二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 犬夜叉-刹那主義- ( No.53 )
- 日時: 2011/02/01 22:56
- 名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)
14 他力本願
「えーと・・・・・・?先程まで爆睡していた私には全く意味が分かりかねませんが、何がどうなってらっしゃるんでしょうか。」
私はなっちゃんちに着いた所で蜘蛛頭の回なんてすっかり忘れて眠ってしまっていた。都会暮らしの私には山旅というのは思ったより疲労が激しいらしかった。
筋肉痛だわこりゃ、と嘆いて心地よい香りのする畳の上で目を閉じたのが最後の記憶。
それが目が覚めたらとんでもない窮地に立たされていた。何せ目の前の異様な光景だ。大群の人面蜘蛛。
いつか見た気持ち悪いふわふわした物体が心なしか思い浮かぶ。
「凛ちゃん!いいから早く立って!」
かごめちゃんに肩を引っ張られる。
目に焼きついて離れない大量の蜘蛛が頭をくらくらさせて、上手く立ち上がることが出来ない。
頭痛がして、目の奥に小さな残像が残っていた。
「大丈夫?」
「ちょっと色々ショッキングで心臓に悪かったけど、大丈夫。」
一旦落ち着いて辺りを見渡すと、なっちゃんかごめちゃんと蜘蛛頭、そして糸の上で絡め取られている犬夜叉が目に映った。
驚いて声を出すより先に、自分の言葉を代弁するようにかごめちゃんの声が響いた。
「犬夜叉!死んで・・・ない、わよね。」
寝起きで上手く働かない頭をフル回転させて、漫画の中での記憶を探る。
、確かに、死んでない。うん、やっぱりそうだ。目の光が消えて、死んでるように見えるけど。
なぞる様に思い出して行く。少しずつ、記憶を引き出して。私だってそんな全てを完璧に覚えているわけじゃない。足らない部分を繋ぎ合わせて紡いで、やっとあの時の感覚を取り戻す。
—思い出した、全部。
私の今考えられる最善の策は、゛何もしない゛事。
逃げ?そうじゃない。全部上手く行く方法が、それだっただけ。怖いのかもしれない。足手まといになりたくない。そんな言葉も頭に浮かぶけれど、言い訳でしかないのかもしれない。
このままだと犬夜叉達は小屋に逃げ込んで夜を忍ぶ事になる。シナリオ通りに、成功させなければなれない。私も其処に紛れ込めばいい。
自分だけ助かりたいってのはきっと本能で、逃げたいって気持ちが全部を押し潰して、多分いざとなったら私、何も出来ない。
視界が揺れたと思ったら、かごめちゃんが糸を上りだしていた。なずなちゃんと待ってて、そんな言葉を残して。
それはきっととても勇気のある行動で、私になんか絶対出来ない事なのに、他人事のように思えて仕方が無い。
アニメのワンシーンを見るように見上げて、まばたきをしてから、きゅっとなずなちゃんの手を握った。