二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第二話 「私はアオナ」 ( No.4 )
- 日時: 2010/11/23 17:19
- 名前: 無幻 (ID: 8hgpVngW)
゜・*:.。.第二話.。.:*・゜
着いた所では、雨が沢山降っていた。
流石に寒い、凄く寒い、どうしようもないくらい寒い。
「初めまして、魔女さん」「貴方が次元の魔女ですかー?」「てめぇ誰だ?」
全身黒男と、白い優しそうな男と目を合わせる。
それから、魔女さんの方に向き直る。
「先に名乗りなさいな」
「俺ぁ黒鋼。つかここどこだよ」
魔女さんは丁寧に「日本よ」と答える。
此処が、日本——。
「ああ?俺がいた国も日本だぜ」
「それとは違う日本」
「わけわかんねぇぞ」
本当、訳分からない。
早く自己紹介の順番が回らないかなー。
「あなたは…」
魔女さんは白い方の男に向き直る。
「セレス国の魔術師、ファイ・D・フローライトです——」
丁寧にお辞儀する。
第一印象ばっちぐー。
「ここがどこだか知ってる?」
「え——相応の対価を払えば願いをかなえてくれる所だと」
「その通りよ」
うん、やっと私の番かなー?
「名前をどうぞ」
「私はアオナ・H・ストレイナーです」
「ああ——、彼から聞いているわ」
「そりゃどーも」
にこりと微笑んで返事をする。実際、にこりじゃなくてぎこりだけど。
やっぱ笑顔は難しい。
「さて、あなた達がここに来たということは、何か願いがあるということ」
「「元いた所」」「へ今すぐ帰せ」「にだけは帰りたくありません」
「…」
私一人だんまり。空気読めないから、私。
「それはまた難題ね、ふたりとも。—いいえ、三人とも、かしら」
私一人仲間はずれ。どーしよーもないなー。
「あなたは、何か願いが?」
「私は色んな所を旅したいなー…なんて」
「そう」
うわっ、軽くあしらわれた!
しかも話聞いてないっぽいっ!プンプン。
「その願い あなた達が持つもっとも価値あるものでも払いきれるものではないわ」
きゃー、そーなのー。慌てるフリ、上手くいかないー。
「けれど、四人一緒に払うならギリギリって所かしら」
女の子を抱えた男の子が、沈んでいた顔を上げた。ほうほう、中々のイケ面ですな、ふむふむ。
「なにいってんだてめー?」
「ちょい静かに頼むよぉ そこの黒いの」
「黒いのじゃねー!黒鋼だっつの!!」
早くもケンカ勃発!!さあ、どちらが勝つのでしょー!?おや!?早くも黒コーナー黒鋼が攻撃をしかけた!!おーっとぉ!!クリーンヒットー!!!!…なんて、嘘ですよ。
「あなた達四人の願いは同じなのよ」
魔女さんが語っていく。
「その子の飛び散った記憶を集めるために色んな世界に行きたい。この異世界から元の世界に行きたい。元の世界へ戻りたくないから他の世界に行きたい。理由は知らないけど取り敢えず色んな世界に行きたくない」
魔女さんは私の所だけを騙る。
まあ騙らせてるのは私なんだけどさ。
「目的は違うけど手段は一緒。ようは違う次元、異世界に行きたいの。ひとりずつではその願い、かなえることはできないけれど、四人一緒に行くのならひとつの願いに四人分の対価ってことでOKしてもいいわ」
魔女さんが方法を教えてくれた。
ま、私一人で行けるんだけどなー、黄杜の奴め。
「俺の対価ってなんだよ」
「その刀」
黒鋼は刀を上に上げて取らせまいとする。
「なっ!銀竜はぜってー渡さねぇぞっ!!」
「いいわよ。そのかわりそのコスプレ格好でこの世界を歩きまわって銃刀法違反で警察に捕まったりテレビに捕まったりテレビに取材されたりするがいいわ」
「あ?けいさ?てれ?」
「今あなた達がいるこの世界にはあたし以外に異世界へ人を渡せるものはいないから」
「んなデタラメっ!」
うーわー見てるだけでややこいな、この会話。
「本当だぞー」
「マジかよ!?」
まじだよー。
「どうするの?」
魔女さんがニヤッと笑う。
「くっそー!絶対「呪」を解かせたらまた戻って来てとりかえすからな!」
魔女さんは静かに刀を受け取る。
「あなたの対価はそのイレズミ」
「この杖じゃダメですかねぇ」
「だめよ」
うん、魔女さんに一票。だめだよ、それー(笑)
「言ったでしょ、対価はもっとも価値のあるものをって」
「仕方ないですねぇ」
おおっ、美形ー。困った顔もおっとこまえー。
「あなたからはもう既に貰っているからいいわ」
「ああー…黄杜に取られたの、あれが対価だったんだーさいてーだー」
ちっくしょー、黄杜めぇー。
まあ、あれで済んだ事に感謝しとく方が賢明かな。
「あなたはどう?自分の一番大切なものをあたしに差し出して、異世界に行く方法を手に入れる?」
「はい」
「あなたの対価が何かまだ言ってないのに?」
「はい」
揺るぎない目で魔女さんと向き合う。
うん、やっぱり黒鋼ちゃんより男前。黒鋼ちゃん、最下位ー。
「あたしができるのは異世界へ行く手助けだけ。その子の記憶のカケラを探すのはあなたが自分の力でやらなきゃならないのよ」
「……はい」
「…いい覚悟だわ」
…いい顔だわ。
私がちょくちょく台無しにしてて…本当に皆さんに申し訳ないやらなんやらっす、はい。
「ってふえてるし——!」
「来たわね」
黒い服で眼鏡っ子の男の子が白いもこもこと黒いもこもこを連れてきた。
うん、このこもかーいーわ。
「この子の名前はモコナ=モドキ。モコナがあなた達を異世界へ連れて行くわ」
黒いモコナは左手をしゅたっと上げる。
うん、かわいいな。
「おい もう一匹いるじゃねぇか、そっち寄こせよ。俺ぁそっちで行く」
「そっちは通信専用。できることはこっちのモコナと通信できるだけ」
黒鋼ちゃんが舌打ちした。うわっ、野蛮っ。
「モコナはあなた達を異世界に連れて行くけれどそこがどんな世界なのかまではコントロールできないわ。だからいつあなた達の願いがかなうのかは運次第。けれど世の中に偶然は無い。あるのは必然だけ。あなた達が出会ったのも、また偶然」
魔女さんが男の子の顔を見る。
「小狼、あなたの対価は…関係性。あなたにとって一番大切なものはその子との関係。だからそれをもらうわ」
「それってどういう…?」
「もし、その子の記憶がすべて戻っても、あなたとその子はもう同じ関係には戻れない」
ねちねちねちねち、男の子の癖に…。
小狼ちゃん、マイナス一点。残念でしたー。
二度同じ記憶を辿るのは結構なので、小狼ちゃんの話は聞き流す程度だった。
でも、最後の言葉は響いたかもしれないな。
「さくらは絶対に死なせない!」