二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.45 )
日時: 2010/12/12 11:24
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

おはようです。
蜜柑の使い道については玲生に説明させる予定なんです。責任は彼に取って貰いましょう。ここまで予定ずれたのも彼のせいです。玲生をここまで引っ張る予定無かったんだけど・・・・見事登場シーンを増やしています。
設定としては玲生はボス大好きですよ。うざいほど尊敬しているというのが希望です。基本ボスの命令には逆らわないけど、今回は・・・ってのが良いですね。

あやのんさんが教えてくれたスレ見てみました。
あれですね、作品は違えどって感じ。ここまで符合すると怒る気も無くなります。
でも、いいですよ。どんな考えが作者の方あったかは分かりませんが、自分はこの作品で頑張りますから。それに、あやのんさが心配というか教えてくださっただけでも、すごく嬉しかったので。平気です。
では、話の方に行きますね。


第十四話 —始動—

 歯車は回り出した と『彼』は言いました。
 
 それはそれは、嬉しそうに。
 
 運命なんだ と『少女』は言いました。
 
 それはそれは、悲しそうに。

 答えを欲し、存在を探し、行き場を失い、されど彼らの瞳は揺るがず
 抗い、戦い、叫び、されど回り出した螺旋の時は止まる術を知らず

 捲られた御伽噺の幸せを 満ちる月に祈りを馳せ
 失いたる記憶を 彼の地へと託す


その日は日常だった。少なくともその他大勢にとっては。例に漏れた零那達も普段道理に振る舞い、誰一人として影で進行されいる計画を知るよしもなかった。

「木城さん。」
「何かしら?」

零那の微かな変化も彼方達ならいざ知らず、訓練されていない一般人であるA組メンバーに感づく者など居ない。
委員長は棗達の話を気にながらも、努めて明るく零那達に接している。

「昨日のドッチボール、どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。折角、親睦の為に企画して貰っていたのに・・・・。彼方のお兄さんが来てくれていたんです。日下さんもアリスで学園に入っているので。きっと心配してくれたんだと思います。」
「そうだったんだ・・・・。」
「ごめんなさい。ご厚意を無駄にしてしまって・・・。」
「ううん、気にしないで。折角兄弟が近くに居るんだもん。会いたくなるよね。」

一片も疑っていない委員長に彼方は、呆れたようにため息を吐く。長年学園で育った経験か、或いは優しさからか、それに気付いても委員長は言及せず、クラスの輪に戻っていった。

「お気楽者。」
「仕方ないわ。彼らは私達と違う世界に住んでいるのだから。」

毒ずく彼方を諫め悲しそうに零那は委員長達を見つめる。

「・・・羨ましいの?そんな世界に住んでるあいつらの事。」
「・・・・いいえ。この道を歩むと私が決めたの。」

彼方には珍しく零那を気遣うように聞いてくる。それに驚きつつも嬉しさが込み上げ、零那は微笑み否定した。
その時、スピーカからけたたましいほどのサイレンが鳴り響き、乱暴に鳴海がドアを開け入ってきた。

「どどどどどうしたんですか鳴海先生。」
「たった今外出禁止令が出されました。副担任先生、生徒達を避難させましょう。」

必要以上に冷静さを欠いた副担任に対し、鳴海は宥めるように、指示を飛ばす。それに従い生徒達が教室から出ようとした時窓ガラスが割れ、黒服の集団が押し寄せた。

「逃げられちゃ困るんですよ。ナル先輩。」
「玲生・・・・・。」
「てめぇ・・・・。」

鳴海達にとっては聞き慣れた玲生の声に、棗がアリスを発動させた。絶妙なコントロールのため、玲生だけを炎が囲む。慌てる側近とは対照的に玲生はその顔に余裕すら見える。

「闇鬼。」
「はい。主様。」

呼ばれた零那は、躊躇うことなく棗を結界で囲む。負荷が掛かった棗は膝を突き、それと比例し玲生を囲う炎も徐々に弱まり、焚き火ほどの大きさになる。

「結界で制御しても、ここまで炎を出せるか。成長したんじゃねぇの?黒猫。でも、足止めすら出来ないけどな。」

嘲るように炎を踏みつぶし、一歩ずつ棗に近づく。

「それ以上、動かないで。」

棗から蛍に視線を移すと、バカン砲の標準を玲生に合わせ零那を睨みつけていた。

「信じていた訳じゃないけど、騙したわね。」

睨みつける蛍に、無邪気な笑顔を向ける。しかし、纏う雰囲気はあの時と比べられないほど殺気に満ちていた。

「嘘は言っていないわ。命令されて侵入していたのは事実だし、平穏無事にって言うのも本当よ。ただ、Zからとは言わなかったけど。」
「・・・・。」
「主様。アリスを解く許可を。姿隠しを使っていてはフルパワーは難しいので。」
「・・・・・いいだろう。」

蛍が押し黙ると、背を向け玲生に許可を仰いだ。
間は有ったものの肯定の言葉に零那は満足げに頷き、アリスを解いていく。
光に包まれ少しずつ変わる姿に、A組メンバーは驚きを隠せないで居た。
黒かった髪は栗色に変わり、背丈が徐々に縮んでいく。光が消え去る頃には、零那の姿は既に蜜柑のもへと変貌を遂げていた。

「み・・・・かん・・・・。」

固まっているメンバーの中で唯一棗がその音を発した。聞こえた名に零那は顔を顰める。

「私は、毛利零那。学園に復讐を誓った者。蜜柑などと私を呼ぶな。」

毅然とした態度は、確信から出るものに違いない。
零那は、蜜柑としての記憶を失っている事も忘れ、玲生によって作り上げられた虚偽を真実として疑っていない。

「蜜柑!!!何言ってんだよ!!!」

棗は、二度突きつけられた事実を信じられずに何度も蜜柑と呼ぶ。まるで、呼べばまた自分の事を思い出してくれると言うように。
しかし、零那は顔を顰めるだけで蜜柑としての自分を思い出す兆しも見えない。その事に玲生は満足し笑う。

「闇鬼。北の森で日下と落ち合え。」
「了解。」

玲生の指示に従い、割れた窓から飛び降りる零那達に棗は奥歯を鳴らし、悔しそうに玲生を睨みつけた。

「全ては回り出したのさ。黒猫。」

玲生は哀れみと蔑みと諦めが交ざった表情を棗に向けた。

その言葉の意味は まだ誰も知らない


つづく