二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

prologue---0.ある夏の夜に ( No.1 )
日時: 2010/10/24 23:02
名前: 璃莉 ◆Lfyfbq.t.A (ID: FxHN6Bqz)

「君らはエリサを連れて逃げなさい! 私が時間を稼ぐ! 」








0zero.








広大な邸の中には色とりどりの閃光が飛び交っていた。耳をつんざくような悲鳴や罵声が、何かが割れたり砕かれたりする音と共に屋敷中に響き渡る。大理石の床板には既に微動だにしなくなった人が幾人も倒れていた。


「そんな……駄目ですお義父様! 」


大混乱の中、大きな声で叫ぶ女性の声には怯えと焦りが見受けられた。
彼女はきれいなドレスを着ているがそれも所々破れている。もとはきちんとセットされていたであろう濃げ茶の髪も、グシャグシャに乱れていた。
右腕に持った木の棒を振り、必死に何かを守ろうとしているようだ……。
そう、彼女の左腕には毛布にくるまれた赤ん坊の姿があった。赤ん坊は母親の服にしがみつき、------よほど図太い性格なのだろう------すやすやと眠っている。


「いや、親父の言うとおりだ! このままじゃ皆殺されてしまう! 」


赤ん坊の父親と思われる男性も先から閃光のほとばしる棒を振り回しながら怒鳴った。


「親父がデスイーターの気を引いている間に逃げよう! 」

「それじゃあお義父様を見捨てるっていうの!? 」

「親父はきっと大丈夫だ! 大切な命を守るためにはこうするしかないんだ! 」




「お前ら何をもたもたしている! 」


しびれを切らした初老の男性の言葉を合図に、赤ん坊の父親は妻の手を引いて屋敷の扉めがけて走りだした。
と、同時に初老の男性は、全魔力を使って呪文を乱発し始めた。周りにいた黒いフードのデスイーターたちはいきなりのことに混乱し、夫婦と一人の赤ん坊を取り逃がしてしまった------



息を切らしながらも屋敷の外に出た三人は バシッ という音を残して消えた。ある夏の夜の出来事であった。