二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 心霊探偵 八雲 〜つながる絆 ☆参照500突破!! ( No.148 )
- 日時: 2011/05/04 11:04
- 名前: 凪 (ID: M8vlMd6.)
第一章 悲劇
(4)続き
「林田さんは、その少女を見た後、気絶したのか湖のそばに倒れてい
たんです。林田さんの後に出勤してきたスタッフが助けをよんでスタッ
フルームに運びました。私は、とりあえず林田さんが無事で良かっ
た、とほっとした後、女性の叫びが聞こえたんです。叫びの出所はどこ
だ、と探していると『外だ!!』と他のスタッフの声が聞こえて、慌て
て外に出てみたら、もうすでに多くのスタッフやお客様が湖の周りに集
まっていて、その中をかき分けて中に出てみたら女性スタッフと数人の
スタッフと——湖に背中を上に向けて顔を水につけたままの人がいたん
です」
「その人は、どうなったんですか?」
晴香は、何故かその後の話を知りたいという衝動に駆られ自ら聞き出し
た。
「もう…すでに亡くなっていました。亡くなったのは、この旅館に泊ま
っていた中高年の男性で、警察は、おそらく〝自殺〟ではないかと—
—」
「そうですか…」
自殺をした男性は、どういう気持ちだったのだろうか。自殺をする前は
一度立ち止まったのではないのだろうか—晴香の考えは、のちに八雲に
破られることになってしまうとは、晴香自身思ってもいなかった。
一方、八雲は腕組みをして頭を下げて何か考え込んでいる。そして、頭
を上げて口を開いた。
「警察は、どういう状況でその男性が〝自殺〟と踏んだのか分かります
か?」
八雲の問いに対し、中崎は一旦考え込む。
「…いえ、すみませんが——」
「分かりました」
八雲は、ふぅ、と深いため息をついた。
「で、でも——」
まだ、何かあるのか—と中崎の方を向くと、中崎は黙ったままだった。
声にしたのは林田か——。
「林田さん、他に何かあるならはっきりと言ってください」
八雲は続きを話すよう、林田に促す。
林田は、それに応えるように顔を上げた。
「これは、同じ日に同じようなことが今まで二回起きているんです」
◆
八雲と晴香は二人揃って旅館のエレベーターに乗り込んだ。
林田は言った。
〝同じ日に、同じような事が二度起きている。〟
八雲は中崎に、それは本当ですか、と聞くとしっかりと頷いた。
これは、どういう事なのだろうか—。
〝自殺〟というのが、本当なのだろうか。
八雲と晴香は一階のフロントにおりて公衆電話を探した。
「八雲君、あったよ」
意外にも、公衆電話は入口にあった。二人は公衆電話へと向かう。
その間に、幼い女の子の声が背後から聞こえた。
—家族連れで来たのだろうか。
晴香は、ちらっと後ろを向く。
—あれ?いない。
いるのはフロントのソファにくつろいでいる夫婦だけ。
—気のせいか。
私はもう歳か、などと心の中で面白おかしく思っていると何かに引っ張
られ、尻もちをつき、みっともない声を出してしまった。
「いったあぁぁぁいっ!」
八雲がその声に反応して迷惑そうに後ろを振り向いた。
「君は————」
はい、はい、すいませんでした!どうせ、何をしてるんだとか言って—
—え?
晴香の予想は外れ、八雲は目を丸くしていた。屁理屈を言うどころか、
何かに驚いている。しかも晴香ではない何かに——。
「あれ?八雲か?」
晴香の背後から、何処か聞いたことがある声が聞こえた。