二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.29 )
- 日時: 2010/12/04 12:27
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
あやのんさん
お手間を取らせてすみません・・・。
いつも見に来てくれて本当に感謝です。やっぱり読んでくれる人が居ると、励みになる。まだまだ、修行不足だけど、頑張りますね。
これからも宜しくです。
あんりちゃんさん
初めまして時計屋です。
ど素人ですが、温かく見守ってやってください。
宜しくお願いします。
第八話 —アリス学園へ—
玲奈を連れ会議室に来た李麻達を迎えたのは、玲生とここにいるはずのない『彼』だった。
「ボスがなんで・・・?」
「零那が心配でね。平気か?」
玲生よりも優しい声と仕草に、零那はふんわりと微笑み首を縦に振った。『彼』は安堵のため息を漏らし、更に優しい仕草で、零那の頭を撫でる。
「で?本当の用事は何なの?ボス。まさか、本当に零那の心配だけでここに来たとか言わないよね?」
噛みつくような彼方の視線に『彼』は、苦笑と射殺すような視線を向ける。彼方はその視線が隣に居る李麻に届かないよう庇いながら、真っ正面から『彼』と向き合った。瞬間、『彼』の視線から力が抜け、穏やかな目へと変わる。その変貌は驚くほど自然なもので、畏縮するほど有無を言わせない目だった。
「そう噛みつくな。ボスだって零那を心配してる事は確かなんだからさ。任務のこともあるしな。」
玲生は流れるように席に座ると、対峙している『彼』と彼方を面白そうに見た。
「・・それで・・・?任務って・・・・何?」
李麻は進まない話を進めようと切り出す。すると『彼』が思い出したように、持っていた封筒を玲生に投げ渡した。ばさっとテーブルに投げ出され、閉じられてない封の中から紙の束が広がりながら滑り落ちるように出て来た。その中の数枚を日下が手に取り数秒眺めると、驚いた顔で『彼』と玲生を見る。
「これって・・・どうゆう事ですか。」
「そのままのだよ。」
日下を横目で見ながら、『彼』はテーブルに広がる紙の中の一枚を拾い上げ、玲生以外の全員に見えるように掲げる。その紙には建物の写真と、その建物の説明と思われる文章が書かれていた。
「今回の君たちには、アリス学園に潜入して貰う。」
口元を引き上げた『彼』の目には、先程の穏やかな感情はなく、獲物を見つけた狩人の目があるだけだった。
「いきなり学園潜入かよ。ボスも人使い荒れぇ〜。」
「今更何言ってんの?あの人がどんな人か何て、あんたが一番よく知ってんじゃないの?」
「さぁなぁ〜。」
『彼』は学園潜入を告げいくつかの指示を出しただけで、自分の場所へと帰っていった。
「それにしても、零那ちゃんに姿を変えろだもんなぁ〜・・・。そこまでするかね実際。」
「やってんだからするんだろうね。」
「そりゃ〜そうだけどよ。」
彼方の冷たい返しにも日下は気にせず続ける。
『彼』が初めに出した指示は『零那の姿を変えろ』。これには、零那も玲生にも異存はなかったようで、直ぐに取りかかっている。隣の部屋に移動した零那達を彼方と日下は詰まらなさそうに待ち惚けていた。
「けど、なんでそこまでして零那を行かせるんだろうね。」
「なんでって?」
長年チームを組んでいた事のなせる技なのか、彼方の溢した小さ過ぎる声にも日下は反応し聞き返した。
「二度も暗示を掛けるほど捕らえておきたいのなら、要因になった奴に近づかせる真似しなければいい。下手したらまた思い出すかもしれないからね。けど今回あの人はその危険まで冒し、俺たちを学園に向かわせた。何か理由があるんだ・・・。そうまでして俺たちを学園に行かせたい何かが・・・・。」
「理由ねぇ〜・・・・。」
彼方は最早日下の存在を忘れているのか、一人でブツブツと何かを言っている。そんな彼方の扱いを心得ているのか、日下はそれ以上突っ込まなかった。
「終わったよ・・・・。」
部屋に響いたか細い声に二人は顔を上げると、李麻と零那と思われる少女が扉の前に立っていた。
「零那ちゃん・・・・だよな?わぁ〜化けた化けた。」
「日下なに馬鹿言ってんの。姿変えたんだから当たり前。」
「玲生が用意でき次第学園に向かえと言ってましたよ。行きましょう。」
感心している日下と冷静な彼方に零那は笑いながら指示を出し部屋を出て行く。それに伴い、二人も任務のため部屋を後にした。
例の如く自習の中等部A組は今日も今日とて騒がしかった。棗達三人が居ない教室内の騒音は最早止める術がない。
「皆さん静かにしてください!!私が怒られるんですよぉ〜。」
副担任の泣き言に耳を貸すものなどおらず、室内は無法地帯とかしていた。現在唯一の助け船である委員長こと飛田祐も、この騒音の中でしっかり自習に取り組み、副担任の言葉すら聞こえては居ない。
「うううっ・・・・。」
「何泣いてるんです?先生。」
憐れな副担任の前に救世主こと鳴海先生が登場した。
鳴海は教室内を一瞥すると大きく手を打ち、全員の視線を自分に集めた。
「はいそこまで。これ以上騒がしくすると、僕のアリスで大人しくして貰う事になるよ?」
身の危険を本能的に感じ取った初等部A組の面々は、驚くほどの速さで指定の席に座る。
「うんうん。みんな良い子で僕は嬉しいな。」
満足そうに頷く鳴海は、生徒から向けられる視線に気付かないふりをしていた。
「ところで棗君達は?」
「まだ来ていません。」
「う〜ん、しょうがないねぇ〜。」
委員長の返答に鳴海が困った顔を作った時、後ろのドアが開き棗達三人が入ってきた。
「これで、全員かな?それじゃあ、転校生を紹介するね。」
転校生と聞いて騒めく室内に、アリス学園の制服を着た零那達が入ってきた。
「はい、三人とも自己紹介をして。」
「初めまして。木城零那と言います。宜しくお願いしますね。」
鳴海に促され、零那が話すとより一層騒がしくなる。
「静かに静かに。はい、次。」
「・・・国元彼方・・・。」
面倒くさそうに彼方が名乗ると、パーマを筆頭とした一部の女子が黄色い悲鳴を上げる。その悲鳴に怯えて李麻が彼方に隠れると、彼方は根源であるパーマを睨み、騒音をかき消した。
「ほら、李麻も。」
「・・・木城・・・李麻・・。」
おどおどと話す李麻に一部の男子から、歓声が上がったが、彼方が殺気を向けると畏縮した。
「うん。じゃみんな仲良くね。」
鳴海だけが場の空気から浮いた声で、締めくくった。
つづく
やっと折り返しです。
ここから、話が盛り上がっていけばいいかなぁ〜と思っています。
そして、出してしまいました彼を。
自分は、コミック派なので、詳しくは知りませんが、柚香と対峙した彼に心ときめくものを感じました。かっこいいですね。