二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.15 )
- 日時: 2010/11/28 16:58
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第五話 —猫と鬼 前編—
「零那。任務だって、玲生が呼んでる・・・・。」
詰まらなそうな李麻に苦笑し、零那は読んでいた本を閉じた。
ここで目覚めてから二年間、主に玲生や日下から戦い方を教わり、今ではZ屈指の戦闘員としてボスから期待されている。零那自身もZの役に立てる事を誇りのように思っていた。
「彼方も日下も、もう玲生の所行ってる・・・・速く行こ。」
「分かったわ李麻。」
立ち上がると、李麻が自然に手を握ってくる。
初めて会った時は怯えられていたが、今では実の姉のように慕ってくれる李麻や、兄のような存在の日下。文句を言っていてもいざとなったら助けてくれる彼方。いつも護ってくれる玲生とボス。仲間を護る事が、ボスの役に立つ事が零那の戦う理由。その為にアリスを使う事が、零那にとって至福となっていた。
「零那、行き過ぎだよ・・・・ぶつかっちゃう・・・・」
李麻に呼ばれ我に返ると、目的の会議室からかなり離れた壁に衝突寸前で李麻が腕を引っ張り止めていてくれている。
「あ、ありがとう・・・・」
「どうしたの?・・・・零那がぼっとしてるの珍しい・・・・・」
李麻はきょとんとした顔で近づいた。なんでもない と軽く流し、行きすぎた分の廊下を戻る。
会議室の中のは全員がそろっていて、長机の一番奥の席に玲生が膝を突き零那に目を向けた。
「待ってたぜ。」
「ごめんなさい。遅くなってしまったわ。」
「いいさ。時間もあるしな。」
玲生が手を振り、席に着くように促した。言われた通りにいつもの席に着くと玲生は体を起こし、スライドを映し始めた。
「今回、俺たちに言い渡された任務は護衛だ。」
「護衛?何で俺たちのチームにそんな任務が来るのさ?」
不満そうな彼方の物言いに、玲生は微笑した。
「まぁ待て。護衛って言っても簡単な物な訳ないだろ?狙ってくる敵は、学園の特殊任務部隊だ。」
「学園・・・・」
学園と玲生が言葉にした瞬間、零那のまとっていたオーラが急変した。声も低く、憎しみを露わにしていた。
「詳しい事は現場に着いてから話す。しっかりやれよ。」
「分かってるって〜。」
日下の緩い声が合図となり、各自準備を始めた。
棗は屋根の上にいた。
ペルソナから言い渡された任務内容は、Zの運用物資の奪取若しくは破壊。Zが派遣して来るであろう特殊部隊の殲滅だった。正直、殲滅の方は気が乗らなかった。
しかし、Zが関係しているとなれば話は違ってくる。Zと接触し、蜜柑の居場所を吐かせる事が棗の目的であり、みすみすチャンスを逃す愚かな真似など絶対にしない。
「難しい事考えてるのか?」
後ろから聞こえた声に棗は、眉を吊り上げる。振り返れば、案の定声の主である安藤翼が笑いながら近づいてきた。
「隣。いいか?」
拒否しても勝手に座って来るので、棗は黙っている事にした。二人とも何も話そうとしないが、暫くすると翼が話しかけた。
「あんま背負い込み過ぎるなよな。姉さんと流架ぴょんが心配してたぜ。」
「・・・分かってる。」
「なら、いいさ。」
「それだけか?」
立ち上がって伸びをしている翼に問いかけると、う〜ん と何かを考えてから、棗に向き直る。
「蜜柑の事、責任はねぇつってもお前は自分を責めるんだろ?俺なんかがお前達の事にああだこうだ言えた義理じゃねぇけどさ、蜜柑が見つかった時あいつが悲しむような真似だけはすんじゃねぇぞ。俺らも協力してやっから。」
「・・・・・あぁ。」
翼が 分かればいいさ と言った時、爆発音と銃声が響き渡った。
「ま、今は学園に帰る事に集中しようぜ。」
既に戦闘態勢に入った二人は翼の言葉と同時に、爆発音がした場所へと向かって行った。
玲生の指示に従い零那達は、学園部隊と交戦を開始していた。とは言っても実力の差は歴然で、学園側は少しずつ後退を余儀なくされている。
「なんだ。やっぱり簡単じゃん。玲生の奴何が簡単な訳ないだよ。」
「まぁいいじゃないか。簡単って事は、李麻と零那に負担を掛けない事なんだからさ。」
狐の仮面を被った彼方は、文句を言いながらも護衛対象に近づく人間を、有無を言わさず排除していく。それを日下が窘める。
「ふん。李麻の事は俺が護るし、零那は護られる奴じゃないじゃん。」
「まぁ・・・・そうなんだろうけどな。」
彼方は だろ? と詰まらなそうに答えた。と、突然頭の中に優しげな声が響く。
『聞こえてますよ月闇、草闇。』
「や、闇鬼ちゃん!!!!」
「今日はテレパスかよ。」
『高評価して頂けるのはとても光栄ですが、今は任務中です。私語は慎んでください。それと、任務中は決められた名前で呼んでくださいね。』
「・・・了解。」
不満そうな彼方の声に、零那はクスっと笑う。
『それでは・・・あぁ、彼方。』
「何ですか姫?」
『信じていますよ。李麻を護ってくださいね。』
「!!!!・・・当たり前。」
お願いします と言われ通信は切れた。
彼方は少し顔を赤くしながら、李麻の手を強く握る。それに気が付いた李麻はにっこりと笑いかけ、そんな二人を日下が暖かく見守った。
つづく