二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂]———*。くるりくるり*。 ( No.59 )
日時: 2011/04/25 19:32
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: .qxzdl5h)

第三話   何も、分からない。 


あの場所に座って下さい、とでも言う様に、松陽はすっと銀時の前の空席を指差した。
ちらりと見上げた凪の頭を、松陽がぽんぽんと撫でる。其れに少し銀時が嫉妬したのは秘密だ。

異様な雰囲気の中、凪は少しも物怖じせずにトコトコと歩く。凪が腰を下ろす其の刹那、銀時と視線が絡んだ。
此処からでは分からなかったが、凪の瞳は銀時の其れよりも鮮やかな赤をしていた。其の瞳が連想させるのは真っ赤な血。
銀時が嫌と言うほど見て来た色。

(……こいつ、俺と同じ?)

ふと、そう思った。
松陽が何時もより遅くに来たのは、凪を見つけたからではないか。……あの、血と硝煙の匂いのする戦場で。
銀時がそんな事を考えているうちに、凪は横の柱にもたれ掛かって座っていた。首だけ少し動かして、外の風景を見ている。

(なんか……眠ィな……)

やがて、銀時は夢の中へと誘われて行った。

————
夕暮れの迫る村塾。
和室に一人ぼんやりと座ったままの少女が一人。
其れをこそこそと影から見つめる者が三人。

「高杉貴様から行け!」
「ヅラから行けよ! もしくは銀時!」
「お前らがお手本見せろよ! そしたら行く!」

銀時、晋助、小太郎の三人だ。
晋助と小太郎以外、村塾の生徒は少し前に皆帰った。
皆を見送り、何で遊ぼうかと話していた時、突然松陽に頼まれた。凪を読んで来て下さい、と。
それで戻って来たものの、何と言って話しかければ良いのか分からず、こうして三人で誰が話しかけるかの会議と言う名の言い合いをしていたのだ。

「あー面倒臭ェ。じゃあ三人同時で行くぞ、良いな!」

晋助の言葉を合図に、三人はすーっと襖を開けた。
凪がぱっとこちらを向く。赤い眼を見開いたが、其れもほんの一瞬の出来事だった。

「お……」

しかし。
銀時が声を発そうとするや、凪は行き成り立ち上がり、すたすたと歩き出してしまった。こちらをちらとも見ず、銀時達と反対側に位置する襖に向かって。

「待てよ!」

慌てて凪のに駆け寄り、右の肩に手を掛けた。……筈だった。

「触るなっ!!」

張り上げた声に驚き、銀時は思わず手を引っ込めた。
初めて聞いた、凪の声。けして大きくは無いが、良く通る声だ。

「てめっ、何しやがる!」

晋助も負けじと声を上げる。凪はギロリと三人を睨みつけた。

「……こっち、来るな」

とても10歳程の少女とは思えない、憎しみのこもった眼。
三人が其れに気圧されている間に、凪は襖を開けて出て行った。

(何、考えてんだ?)

分からない。何も、分からない。