二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.49 )
- 日時: 2010/12/13 19:14
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
続きです
番外編 幼き日の出会い —約束するよ—
玲生から言い渡されたのは、敵対勢力の排除。少数だから今回は李麻も連れて行けって無茶だよね。ま、実際は俺が戦って李麻が援護。初日の様子見ってとこでしょ。
「李麻。余計なことしなくていいから。」
こうゆう時李麻の性格は楽で良い。勝手にやられると邪魔になるしね。
そんなこと考え目の前の敵を一掃しようと武器を振り上げた時、後方から衝撃が来た。幸い直撃は免れたけど、ノーマークの背後からだったため防御が間に合わず、足を痛めてしまった。まずったかも。
敵は、獲物を捕った気になっているのかにやにやしながらゆっくりと近づいてくる。
「李麻。俺の事置いて逃げろ。」
俺の失態で李麻を殺すわけにはいかない。命令し、逃げるまでの時間稼ぎをと思い、起きようと足を引きずる俺の前に李麻が庇うように立ちふさがる。その行動に敵も驚いていたが、何より俺が一番驚いた。
いつもなら命令には従うのに、何で・・・?
「李麻!!!逃げろ!!!!」
「・・・嫌!!!!」
聞こえなかったのかと思い、もう一度声を張り上げると、今度は明確な拒否の言葉が返ってきた。
聞いた事がなかった李麻の大声と、強い言葉に何も言えなくなる。
止まっていた敵も、李麻の声で我に返ったのか、今度は李麻に向かってアリスで攻撃してくる。
「避けろ!!!」
「平気・・・。」
俺の声に振り向かず、李麻は声だけで返す。
すぅと息を吸い込むのが聞こえた。
『消』
李麻の声は何処までも澄み切っていて、鈴の音のように小さく波紋する。すると、今まで存在していたアリスが音もなく消えた。敵は何が起こったのか分からないと言うように目を見開き、焦りながら何度もアリスを放つが、すべて形になる前に消える。
『失』
また李麻の声が波紋すると、目の前に立っていた敵が一人残らず、倒れた。
「あれが、あんたのアリス?」
「・・・うん・・・。」
倒れた敵を迎えに来た黒服に渡し、帰還した部屋の中で、李麻にあの時の事を聞く。悲しそうに俯きながらも声を出し答えてくれた事に、嬉しくなった。
「言葉だけで何でもできんだ。」
「・・・全部じゃないよ・・・。私が・・・本質を理解して・・・願いを感じ取れた言葉だけ・・・・。」
「あれも?」
「・・・負の言葉は・・・本質も願いも分かりやすいの・・・・。誰にでも在るから・・・。」
「へぇ〜。」
「・・・私のアリスは・・・傷つける事しか・・・・出来ないの・・・。お母さんの時も・・・・傷つけるだけで・・・怖くて・・・こんな私・・・嫌だよ・・・・。」
涙を必死に堪える姿は儚くて、消えてしまいそうで、とても愛しかった。
「・・・俺は、守られた。」
「・・・彼・・・方・・・?」
「俺は、李麻のアリスで守って貰えたよ。」
「・・・・・。」
それでも、涙を流さない李麻を優しく抱きしめる。
消えてしまわないように。壊れてしまわないように。
「俺は、好きだよ李麻の事。李麻のアリスも李麻も大好きだ。」
「・・・でも・・・いつか傷つける・・・。そしたら・・・彼方も・・・・離れ・・・・て・・・・」
悲痛なほどか細く消え入りそうに、自分を責める李麻に、抱きしめる腕を少し強くする。
「離れないよ。俺は李麻から離れない。ずっと一緒にいる。死ぬまで抱きしめてる。」
「・・・でも・・・・」
「俺を信じて。李麻に、李麻のアリスに守って貰った。だから、今度は俺が李麻を守る。ずっと側にいて、李麻を守るから。」
「・・・・彼・・・・方・・・・。」
「消えたりしない。離れもしない。ずっと大好きだから、側にいて?李麻。」
堪えきれなくなった李麻の涙が溢れだす。
どれだけ隠していたのか。どれだけ堪えてきたのか。
声を張り上げ泣きじゃくる李麻の背をさすりながら、李麻を守りたいって強く思ったんだ。
「やっぱり正解でしたね。」
「そうだな。」
玲生の言葉に『彼』満足そうに頷き、モニターを見つめる。
「貴方が買ってきた時はどうなるかと思いましたよ。ホント子供の世話は苦手ですから。」
「彼方の時は楽しそうだったぞ。」
「勘弁してください。ちっとも言う事聞かなくて大変でした。」
「そのおかげで彼方が使い物になっただろう。」
「・・・俺は疲れただけですけどね!!!」
玲生の反論も『彼』に取っては、意味など無い。
誰であろうと『彼』を変える事など出来はしないのだから。
「それで?李麻も使い物になりそうですか?」
「あぁ・・・・とてもな。」
「それは良かった。」
『彼』モニターの中で、仲良く寄り添って眠る彼方と李麻をほくそ笑んで見ていた。
おわり
終わりました。
この話は彼方君サイドだったので李麻の方も書ければと思います。