二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.16 )
- 日時: 2010/11/28 17:02
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第六話—猫と狐 後編—
「何か・・・・来るよ・・・・」
李麻の言葉に、日下が素早く反応し気配が動いた方向にアリスを放った。しかし、気配は尚も近づいて来ている。神経を研ぎ澄まし、タイミングを計る。影が見えた瞬間に二発目を放ち、敵の力を見定める。
「危ねぇな、あんたのアリス。」
影が見える林と逆方向から声が聞こえた。反響したのではないその声に、彼方も臨戦態勢に入った。
「あんたが、学園の特殊任務部隊?」
「特殊任務部隊?俺らってそう呼ばれてんの?」
「まぁいいよ。どうせここで消えるんだから。」
彼方は何処からともなく大鎌を出し、声に向けて思いっきり振る。周りに立っていた木は切り倒され、視界が開ける。
「隠れてないでさ、出て来たら?それともこのまま消そうか?」
「それは・・・・困るな。」
さくっと葉が潰される音と共に出てきたのは、Zの制服を着た人間だった。
「なっ!!」
「こっちだぜ。」
日下の驚いた声と重なって聞こえたのは、翼の声だった。油断した日下は振り上げられた足をガードするのが精一杯で、護衛対象から離れてしまった。李麻がフォローしようとするが、一度出来た隙を翼が見逃すはず無く、物資を入れた鞄は翼の手の中にあった。
「安藤・・・翼・・・・」
日下が悔しそうに呟く。
「俺の名前知ってんだ。あんたらが噂の特殊部隊?」
「さぁね?そんな事どうでも良いよ。その荷物置いてとっとと消されてくんない?」
「いや。だからさ、消されんのは困る訳よ。お前らこそ諦めて帰ってくんないか?」
「冗談。」
『待ちなさい!!』
彼方が大鎌を振り下ろそうとした時、大音量で零那の声が響いた。
「どうしたんだよ、闇鬼ちゃん。」
『任務終了です。今すぐ戦線を離脱してください。』
「・・・・了解。」
「李麻頼むよ。ほら、馬鹿草闇行くよ。」
既に彼方の手には大鎌は無く、日下を引っ張りながら翼に顔を向けた。
「任務は終了したらしいから大人しく帰るよ。今度会ったら、消すからそのつもりで。」
それだけ言い残すと、彼方達はテレポートで消えていき、翼は頭を掻きながらため息を吐いた。
「随分あっさりだな。」
棗の言葉に仮面を付けた零那は、にっこりと笑う。もちろん、その表情を棗が見られないことは知っている。
「任務は終了しました。ここにいる理由はもうありません。黒猫。貴方と戦う理由も。」
「!!!!その声!!!」
「?何か?」
棗の驚いた顔を零那は不思議に思う。
・・・何処かで会った事あるっけ?
「お前の顔、見させて貰う・・・・。」
棗は零那に向かって火の玉を投げた。
それを結界で防いだ時、爆風のせいでネックレスが千切れ棗の方に転がっていく。
「これ・・・・!!!」
それには、棗のアリスストーンが付けられている。
「!!!返して!!!!」
零那の攻撃を軽くかわすと、一気に距離を詰め、手を掴み仮面をはぎ取った。
「!!!!!」
「蜜柑・・・・!!!」
はぎ取った仮面の下に合ったのは、二年間探し続けていた蜜柑が居た。涙を浮かべながら自分を睨みつけて居ても、面影は記憶の中の彼女と違わない。
「なんで・・・お前が・・・・こんな所に・・・。」
「あんたなんか知らない!!!それを返して!!!!」
「なっ・・蜜柑!!!!」
零那が捕まれた手を振り払おうとする度に、棗は込める力を強める。
「蜜柑!!!!」
「蜜柑なんか知らない!!!!私は毛利零那よ!!あんたなんか知らない!!!蜜柑なんか知らないわ!!!」
「蜜柑!!!!!」
「知らない!!!知らない!!!」
棗は『知らない』と繰り返す零那に耐えきれず、その口を塞ぐようにキスをした。何が起こったか理解出来ず零那は目を見開いたが、次第にゆっくりと目を閉じた。数秒とも数時間とも感じられた時間の後、どちらともなく唇を離した。
「蜜柑・・・・・」
「あ・・・・・」
零那は、棗の紅い眼に引き寄せられた。そのアリスを象徴するかの様な眼を、何処かで見た気がする。
そう思った直後、零那は頭に激痛が走る。
「あ・・・あああああああああああああああ!!!!!」
「蜜柑!!蜜柑!!蜜柑!!!!」
苦しみ出す零那を抱きかかえながら、棗は零那の本当の名前を呼ぶ。
「あ・・・・嫌・・・嫌だぁぁぁぁぁ!!!!!」
零那の頭の中には、今までの記憶が止めどなくながれていた。
Zでの訓練。仲間の顔。初めての任務。そして、目覚めた日の事。いつもはそこで終わるはずが、見た事もない学園の風景に変わっていた。
親友を追いかけ入った学園。文化祭や体育祭。花姫殿。それらの風景の後に会った事もないけれど、とても懐かしい人達が浮かぶ。
自分の大切な仲間達。一番の親友。そして、ずっと側にいたい大切な人。
「な・・・・つめ・・・・」
「蜜柑・・・・?」
蜜柑の小さな声は棗に届いた。
「なつ・・・め・・・・・会いた・・・かったよぅ・・・・」
「あぁ・・・俺も・・・・蜜柑」
しっかりと蜜柑を抱きかかえ、棗は愛おしそうに名前を呼ぶ。
「後ろががら空きだぜ。」
その存在に気が付いた時はもう遅く、レイズの攻撃は棗に直撃した。
「たく・・。この俺の暗示を解くなんてな。嫌な予感したから、駆けつけてみれば案の定かよ。」
「く・・・・そ・・・・・」
「あぁ・・・動かない方がいいぜ。死にたいなら別だがよ。」
レイズの言う通り、攻撃を食らった部分からは大量に出血していた。
「俺を・・・・殺しに・・・来たの・・か・・・・」
「違う違う。俺の目的はこいつだ。」
「蜜柑!!!!」
いつの間にかレイズの腕に抱えられている蜜柑は、苦しそうに呻いていた。
「こいつが、まだうちには必要らしいからな。」
「何・・・・する・・・・気だ・・・・・」
「簡単さ。解けかけている暗示をまた掛ける。それだけだ。」
そう言うとレイズは、棗の目の前で暗示を掛け始めた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
「無理だ。もう終わる。」
蜜柑に置かれた手が光るのを止めると、呻いていた蜜柑は静かに眠っていた。
「じゃぁな、黒猫。」
レイズは“穴”の中に消えていった。
棗はその場で、気を失ってしまった。
つづく