二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜4話更新 ( No.9 )
- 日時: 2011/03/02 09:42
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
5話〜嫌いな理由と好きになる理由〜
「実験体って・・・・どういうこと?」
ナドの言葉に顔を俯きがちで前へ出て、シトはそう尋ねた。
「どういうこととは・・・・どういうことですかな?」
「さっきのモンスター。とても苦しがってた。痛いとか、辛いとか。でもそれ以上に、
もっと別のことでとても苦しんでた。・・・・その原因はあなたたちにあるの?」
シトの言葉にナドはため息をつくとシトの方を見ながら言った。
「そこまでの事を、貴様らに答える必要がありますか?」
「・・・・・そうだね。なら、力尽くで教えてもらうよ!!」
「シト!!?」
シャーナが叫ぶが、シトはそのまま二人の元へと突っ込む。
それを見て、まずギャリナがシトの前に立ちはだかった。
「ひゃあぁっっほおうううぅぅ!!!!」
ギャリナが歓喜に満ちた叫び声を上げると、シトに向かって拳を突きだした。
それに対してシトも拳に魔力を纏わせて突きだす。
シトの魔法は全てを消滅させる無の滅竜魔法の使い手。当然、その魔力を纏わせている拳に
触れたら、その全てが消滅する。だが・・・・
「効かねえよ!!」
ギャリナの拳はシトの拳を捉え、尚且つ押し返した。そのまま勢いで吹き飛ばされるシト。
体勢をなんとか整えて着地するが、目の前で起きた現実に動揺は隠せない。
「どうして・・・・」
「シンプルイズベスト!!この俺様の魔法、攻撃(アタック)にかかれば、どんな魔法だってカスなんだよ!!」
舌を出し、シトを挑発するように言うギャリナ。
「モルモットをやった時は期待したんだが、これじゃあ期待外れもいいとこだな〜〜!!」
ギャリナは叫びながら、シトに近づきもう一度拳を突きだす。と、その間にシャーナが立ち入った。
「ベクトル変換・バック」
その言葉を合図に、ギャリナの体が今までの勢いとは逆に後ろへと引きもどされる。
「ぐひゃぁ!!」
地面に転がるギャリナ。結局、初めの立ち位置まで戻された。
「不用意に近づくからだ」
ナドはギャリナにそう吐き捨てると、今度は自分が前に出た。
「大丈夫?」
「う・・うん。ごめん、少し動揺して」
「無の滅竜魔法の効果は確かに絶大だけど、必ずしもその効果が相手に届くとは限らないからね。
どんなに強くても魔法は魔法。使い手が未熟なら本領は発揮できないし、
相手が強者なら、その力を最低限まで削ってくる。君、まともに魔法同士がぶつかり合う
戦いなんてしたことがないんでしょ?人間を避けてたんじゃーね」
「・・・・・」
落ち込むように顔を沈めるシトに、シャーナは笑顔で言った。
「ほら、ちゃんとして!!そんなんじゃ、ザルチルーニと遭っても馬鹿にされるよ」
「・・・・・うん!」
「お話はもういいですかな?」
しびれを切らしたのか、ナドが言った。
「おい・・・・ナド。あの女は俺様の獲物だ」
体を震わせながら言うギャリナ。それにナドは静かに頷いた。
「では、私はあの小僧を仕留めるとしますか」
ナドは手を前に翳し指二本をシトへと指した。するとその先端が光り始めた。
「光子の閃光(ショット)」
—ピュン!—
ナドの指先から光線が発射させる。シトはその場から離れるが、光線はシトを追跡する。
「シト!」
「おおっとぉ!!てめぇの相手はこの俺だ。よくもさっきは吹き飛ばしてくれたな」
「・・・・とっとと君を倒して、シトに加勢しなくっちゃ」
シトのことは気になるが、今は目の前の敵を倒すことに集中するシャーナ。
その間も光線がシトを襲っていた。数は二つに増え、前後左右から追撃する。
このままじゃきりがない。そう感じたシトは立ち止まり拳を構える。
「ダスト」
拳に魔力を纏わせ光線を打ちぬく。光線は消え、もう一つの光線も打ち消した。
「いける」
「何がですか?」
ナドはいつの間にかシトの後ろを取っていた。そして手からは短い光線が剣のように伸びていた。
「白刃の光(ソード)」
ナドがその腕を振るう。咄嗟に後ろに引いたので腕が少し切れた程度で済んだが、危なかった。
下手すれば腕が一本なくなっていたのだ。
「くっ。ゼロ!」
無のブレスをナドに吐く。ナドは手のひらを前に翳す。
「光の遮断壁(ウォール)」
ナドの前に光の壁が現れ、無のブレスを防いだ。防ぎきった後、ナドは怪訝そうな表情で続けた。
「解せませんね。貴様は魔法に対しての経験が圧倒的に少ない。それに酷く私たちのことを避けている。
そのせいで魔法にも威力も覇気も感じない。自分から勝負を仕掛けておいてこれとは、どういったつもりなのですか?」
「・・・人って案外簡単には消えないんだね」
「??」
ナドは突然シトが口にしたことを疑問に感じた。
「なんの事です?」
「ううん。ただ、人ってもっと簡単に死んじゃうものだと思ってた。
僕の魔法で簡単に死んじゃうような、弱い種族だと思ってたけど、そんなこともないんだね。
・・・・・なんでかな。なんでか分からないけど、あなたたちのおかげで少し、人間が好きになった気がする」
シトはそう少し嬉しそうに言うと、もう一度無のブレスを吐いた。
ナドはまた防ごうと思っていたが、直ぐに気がついた。先ほどのブレスとは違うと。
魔法に込められた強い思いと、荒々しい力。まるで、本物の竜のブレスのような迫力。
「くっ!」
すかさず跳躍してその場を離れる。だが、今度はシトがナドの後ろを取った。
「君たちが相手じゃ、本気でやっても死なないよね?」
シトは空中で上体を捻り、右腕を思いっきり振りかざす。
「滅竜奥義・・・・無幻・竜哮雷!!」
振りかざした右腕を一気に振り下ろす。その瞬間、天から見えないイカズチが地面を貫いた。