二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]———*。くるりくるり*。 ( No.40 )
- 日時: 2010/11/28 16:22
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: 5YaOdPeQ)
第二話 赤い、
温かな日差しに誘われ、銀時は重い瞼を閉じた。
……筈だったのだが。
其れは突然の襖を開ける音に遮られた。瞬間、騒がしかった周りが急に静かになる。銀時には其れだけで十分だった。
———松陽が、帰って来た。
あれ程重たかった瞼が急に軽くなり、銀時は眼を開けた。
遅くなってすみません、と言うと、松陽は部屋の前へと移動して行く。何時もの様に。
いや、違った。銀時の赤い眼が大きく見開かれる。有った、何時もと明らかに違う何かが。
松陽の右隣、其処に一人の少女が立っていた。
歳は10程だろうか。両手に後生大事に一本の脇差を抱えて。
(あいつ、誰だ? それにあの脇差、松陽先生の……)
少女の持っている脇差。其れは松陽の物だった。
銀時に自らの刀を渡してから、松陽は常にあの脇差を持っていたのを覚えている。
其の時だった。銀時の耳にある言葉が飛び込んで来たのは。
「おい、あいつの眼、真っ赤だぜ」
赤い眼。血の色の眼。
成る程、少女の眼は確かに自分と同じ赤い色をしていた。
両サイドの髪一束のみが胸あたりまで長く、頭頂部には重力に逆らう様にアホ毛が一本立っている。
其の短い髪は真っ黒なのに、眼だけが異質の物の様に赤かった。
部屋の中に、奇妙な空気が流れる。
銀時は此の空気を知っていた。
(俺が来た時と同じ空気だ)
一年前の秋に銀時が此の村塾に来た時もやはり、此の様な空気が流れていた。
初めて見るモノに対する興味と畏怖。此処に初めて来た時の銀時もまた、其れを持っていた。
其の空気を感じ取ったのだろうか。
松陽は、隣の少女を自分の前に立たせた。
「今日から皆さんと一緒に学ぶ、不知火凪です。色々教えてあげてくださいね」
松陽が話している間も、少女——凪と言ったか——は只じっと宙を見つめていた。眉一つ動かさずに。
其の姿は、夕暮れの戦場で生きていたかつての自分に、信じる事を知らなかったかつての自分にそっくりで。
しかし、松陽に会って其れは変わった。
白と黒と赤しか無かった銀時の世界は極彩色へと。それ程、松陽の存在は大きかったのだ。
温もりを知った今、もうあの頃と同じ暗闇へは戻れないし、戻りたくも無かった。
———其の眼は何処を見つめているのか。