二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]———*。くるりくるり*。 ( No.88 )
- 日時: 2011/04/25 19:46
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: .qxzdl5h)
第五話 斜陽、夕暮れ
「やった、コレ俺絶対勝った! だって後六マスだもの!」
さいころ片手に、銀時の歓喜の声が響く。
にやりと不敵な笑みを浮かべ、双六の駒をゴールに五つ前進させた。
「うるせー黙れ天パ。こんなモンに熱くなってんじゃねーよ」
「何それ負け惜しみ? そういう台詞吐く奴が実は一番ヤル気満々なんだよ低杉バカヤロー」
「なんだと、テンション年中上がりっぱなしの頭しやがって!」
「ンだとォォォ!!」
どがしゃああ、と盛大な音を立て、双六が宙を舞う。
其れと同時に銀時と晋助の取っ組み合いの大喧嘩が始まった。
何時もなら此処で小太郎が止めに入り、二人に八つ当たりされ結局三つ巴の争いになるのだが、今日の小太郎は黙って二人の喧嘩を見ていた。其の眉間には既に皺が寄っていたが。
小太郎の我慢も限界かと思われたその時、すっと襖が開いた。
「そろそろおやつにしましょうか」
松陽の声一つで二人の喧嘩はぴたりと収まった。
お互いの襟を掴んでいた両手を離し、晋助は散らばった双六を片付け始める。
松陽はにこりと笑うと、饅頭を入れた皿をちゃぶ台の上に置いた。
一番に饅頭を取ったのは銀時で、其れに晋助と続く。次に饅頭を取ろうとした小太郎は、可笑しな事に気が付いた。
皿に残る饅頭は後三つ。自分の分と、一つは松陽の分である。
「先生、残りの一つは?」
「其れは凪の分ですよ。声をかけようと思ったんですが、寝ていて」
一瞬、ほんの一瞬だけ、小太郎は凪の存在を忘れていた。
凪は今朝やって来たばかり。忘れてしまうのも少しは仕方の無い事だ。
あんまり気持ち良さそうに寝ているものだから、と半ば独り言の様に呟くと、松陽は饅頭を手に取った。
————
其れからどれ位経っただろうか。今まで読書をしていた松陽は、ふと顔を上げた。太陽は西の空に傾いている。
隣では小太郎が村塾の教本を読み、丁度反対側の壁では晋助がぼんやりと空を眺めていた。銀時はこちらに背を向け、縁側に転がり微動だにしない事から、寝ているのだろう。
松陽は再び視線を空に移した。
日の傾きから見て、今は恐らく申の刻(午後四時ごろ)だ。
(そろそろ凪を起こさないと)
凪の寝ている部屋へ行こうと思ったが、そういえば朝と昼に使った皿をまだ洗っていない事に気付いた。
凪も連れて散歩にでも行こうと思っていたので、隣の小太郎に頼む事にした。
「小太郎、凪を起こして来てもらえませんか? 四人で散歩にでも行きましょう」
其れを聞いた時、一瞬小太郎は困った様な顔をした。
先程の事が頭をよぎったのだろうか。
「……分かりました」
返事をすると、小太郎は教本をちゃぶ台の上に置き、部屋を出て行った。