二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 犬夜叉-刹那主義- ( No.38 )
日時: 2011/01/03 06:55
名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)



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「いやっへー。まさか七宝ちゃんまでもう合流してるとは知らなんだ。これ結構原作の方進んでるみたいだねー。結構予想より。」
  
川の水を手で掬い上げる。さらさらと手から滑り落ちて行くまだ冷たい水を眺めながら、これなら飲めそうだと川の底を覗き込む。
川底の石は綺麗に透けて見る事が出来るくらいで、小さな魚の鰭が太陽に反射して光を放っていた。
              
只今私は船の上にいる。船と言ってもそんな大層な物ではなく、ちょっとした川下り用のボートの様だ。上流から流れに沿って漂っているだけなので漕ぐ必要は無い。岩場もそれほど無かったのが幸いしていた。
        
              
「凛ちゃん、何の話?」
 
「いえいえ何でも。気にしないで。」
   
 
遊びに来たんじゃねえと言う犬夜叉の言葉に一喝され、傾けた体と少し水に浸かった髪の毛を引っ繰り返すように揚げる。 
     
水が跳ねたのか、隣に居た七宝ちゃんが頭を振っていた。なんて可愛いのと心の中で呟く。いやむしろこんな子は女の子で居るべき。男の子は小っちゃい時は可愛くても大きくなるにつれて段々憎らしくなってくるんだよなあ……うちの弟が素晴らしい見本だ。
そういやアニメで犬夜叉子供シーンを見てこっちの方が可愛いじゃないかと思った気がする。当時12歳の私と今も共感出来るってどういう事。
多分私はあの時ツンデレに目覚めたんだ。1対1くらいの甘いツンデレが好きだったんだよ。
       
          
「あれ?、凛ちゃん犬夜叉、何か人みたいな……。」
 
その言葉に目を凝らして向こう側を見た。確かに何かが岸側の崖に居るように見えた。
 
「ホントだ。犬夜叉ちょっと右に漕いでってよ。オールとか無いんで素手で宜しく。」
 
「何で俺が?!」
 
「煩い。そんなんでいちいち反応してたらめんどいわ!何しろ私は小学校の頃の卒業アルバムで人使いが荒いランキング学年1位の女だからね!
ちなみに料理が下手ランキングと芸人にリアルでなれそうなランキングといつでもタンスの角に小指ぶつけて呻いてそうな人ランキングやら色んな事にノミネートされてるんだから!」
      
「自慢すんな。はいお前らそっちやれ。」
 
「全く何であんなに犬夜叉はいつもケチケチしとるんじゃ。」
 
「同感。ねーそうだよねー七宝ちゃん。」

私が嫌味ったらしく言うと悔しそうな顔していた。うん勝ち誇った気分。
 
渋々ながらも手を伸ばす犬夜叉。その姿があまりにも間抜けだったので少し笑ってしまった。
ん、私?ダルかったんで七宝ちゃんとかごめちゃんのお二方とゆっくり漕いでましたよー。アイラブ適当!
 
近づいていくとはっきりと人影が見えた。私と年は差ほど変わらないような女の子で、記憶を探ってみるとなんちゃら頭だとか呼ばれる妖怪の話だろうかと思い返す。
水面に何かが浮いているのに気が付くとそれも女の子だった。青っぽい黒の髪の毛に白い洋服が浮いていて、不気味に思えたが肌は血が通っていて赤みがさしていた。
2人を見比べる。何かがおかしい。
蜘蛛頭の話は、なずなちゃん、そう、見つけるのは1人だった筈だ。
         
「あちゃー。って両方とも生きてる?」
 
私が声を出した後、かごめちゃんが水面の女の子の頬に触れる。
 
「生きてるわ。引き揚げましょう。」
     
「了解。」
      
よいしょ、そんな声を出して腕を引っ張る。完全に引きあげられ、船が水びたしになっていた。
     
「さてと。犬夜叉くーん。そっちは大丈夫?」
 
声を掛ける。が、返答が無いので仕方なく七宝ちゃんを船に残して向かう。 
予想通り犬夜叉は目覚めたなずなちゃんに絶叫されていた。分かるよその気持ちは。目の前にこんなん居たら誰でもそうなる。
          
          
「……なんだかなー……。」
 
       
予期せない出来事に、首を傾げる。原作関係のストーリーは大体分かるんだけど。
宙にため息を付いて、ずぶ濡れになった制服の裾を持ち上げた。