二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜10話更新 ( No.17 )
日時: 2011/05/25 23:00
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

11話〜サクラの魔法〜




「じゃあ、サクラは一年前にギルドに来たんだ」

「うん」

目的の場所に向かう馬車の中、3人はお互いの事を話していた。

「シャーナは?」

「私は物心着く前にはギルドにいたかな」

「そんな前からいるんだ」

シャーナの言葉にシトが少し驚いた表情を見せる。

「そ!私にとってフェアリーテイルは家族なの。仲間との意味でも、本当の意味でも。
血が繋がって無くても家族と呼べる事、シトなら分かるよね」

「・・・・うん」

シトにとってザルチルーニは紛れもない親だ。言葉を、魔法を、そして生き方を
教えてくれた父さんだ。そこはシトも共感できる。

「私も分かる・・・・・かな」

「え?サクラも?」

サクラの言葉にシトが反応した。サクラは膝を抱え、
何か大切なことを思い出してる顔をしている。その顔に柔らかな笑みが零れる。

「私も『人じゃない親』に育てられてるから。シトの気持ち、よく分かると思う。
種族とかそんなのは関係ない、親子の絆」

人じゃない親と言うのがシトは気になったが、聞きそびれてしまった。
話終わった後、サクラが顔を膝に埋めてしまったからだ。
思い出の中に何か思い出したくはない記憶があったのだろうか。

それを見てシトも早く自分の抜けている記憶を見つけようと思った。
無くても困ることはないかもしれないが、思い出さなければいけないことがあるような気がするのだ。

—ズズゥン!!—

「何!?」

馬車が急に傾き、中が荒れる。そんな中最初に起き上がったのはシャーナだった。
シャーナは状況を確認するべく外へと出た。
するとそこには馬が地面にめり込み、馬車使いが前に飛び出した形で、
同じように地面に這いつくばっている。

「いけない!!」

シャーナは直ぐに辺りの重力場が乱れていることに気が付き、それを正常に制御する。
それにより馬も馬車使いも一命は取り留めた。

「あ・・・ありがとうございます!!馬を走らせていたら突然、ウマが前のめりに崩れてしまって」

「可笑しいな〜〜。情報じゃあ重力場も範囲はまだ大分先なんだよね」

「・・・・重力場が拡大してるってこと?」

顎を摘まんで考えるシャーナにシトが言った。それに反応したのはサクラだった。

「だったら急いだ方がいいかも」

「確かにね。これ以上は馬車じゃ行けないし。それじゃあいこっか」

「ちょっと待った」

いざ行こうとするシャーナを止めたのはシト。それにシャーナがむくれっ面になる。
シトはそれを宥めてから口を開いた。

「ここから先は高重力場なんしょ?重力で反発できるシャーナや、
重力場を消せる僕はいいけど、サクラは大丈夫なの?」

「私なら大丈夫」

サクラはそういうと、歩き出し重力場の中へと一人で入っていく。

「ちょ・・・・」

シトが止めようとするが、それをシャーナが止める。

「大丈夫」

シャーナはそう言って、サクラの方を指差す。シトがそちらを見ると
サクラの足元からピンクの花びらのようなものが浮き上がってきた。

「・・・・・」

シトはその花びらと、それに囲まれているサクラに見惚れる。それを見て、シャーナが呟いた。

「あんま見惚れないほうがいいよ」

「え?」

言葉の意味が分からずシトが振り向くと、シャーナは言葉を続けた。

「サクラの魔法はその花びらに魅せられたものが花びらに触れると、
絶対にさけなければならなくなるの」

「・・・・意味がよく分からないんだけど」

シトの言葉にシャーナは少し考えた後、口を開いた。

「ほらっ、人って熱いものに触れると反射的に手を引くよね。
それと同じであの花びらに魅力を感じる人は、触れることを畏れて反射的に避けるの。
・・・・例え自分の体が裂けようとね」

「けど、それと重力場を防ぐのって・・・・」

シトが納得いかないような表情でそう言うと、シャーナはシトに指をさした。

「話は最後まで聞く!
サクラの魔法の凄いところは人だけじゃなく、植物、魔法、はたまた空気なんかにも
花びらを魅せることが出来るってこと。勿論、重力にもね。
だから、今は魅せられた重力場が反射的に花びらに囲まれてるサクラを避けてるってこと」

「・・・・凄い」

「だから、あんま見惚れてるといざって時ズタズタになっちゃうってこと」

「・・・・恐ろしいこと笑顔で語んないでよ」

「二人とも、何してるの?」

何時の間にか二人の傍に来ていたサクラが不思議そうな顔で尋ねた。
シトはその足元から花びらが出ていることに、少しおっかなびっくりする。
それを見てサクラは少し首を傾げた後、原因が分かると薄く笑った。

「大丈夫。仲間を傷つけるような真似はしないから」

「そ・・そう」

「そんじゃ。改めて出発しよ!」