかし、返り血塗れにはならなかった。
ルビーは情熱を取り戻し、ターコイズの泥は綺麗さっぱり海に流された。
そして骸は気付いてしまった。
———自分がマフィアよりも恐ろしい者に成っていたという事に・・・。
母はこんな事をして喜ぶだろうか?
父は笑っているだろうか?
『しっかり自分を保ちなさい』
ツナの琥珀色の瞳を通して、父と母がそう言った気がした。
そして骸は復讐者に捕らえられた。
それでもなお、ツナは骸を心配そうに見つめていた。
さっき自分を殺しかけていた相手に同情するなど、ツナにしか出来ないだろう。
「———また会いましょう。Arrivederci」
そう言って、また会って、言いたかった。
自分の器をしっかり務めているクロームの力を借りて言える様なことではなかった。
ちゃんと牢獄から出て、自分の口で、多くの人に伝えたかった。
まずは父と母にありがとう。
犬と千種、クロームにありがとう。
フゥ太とランチア、沢山迷惑をかけた人達にごめんなさい。
雲雀には、謝っても謝り切れないだろう。
そして誰よりも君へ———あの頃の自分に戻してくれたツナに、沢山の“ありがとう”を贈りたい。
ちゃんと笑顔で、はっきりと———
「———あれ?」
ツナは窓から空を見上げた。
そしてクロームを見る。
京子とハルと楽しそうに雑談していた。
「どうしました?十代目!」
獄寺が沢山のプレゼントを抱えて嬉しそうに寄って来る。
今日は獄寺の誕生日だったため、ツナの家でパーティーを開いていた。
だから、骸の声なんてしない・・・筈なのだ。
「な、なんでもないよ」
「そうですか?」
「獄寺ーケーキ無くなるぜー?」
「あっ!テメー!俺も喰う!て、山本お前取り過ぎだ!!」
「ん?そーか?」
ツナは苦笑いしながらやり取りを見つめる。
そして再び空を見上げ、本当に嬉しそうに笑いながら、ぽつりと呟いた。
「———どういたしまして」
ImageSong:セツナレンサ
From:RADWIMPS
—fin—