二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.52 )
日時: 2010/12/15 16:34
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

こんばんは?かな。
前回は李麻と彼方の話を書きましたが、本編と深く関わりがあると言うわけではなく、お気に入りになりつつある二人の、初々しい出会いを書いてみたいかなぁと思い書いた物です。設定は作品を書き始めた頃から有ったのですが、文章にする作業に戸惑ってしまい後半になってしまった次第です。
さてさて今回は、やっとこさ本格的に作戦が動き出します。それにつきまして、自分は動きを書くのがものすっごく苦手です。想像力をフル活動して、書きますが伝わらない部分も有るかもしれません。なにとぞ、ご容赦ください。
注意!!
今回は、場面の関係上暴力的表現を使用するかもしれません。


第十五話 —必然の出会い—

必然だったのかな?
私がここに来る事も。貴方に出会う事も。
全て仕組まれた事だったんだよ。
頬を濡らす涙も、胸を突き刺す痛みも。
きっと神様が仕組んだ 滑稽な舞台だったんだ・・・・・・。


学園内では既にZと学園の攻防が繰り広げられていた。至る所から爆発音やアリスの光、人の叫び声が響き渡り異様な雰囲気を演出していた。
その中を零那達は指定された北の森まで駆け抜けている。日下に連絡が出来ない以上、落ち合う場所まで急がねばならなかった。

「零那・・・・良いの・・・・?」
「何が?」

李麻は隣を走る零那を見上げ、確認をする。それは、零那を気遣うものであり、踏みとどませようとしているのかもしれない。しかし零那には李麻の真意が伝わらず、本気で何を言いたいのか分からないと言った声色で聞き返してきた。彼方が李麻をちらっと見たが、気にせず李麻は続ける。

「・・・・・・学園と戦っても・・・・・良いの・・・・・?」
「当たり前。この二年間この日を待ち望んできたんだもの。」
「でも・・・・・・あの時の零那・・・・・・・悲しそうだった・・・・・よ?」
「あの時?」

目的の場所に着き、零那は足を止め李麻が示した時間帯を探すが思い当たらない。

「・・・・・・教室から出る時・・・・・日向棗に・・・『蜜柑』って呼ばれた・・・・・。」
「・・・・・悲しかった訳じゃないわ。本当よ。」

否定しても李麻は未だ納得出来ない目で零那を見上げる。その視線に耐えきれず零那はため息を吐いて、少し俯いた。

「ただ・・・・・・懐かしい気がしただけよ。何処かでそう呼ばれていたのかもって思ったの。」
「・・・・零那・・・・・・」
「心配しないで。私は平気。今は学園に復讐する事が私の目的だから。」

李麻が何かを言いかけたのを遮り、零那は明るく振る舞い安心させるように微笑んだ。悲しそうに俯く李麻の手を彼方が握り、李麻は口を噤んだ。

「みんな、揃ったか?」

いつの間にか日下が木にもたれかかった姿勢で、零那達の目の前に居る。その顔は真剣そのもので、普段の彼からは想像出来ないほどの殺気が、学園に向けられていた。

「遅かったね。何かあったの?」
「いろいろとな・・・。」

彼方の質問に疲れた声で返す日下には余裕が感じられず、強敵に遭遇した事を伝えるには十分すぎるほどの緊迫感を与えられる。森の中に他人の気配はなく、少なくともここは安全だと思いこんでいた零那達の頭と感覚が一瞬で切り替わった。五感を研ぎ澄まし、アリスをいつでも使えるように戦闘態勢に入る。
かさっと木の葉が擦れる音が日下の背後から聞こえ、一斉にその音との間合いを開け敵の存在を確かめる。

「出てこいよ。」

鋭い日下の声に、徐々に気配が近づくのが零那達にも伝わった。木の葉の音が聞こえる度、緊張が体を駆けめぐる。木の葉の音と共に現れた安藤翼は、零那の姿を見つけ目を見開いた。

「蜜柑・・・・・・・・何で・・・・・・?」
「私は毛利零那よ。何度も何度も『蜜柑』なんて名前で呼ばれて、鬱陶しいわ。」
「お前・・・・・。」

零那の口調とその態度から、大体の状況を把握した翼は即座に視線を零那から日下に移す。

「てめぇら蜜柑に何した・・・・!!!」
「さっきから言ってんだろ?こいつは零那だ。」
「ふざけんな!!!!!」

怒声と共に零那達の方へ木が倒れてきた。見れば影が不自然に歪み、その先に翼が立っている。

「なるほど・・・・・影使いって訳ね。」

彼方は倒れてきた木に跳び移ると、思いっきり蹴り飛ばし、その反動を利用して間合いを詰める。

「けど、甘いよ。あんな大きなもの、隙作るだけでしょ。」

アリスでナイフを作りそれを翼の懐へ突き刺そうとしたが、鳥の妨害により叶わなかった。

「邪魔」

彼方は頭上を飛ぶ鳥の群れを見上げ垂直に跳び、群れを成していた鳥の数匹を持っていたナイフで斬り殺した。

「なんなんだよ。いきなり。」

墜ちた鳥を見下ろしながらも気配を探ると、翼以外の気配が森の中に入っていた。その気配の方にナイフを投げると、火の玉が返ってきた。

「居るんだろ?出てきなよ黒猫。」
「棗!!」

彼方の言葉に驚いた翼が振り返ると、息を切らした棗と流架、蛍の三人が彼方を睨みつけていた。

「来るとは思ってたけど、結構速かったじゃん。玲生達まさか手抜いたの?」
「うるせぇ・・・・蜜柑を返しやがれ!!!!」
「だから、こいつは零那。耳付いてんの?」

呆れた口調の彼方を棗が炎で囲む。

「・・・李麻、頼む。」
『消』

李麻の声が波紋すると、棗の炎が跡形もなく消える。

「なっ!!!!」
「何驚いてんの?自己紹介したじゃん。」

驚いた一瞬の隙を彼方は見逃さず、さっきよりもスピードを上げ、棗との距離を0にする。

「俺のアリスも零那が言ってただろ。」

彼方は新しいナイフを創り出し、今度は下から上に振り上げたが、一瞬速く棗が身を引いたため肩をかすめる程度だった。
棗はそのまま重力に逆らわず後ろに倒れる。殺気を感じ、彼方が棗から棗の後ろに移った蛍に視線をずらす。バカン砲を構えた蛍は、棗の奥に彼方が見えた瞬間それを放つが、彼方も持っていたナイフで飛んできた球を切りやり過ごす。

「結構やるじゃん。」
「黙れ。」

余裕の表情を見せる彼方を棗は憎らしげに睨む。
棗の必死さに彼方はふっと息を漏らし、棗に近づいた。

「諦めなよ。蜜柑はもうこっち側の人間だからさ。」
「なっ・・・・・!!!」

棗にしか聞こえないように囁くと、動揺した棗の腹部にナイフを刺した。

「お前の負けだよ。黒猫。」

食い込んだナイフの柄から赤い血が流れる。止まることなく流れ続けるそれを、零那が固まった様に凝視する。ぐらっと棗の体か揺れ、その場に力なく倒れた。

「な・・・・つめ・・・?棗ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

響き渡る零那の声は、森にこだました。


つづく