二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.48 )
日時: 2010/12/13 19:17
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

リラ様
コメントありがとうございました。
なかなか思うように進まず、悪戦苦闘中です。
これからは、動きのある描写が増えてくるので、悩みは尽きません・・・・。
今後も応援よろしくお願いします。

今回は本編でなく番外編を書きたいと思います。
李麻と彼方の出会いです。進行役は彼方君です。
では、スタート。

番外編 幼き日の出会い —初めまして—

玲生に呼ばれるのは至って珍しくない。
あいつは俺たちのリーダーであり、不本意ながら俺の育ての親だから。けど・・・・

「一時間も待たせるとかありえないでしょ。」

そう、ありえない。人としてどうかしている。親しき仲にも礼儀ありと教えたのは確かあいつの方だった。なのに、この仕打ち。帰って良いかな?
馬鹿馬鹿しくなり帰ろうとしたところ、タイミング良くドアが開いた。

「なんなの。」
「悪いな。」

少しも悪いなんて思ってないでしょ。
笑いながら謝る玲生に内心で毒づくも、相手には伝わらない。こうゆう時、自分のアリスがテレパスだったらなんて、どうしようもない事を考える。
そもそも、テレパスだったらここに捨てられてはいないよな。

「・・・謝るより、用件を言いなよ。呼び出しとかして、面倒この上ないね。」
「そう言うなって。用事はこいつだよ。」

玲生の後ろから現れたのは、自分と同い年位の女の子だった。怯えきって見上げる目は、幼い頃の自分と重なる。
初めての任務で初めて人を傷つけた日、鏡に映った自分は怯えていた。
分かっていたつもりだった。任務がどうゆう物か。人を傷つける事がどうゆう事か。聞かされていたし、納得もしていた。今だって後悔はしていない。
それなのに、何だってこの子はあの時の自分と重なるんだよ。

「何この子?まさかあんたついに幼児趣味に走・・・・」
「んな訳ないだろ!!!!!」
「冗談。本気にしないでよ。それで?俺が呼ばれた理由は?」
「この子の世話をお前に任せる。」

はい?

「聞こえたか?この子をお前が世話しろ。」

あんたの声は嫌でも聞こえるよ。いや、突っ込むべき所はそこじゃない。世話ししろって言ったのか。俺に?

「はっ!それこそ冗談。子供の世話なんて俺に出来るわけ無いでしょ?」

俺だって暇な訳じゃないしね。

「仕方がねぇだろ。適任者が居ねぇえんだから。」
「日下に頼めばいいじゃん。如何にも子供好きって顔してるし。」
「生憎日下は任務中で居ねぇんだ。お前が面倒見るしかねぇだろ。」
「嫌だね。あんたがやれば?」
「命令。」

うわ、卑怯だ。命令なら聞くしか選択肢無くなんのに。

「それに、俺なんかよりお前の方がこいつの事理解できんだろ。」

似合わずシリアスな雰囲気出しやがって。やっぱムカつく。

「じゃな。」

玲生は厄介な置き土産を残して、帰って行った。
仕方ねぇよな・・・。

「・・・俺彼方。あんたは?」
「・・・・木城・・・・李麻・・・・。」
「そ。まっ、よろしく。」
「・・・・・。」

なんだ?こいつ。ま、為るようになんだろ。

これが、俺と李麻の出会いだったんだ。
仕組まれたと言えばそうなんだろうけど、この時は未だ知らなかったんだ。
自分の非力も、あいつの思惑も、そして李麻自身の事も。なんにも知らなかった・・・。


玲生から李麻を預けられて一週間たった今。大きな任務はなかったし平穏な日々を送ってるんだろうけどさ、一つ言いたいんだけど。

「・・・・あんた、口あんの?」
「・・・・・・。」

こくんと頷くだけの会話なんて有る?
この一週間、李麻は言葉を知らないんじゃないかって思うほど、全く喋らない。何かしたければ指さして教えるし、こっちが何か言えばさっきみたいに頷くか首を振る。あまり、自己主張をしないから支障はないけど、やっぱり少し気になる。

「・・・李麻。なんで、喋ん無いの?」

何度もした質問をすると、悲しそうに首を振る。それが、拒絶の意味だと分かったのは玲生に言われたからだ。
アリスのせいで親に売られたとは聞いた。そのアリスが言霊というのも。李麻のアリスは自身の発した言葉の力で物に何かしらの作用をもたらすものだという。実際に見た事無いけど、玲生が言うには、言葉の意味を正確に理解し、込められた想いと願いを感じ初めて使えるらしい。逆を言えば、それすら理解してしまえば、人を傷つける事も可能で、それ故言葉を出す事に対して、怯えがあるのだという事だった。
正直下らないと思う。力を恐れればそれで終わってしまう。向き合い受け入れていかなければならないのに。否定したからと言って、無くなる訳じゃない。

『李麻、彼方。会議室まで来てくれ。』

スピーカーから聞こえた玲生の声に訳も分からず、不安になった。


つづく

長いので前後編に分けました。