二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/01/26 17:44
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
2話〜シャーナ〜
「は〜〜ぁ〜〜」
シトはギルドの屋根にいる。理由は簡単。ギルドの中は人が一杯で嫌だから。
自分で承諾しておきながら、その直後に後悔。本当ならこのまま逃げ出すこともできるが、
そんな事はしたくはない。一度決めた事は最後まで貫き通すのが男だ。
それは、ザルチルーニから教えてもらったことの一つ。
シトが屋根でごろごろしていると、そこに小鳥がやってきた。
と、シトの表情ががらりと変わった。人懐っこい顔で、小鳥で手を差し出す。
小鳥はそれを見て、その手に乗っかった。
「お前、一人なのか?仲間は?」
シトがそう語りかけると、しばらくしてシトの周りに十数羽の小鳥が集まった。
それを見て、シトは嬉しそうに笑った。
「これ皆、お前の友達なのか〜〜!凄いなお前。・・・・・え、僕?
・・・・僕には友達なんて一人もいないんだ。それに人間の友達を作りたいとも思わないしね」
一人で小鳥に話しかけるシト。小鳥が不思議そうに首をかしげると、シトは笑った。
「あははっ!お前には分からないか。そうだよな。お前たちと・・・・」
「こんなところにいたのね」
—バサバサ!—
屋上にもう一人の客が現れた。そのせいでシトに群れていた小鳥たちは飛んで行ってしまった。
シトはそれを残念そうに見送ると、やってきた客と距離を取りつつ、目を向けた。
性別は女性。容姿は端麗な方。少し荒っぽい服装とその容姿はミスマッチのようで良く合っている。
「もう怪我は大丈夫なの?」
「まあね。ところで、何の用?」
シトが素っ気なくそう言うと、女性ははぁ〜〜とため息をついた。
「君、命の恩人に対して、そんな言葉づかいはないんじゃないの?」
「・・・・じゃあ、あなたが僕を?」
「ええ、そうよ。感謝しなさい。君、あのままだったら確実に死んでたからね」
「・・・・余計な事を・・・・」
シトがそう呟くと、女性は不服そうにシトの顔を覗き込んだ。
「余計な事?」
「別に僕は助けてくれなんて言ってないでしょ?それなのに勝手に助けたりして。いい迷惑だよ」
普通ならここで女性は、折角助けてやったのに何だその態度は!?とか言うはずだが、女性は軽く微笑むと、
「それは御愁傷様ね。ま、助かった命なんだから、やりたいことでもやったらどう?」
と、何とも思っていないかのような口ぶりでそう言った。
「・・・やりたいことなんてないよ」
「嘘は心に良くないよ。君、無の竜・ザルチルーニの事が気になってるんでしょ?」
シトは少し表情を変える。それを見逃さなかったのか、女性は笑うと、
「やっぱりね。君、あの時無の竜の名前出した時、とても悲しそうだったから。
もう一度会いたい。そんな感じが伝わってきたから」
女性は自分の胸に手を当てて言う。本当にシトの気持ちが自分に伝わったかのように。
「・・・それに私が君を助けたのだって、ただ単に大怪我をしてたからってわけじゃないんだよ?」
「??」
シトが首をかしげると、女性はくすくす笑いながら手を口元へと持っていった。
「君自身は気付いてないんだろうけど、君、倒れてる間『ザルチルーニ』って何回か呟いていたのよ?
この子には大切な人がいるんだ。そう思ったら、いつの間にか君を助けようって思ったの」
「・・・・・」
「君、今までザルチルーニを探すために生きてきたんでしょ?」
「だったら何?」
「じゃあ、私もそのザルチルーニ探し、手伝ってあげる!」
「ええ!?ま・・待ってよ!あなたには何も関係ないじゃないか!!」
突然の申し出に戸惑いつつも、シトはなんとか返答した。
「成り行きとはいえ、私がギルドに連れて帰った君がギルドに入ったんだもの。
そんな君を一人にしとくわけにいかないでしょ?
だから、君はこれから私とチームを組んで、一緒に仕事して、ザルチルーニを探すの」
一方的に話を進める女性。それにシトは無表情で一つ質問。
「それ、僕に決定権は?」
「ないよ」
即答。シトは心の中でため息をつく。これだから人は嫌いなんだ。
「・・・と、そういえばまだ私、名乗ってなかったよね。私はシャーナ。よろしくね」
そう言って手を差し出すシャーナ。だが、シトは別の事を考えていた。
自分は今この女性と普通に会話していると。人が嫌いなのにどうして、今距離を取りながらも
普通に話しているのかと。ギルドに入った事によって、自分の心に変化があったのか、
それともこのシャーナが相手だからか・・・。
「どうしたの?」
何時までも動こうとしないシトに、シャーナが近づく。と、シトは頭に何かが浮かび上がった。
辺りは血まみれ、目の前は血色の空が見える。誰かが近づいてくる気配。
目線の端に何か捉えた。それは・・・・・
「寄るな!!」
シトは思わずそう叫び手を振るった。シャーナは驚き足を止める。
シトは荒い息を鎮めようとゆっくりと深呼吸した。
「大丈夫??」
シャーナはシトの変化は気にもせず、荒い息を上げ、苦しそうにするシトを心配した。
暫くして落ち着いたシトは頷いた。
「うん。人嫌い、昔はここまでじゃなかったんだけど」
「ま、近づいてほしくないならそれでいいよ。じゃ、私下でクエスト受注してくるからここで待ってて」
シャーナはそう言うと、ギルドの中へと入って行った。それを見届けた後、シトは腰を下ろした。
「本当、ここに運び込まれた理由ってなんなんだろう?
・・・・何か僕、とても大切なことを忘れてしまっている気がする」